70話 タオ王子を助け出せ!
元は旧ワイルドシップ家の所有であり、現在はギストレンジ家が管理している王都の別邸。
そこの離れにある地下室に攫われたタオ王子がいるということで、カーヴィンから教わった道順を思い出して侵入を試みる。
「まさか、こんな所から秘密の地下室に行けるとは驚きですわね」
別邸の裏庭にある、女神スールスの石像が飾られている巨大な噴水。
いつもは噴水が稼働してスールス像が滝の中に立っているような見た目になっているのだが、今は何故か噴水が止まっていた。
「この石像の、腕輪を回して……右に2回、左に1回、最後に……右に、1回」
カチッ。ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「ほ、本当に動きましたの……!」
腕輪を決められた方向に回転させると、女神像の足元にある床が動いて地下への階段が出現する。
周囲に人がいないことを確認し、オレは階段を下りて行った。
「思ったよりも綺麗……今でも定期的に使われているのでしょうか」
カーヴィンの話によると、この地下室はなんと、王都にある極東解放軍のアジトのひとつと繋がっていて、彼らはそちらを通って侵入しているらしい。
きっとワイルドシップ家がまだ五大公爵家だった時に、この別邸を勝手に改造して色々作っていたのだろう。
「(中に見張りは……)」
「それにしても、まさか第四王子の誘拐までしてしまうなんてな」
「こんなことがバレたら俺たちもヤバいぜ」
「もうじきチェスナードに運び出すための馬車がやってくる。それまでコイツを見てりゃ金がたんまり入るんだ……もうしばらくの辛抱ってやつさ」
階段の陰から地下室の様子を伺うと、極東解放軍の連中と思われる男が二人、雑談をしていた。
「…………」
「(あれは……もしかしてタオ王子!?)」
男たちの足元には、縄でぐるぐる巻きにされた小さな男の子が一人。
おそらく、誘拐されたタオ王子だろう。
眠っているのか、気絶させられたのか……タオ王子と思われる男の子はぐったりとして何も声を発していない。
「(見張りはあの二人だけ……仲間たちが到着する前にどうにかしてタオ王子を助け出さないと……!)」
アイツらは、タオ王子を敵国のチェスナード王国に移送するようなことを言っていた。
それでクレイン王国に脅しをかけるのか、タオ王子を洗脳するのか分からないが、ここで足踏みしていても相手が有利になっていくだけだ。
とにかく今のうちに、見張りを鎮圧してタオ王子を助け出す。
「(とはいえ、わたくしのギフトを使っても果物を出せるだけ……ふざけてバナナが武器になるとか言っていますが、今足元に投げても仕方がありませんし……武器になる果物、武器になる果物……あ)」
そこでオレは、最強の果物……フルーツの王様を思い出した。
パイナップルのような重量と耐久力があり、外側はトゲで覆われ、なによりその強烈な臭い……
「(出てきて……ドリアン!)」
ズシッとした重みのある、強烈な臭いの果物がオレの手の上に出現する。
「……ん? おい、なんか変な臭いしねえか?」
「あ、ああ……腐った生ごみみてえな……」
「も、もしかして、上で作戦がバレて、証拠隠滅のために毒ガスでも撒かれたんじゃ……!?」
「そんなっ……!」
「うわあああああああっ!?」
「お、おい待ってくれよおっ!?」
…………。
「あらまあ、逃げちゃいましたの」
臭いでパニックになってる間にドリアンアタックでぶん殴って気絶させようとしたのだが、臭いだけで見張りの二人はどこかへと行ってしまった。
「なるほど、こっちの通路が極東解放軍のアジトに続いている所ですのね」
オレが下りてきた階段とは別に、トンネルのようなものが地下室の横に造られていた。
とりあえずそこに先ほど出したドリアンを放置して、ついでにバナナの皮も2本ほど設置して一応のトラップということにしておいた。
「んん……な、なんか、くちゃい……」
「っ!!」
そんなことをしていると、強烈なドリアンの臭いで意識が覚醒してしまったのか、横たわっていた男の子が目を覚ます。
「……おねえちゃん、だれ?」
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