72話 妹王子と兄令嬢
「それでは選抜会を勝ち抜き、バシム第一王子の王妃候補となった皆様にご登場いただきます! 盛大な拍手でお迎えください!」
パチパチパチ! と民衆からの拍手を受けながら、豪勢なドレスに着飾った数名のお嬢様が姿を見せる。
本日、クレイン王国の王宮ではバシム第一王子の王妃候補お披露目会が開催されていた。
「な、なんでボクがこんなことに……」
「それはわたくしのセリフですわ」
「まさかサドンデスマッチ試験のチーム・ギストレンジが全員合格してしまうとは驚きでございます」
「これも女神スールスのお導きかもしれませんね!」
誘拐されたタオ王子を救出したオレは、結局その日の最終試験を受けられずに王妃候補選抜会が終了した。
オレとしては美柑に再会できたし、別にバシム第一王子の王妃候補になるつもりもなかったので結果はどうでも良かったのだが、後日……何故か補欠合格のお知らせがゼテール領のお屋敷に届いてしまった。
いやなんだよ補欠合格って……高校受験じゃねえんだからさ……
更にそこからサライト第二王妃とタオ第四王子の強い推薦があったとかで補欠から本合格になってしまった。
というわけで、今日は他の合格者と一緒にバシム第一王子の王妃候補お披露目会に参加しているという状態である。
まあ、タオ王子に推薦されたら断れんわな。
「ヨル、そちらはどうでしたか?」
「まさか合格するわけないと思ってたからな……とりあえず父上が気絶した」
「なるほど、わたくしの所と同じですわね」
「そっちもかよ」
最終試験をすっぽかしたことで、オレが王妃候補の選抜試験に合格するわけないと高を括っていたルトヴァン父さんは、まさかの大逆転合格を知って気絶した。
シャロウ母さんやメイドのアイラは喜んでくれた。
それに……
「ひゅーがにーちゃ……じゃなかった! しーなねーちゃ! わーい!」
「タオ王子~!」
壇上にいるオレに向かって、王族の関係者席からブンブンと手を振ってくれるタオ王子。
タオ王子を救出した時に、お互いに話し合って前世の記憶と夏山兄妹の意識を確認したオレたちは、今では婚約者になるかもしれない人の義弟と義姉の関係だ。
正式にサライト第二王妃からもタオ王子救出のお礼をされて、すっかり仲良くなってしまった。
「そういえば、誘拐犯たちはどうなりましたの?」
「首謀者の極東解放軍関係者は全員処刑、協力していた王政管理局の局員の一部と、共犯のワイルドシップ伯爵家の当主も処刑、娘のノーラさんと、その取り巻き令嬢たちはカーヴィンさん以外島流しになりましたでございます」
「カーヴィンさんは……」
「お咎めなしだ。シィナがタオ王子を助けに行ったことを知らせてくれたのは彼女だからな。そのおかげであの時、お前の元に駆け付けられたんだ……それにしても、まさか攫われたタオ王子がうちの別邸の地下にいたとはな……ボクも捕まるんじゃないかと思ってヒヤッとしたぜ」
「そうですか……」
今回の事件でクレイン王国内にいた不穏分子が一掃され、今後は更に厳しく取り締まるようになるだろう。
もしかしたら、王妃候補としてこれから王宮で生活するオレたちにも警備という名目の監視がつくかもしれない。それでも……
「しーなねーちゃ~!」
「この世界で、美柑とまた一緒に暮らせるのですね」
不慮の事故で異世界に転生し、お互いに違う人間としてこれまで生きてきた。
それでもこうやって再会を果たし、家族に近い関係になることが出来た。
きっとこれからも、色々な事が起きるだろう。
「兄と妹、令嬢と王子……妹王子と兄令嬢、ですわね」
「なんか言ったか? シィナ」
「ふふっ。何でもありませんわ」
おしまい。
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