67話 不穏、着々
「くそがっ! あれだけの事が起きて何故死傷者が一人も出ないのだ!」
「申し訳ありません、お父様」
「いや、お前はよくやってくれている……しかし……」
「これではクレイン王家を貶めることができずに選抜会が終わってしまいます……!」
「身を崩したフリをして毒矢を投げるのではなく、自分に突き刺せと言っておけばよかったか?」
「それでは、頭のおかしい令嬢が自ら命を絶っただけで終わるでしょう」
「後は、最終試験で第一王子と直接やり合うか……」
「そ、そんなことをしたら今度は降爵では済みませぬぞ!」
「なあに、次代の王が消えれば爵位もなにもないだろう」
「お父様、第二、第三王子がいますから、流石にご無理があるかと」
「ぐぬう、仕方がない。王妃候補選抜会でトラブルを起こして王家の評価を落とそうと思ったが、今回は第四王子の誘拐・洗脳を優先しよう」
「そうですね……そちらは必ずや、成功させてみせます……我ら極東解放軍の矜持にかけて」
「明日は王妃候補選抜会の最終試験日。これまでのトラブル対応で試験会場に警備を集中させねばならないだろう」
「内部に潜り込んでいる我らの同士を使い、第二王妃と第四王子がいる離宮の警備に穴を作ることも可能でしょう」
「憐れ第四王子……貴様はチェスナードの洗脳を受けて、王族でありながらクレイン王国を内部から崩壊させるための起爆剤となるのだ」
―― ――
「いよいよ明日が最終試験ですわね」
「色々あったなあ……そういやシィナはタオ王子には会えたのか?」
「……いよいよ明日が最終試験ですわね」
「会えてないんだな」
王妃候補選抜会もいよいよクライマックス。
明日の最終試験『バシム第一王子との面談』を終えたら王都ともおさらばだ。
王都に来てから約2週間が経過して、試験の度に王宮にも行ってタオ王子を探しているが、未だに会えてはいなかった。
まあ、最初から偶然狙いだからしょうがないのかもしれないが……
「そういえばシィナお嬢様たちが試験中、待合室で他のご令嬢のメイドたちと話していたのですけど、サライト第二王妃は王宮の横にある離宮にいるらしいですよ」
「えっ?」
「なるほどなあ。ってことは、タオ王子もそっちにいるんじゃねえか?」
「……えっ?」
つまり、試験後に王宮内を探し回ったりして若干不審者お嬢様になってたのは無駄足だったってこと?
しかも離宮なんてどうやっても入れないから王妃候補選抜会に来たこと自体が無駄……
「出てきて、バナナ……」
ポンッ! ポンッ! ポンッ!
「わあ、シィナお嬢様がバナナを沢山出してくれまし……」
「はぐはぐはぐはぐ!」
「ああ~っ! なんで自分で全部食べちゃうんですか~!?」
「分かりやすくヤケ食いしてるなあ」
「わはくひの2ひゅうはんがむらになりはひはわっ!」
「何言ってるか分かんねえよ」
「もぐもぐ……ごっくん! わたくしの2週間が無駄になりましたわっ!」
「ま、まあまあ。友達とかできたし良かったじゃねえか」
「それは良かったですの!」
ちくしょう、どうあがいてもタオ王子に会えなかったのかよ……それならこんなとこ来るよりお屋敷でミカン栽培やってりゃ良かったぜ。
「明日、試験でバシム王子に会ったらめちゃめちゃ愚痴ってやりますわ」
「絶対ダメだろ」
この時のオレは知らなかった。
まさか、あんな場所でタオ王子と出会うことになるとは……
「出てきて、バナナっ!」
「シィナお嬢様~! 私にもバナナくださいよ~!」
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