第4話 敵には悪役令嬢で、営業には包容力のある女神で
二話投稿です。
「ロザリー嬢。貴女の発案したと言うドレスは素晴らしいものね!」
「キシュリア伯爵様。そう言ってくださると嬉しいですわ」
声を掛けてきたのは、キシュリア伯爵家の奥様だったわ。
うちの店の常連客でもあるの。
「まぁ、今まで社交界に出ていなかったのに、わたくしのことがお分かりになりましたの?」
「ええ、お父様から貴族名簿を見せてもらいましたの。それに、『ファリン』に来てくださっているお客様を覚えるのは、オーナーとして当たり前のことですわ」
「まぁ……素晴らしいお嬢様ね!」
「今妊娠中のお嬢様も我が家のドレスを買っていただいて、嬉しい限りですわ」
「ええ、締め付けないからお腹の子もすくすく育っていましてよ」
そう会話していると、お父様も嬉しそうだったわ。
だって、聞き耳を立てている奥様方はとても多いものね。ふふふ。
「確かにコルセットは体を美しく見せますわ。でも、それは健康にはとても悪いものですのよ」
「まぁ、そうでしたの!?」
「変わらない物を愛する心があるならそれもまた良しですけれど、寿命を伸ばしたい、体をもっと大事にしたいと言うのであれば……我が『ファリン』でドレスを作るほうが安全ですわね」
「そうだったのね……。いいことを聞いたわ……」
「何事も使う場所を変えながら……と言うのが理想ですわ」
「ええ、そう思いますわ」
優しい包容力のある笑み一つで、奥様方の足は自然とこちらへ向く。
気づけば数名の奥方様やご令嬢が近くにいたわ。
「今後も色々な体型に悩む方々のドレスを作ってまいりますわ。是非、お越しくださいませ」
「ええ、下の娘も連れて今度伺いますわ」
朗らかに営業を終わらせると、近くにいた貴族達が集まってくる。
それは貴族の奥様だったり、体型を気にしている令嬢だったり。
私は包容力のある笑顔で営業する。
そしてそれはいつしか――店を更に大きくしていく力となった。
確実に利益を出して、着実に売上を伸ばし、マダムからも『店の名前を変えてもっと売上を伸ばしたいと』言われた時――。
〝ファッション・ロザリー〟と名を変えた店の売上はうなぎ登り。
私の名が、世間に広まった証でもあった。
しかし――。
「デブがデブのドレスを作って成り上がるなんて、おかしな話ですわね」
「笑えますわ」
そんな誹謗中傷は、当たり前のようにやってくる。
僻み、苛立ち。
そんなものに憐れんだ目を送り――。
「あらやだ、貴族女性の割に、言葉がなってませんのね? 親はどんな躾をしてきたのかしら?」
「なっ」
「貴族令嬢として恥ずかしいわ。そんな言葉を公の場で口にするだなんて、どのような躾を受けてこられたのかしら。少々、不思議ですわね」
「な、そ、そういう貴女こそ!!」
「わたくし、今店がとっても忙しいんですの。結婚している暇はありませんわ? でも……そちらはどうかしら?」
扇を口に当てて目を細めて嘲笑う。
そんな暴言を吐く彼女たちも、いずれは〝ファッション・ロザリー〟の客になるだろうに。
ふふ……吠える犬って躾甲斐があるわね。
でも、この頃になると既に私にはそれ相応の味方がいたの。
そう……〝ファッション・ロザリー〟の愛好者たちよ。
「まぁ……あの様な言葉遣い、我が家の息子の嫁には相応しくないわね」
「人の見た目をあげつらって笑うだなんて、貴族令嬢としてどうかと思いますわ」
そう言って援護してくださったのは、王室騎士団の若き隊長のお母様と――魔法騎士団エースのお母様。
殆どの令嬢たちが狙っていると言うくらいの美丈夫の二人のお母様だったの。
令嬢たちは慌てていたけれど、口に出した言葉は引っ込みがつかないのは道理。
「まぁ……あの様な言葉遣い、聞いているこちらが恥ずかしいですわ」
「人の努力を嘲る方とは、お近づきになりたくありませんわね」
「ロザリー嬢のように、店を背負って立てる方は頼もしいですこと」
「見た目ばかりでなく、頭の回る方こそ貴重ですわね」
そんな会話をする中、女性陣はぎりぎりと歯を軋ませながら見ているわ。
私の努力が実っている証拠。
こんなに気持ちが良いことはないわ。
その後、人が少し引いてから――。
「ロザリー嬢。実は娘があなたの店のドレスに救われましたの」
「今日お姿を見て、やはり本物だと思いましたわ」
「そう言っていただけると、嬉しいですわ」
包容力のある優しい笑みで返事を返せば、お相手の方々も気持ちよく去っていく。
お父様は「流石ロザリーだな」と褒めてくださるし、自慢の娘として嬉しそうだわ。
そういえば、あれから数ヶ月――ロバートの家は破産したそうよ。
ロバートの作った借金が返せなかったんですって。
お笑い草よねぇ?
ロザリー? あんな男、結婚しなくて正解だったわよ。




