71話 再会
「タオ王子、ですの?」
「タオ・クレイン! クレインおうこくの、だいよんおうじさま! あとはー……3さい! フラワーのギフトがつかえます!」
「ご丁寧にどうもですの。わたくしはシィナ・ゼテール。クレイン王国の伯爵令嬢で、15才。フルーツのギフトが使えますわ」
意識を取り戻したタオ王子は、グルグル巻きにされた縄をオレに解かれながら元気いっぱいに自己紹介をしてくれた。
この喋り方からしてもうすでにほぼ確定ではあるのだが、転生するときに合言葉も作ったし、せっかくだから確認しておこう。
「好きな食べ物はなんですの? ちなみにわたくしは、“妹が作ってくれたミカンゼリー”ですわ」
「……っ! えっとね、えっとね……! 好きな食べ物は、“にーちゃがつくったハンバーグ”!!」
…………っ。
「やっぱり、タオ王子……お前が美柑なんだな……っ!」
「ひゅーがにーちゃっ!!」
お互いを夏山美柑と夏山彪雅だと認識したオレたちは、ドリアンの香りが充満する地下室で抱き合う。
うーん、感動の再会……んなわけないか。シチュエーションが終わってる。
「まさか、美柑が王子様になってるとはなあ」
「ひゅーがにーちゃ、ねーちゃになってる! おっぱいぼいんぼいん!」
「誘拐されたのに元気だなお前」
とりあえずこの激クサ地下室から脱出しなければということで、再会の余韻もそこそこに、タオ王子を背負って階段を上がる。
「あっそうだ。ギフト初披露のお祝いで贈ったミカンは美味しかったか?」
「おいしかったー! やっぱりひゅーがにーちゃのやつだったんだ!」
「まあな……まあ、今はひゅーがにーちゃじゃなくてシィナねーちゃだけど」
「しーなねーちゃ! みーちゃも、いまはたーちゃだよ!」
そんな感じで和気あいあいと階段を上がり、噴水のある別邸の裏庭まで戻ってくる。
するとそこには、見覚えのある数名のお嬢様たちと、これまた見覚えのある王政管理局の局員が待ち構えていた。
「はあ、まさかこのような形で作戦を妨害されてしまうとは……バラしたのはカーヴィンかしら? やはりあの子を使ったのは失敗だったわ」
「ノーラ・ワイルドシップ……それに……」
「こんにちは、シィナ様」
「モニータさん……」
ワイルドシップ家が極東解放軍に協力していることはカーヴィンに聞かされて知っていた。
しかし、まさか今回の王妃候補選抜会の運営の一人である王政管理局のモニータさんまで共犯者だったとはな……
「わたくしとタオ王子を、どうしますの?」
「このままお二人とも馬車に乗せて、チェスナード王国まで行ってもらいましょうか。あなたも人質になるなら、あの憎きギストレンジ公爵家も従わざるを得ないでしょう」
「こんなことになるのなら、王妃候補選抜会に向かう馬車の中で始末しておけば良かったです」
「モニータさん……」
このオンナ、オレが出してやったバナナを美味そうに食ってたくせになんて態度だ。許せん。
「どのようにして地下にいた見張りを欺いたのかは知りませんが、あなたたちはここでおしまいです。大人しく連行され……」
「そうはいかないぜ!」
「おしまいなのはあなたたちでございます!」
「「……っ!?」」
オレとタオ王子を取り囲む、裏切り者のワイルドシップ家&極東解放軍の連中の背後から、オレのよく知るお嬢様たちの声が聞こえてくる。
そこには、王妃候補選抜会の最終試験を受けていたはずのギフト持ちお嬢様や、有能なメイドたち、そして正義感溢れる王宮の騎士たちが、オレを囲うノーラたちを更にぐるっと囲うように飛び出してきた。
「友人のピンチに颯爽登場だぜ!」
「クレイン王国に仇名す下郎は、五大公爵家が許さないでございます!」
「あなたたちは、燃やしてもいいのよね?」
「女神スースルが許しても、私は許しません!」
「あ、ああ……」
「我ら、極東解放軍の悲願が……ワイルドシップ家の野望が……!」
絶望する誘拐犯たちを見て、オレの背中に乗っているタオ王子が一言呟いた。
「にーちゃ、ともだちいっぱいできたんだね!」
「解釈が優しすぎ!」
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