66話 つかの間の休息
「もぐもぐ……わあ、美味しい! これがパイナップル……!」
「凍らせても美味しいかもしれませんでございます」
「ちょっと舌がピリピリするな」
「それは食べ過ぎですわ、ヨル」
王妃候補選抜会、4つ目の試験を終えたオレたちは、残すところあとひとつとなった試験の前に数日の休みを与えられていた。
しかも最終試験はバシム第一王子とのタイマン面談。
休日の間に対策できることもなく、今は今回の試験で仲良くなった参加者たちとギストレンジ公爵家の別邸でのんびりしていた。
「アイラ、どうですか? パイナップルも美味しいでしょう」
「瑞々しく華やかな風味と濃厚な甘酸っぱさ、そしてこの大きさ……たしかに、非常にレベルの高い果物ですね。しかし……」
「しかし?」
「バナナには適いませんね! 手軽にサッと食べられて、クリーミーで甘くて、食べ終わった皮は武器になって、凍らせれば工具にもなる……やはりバナナが至高でございます!」
「アイラはそう言うと思ってましたわ」
前回のジャベリックダーツ試験の時にオレがギフトで出したパイナップルがどうしても食べたいというクレーネの要望に応え、大きいのをひとつ出してあげたら他のみんなも美味しい美味しいと言って食べてくれた。
ちなみにこれはめっちゃ偏見なんだが、女性って甘酸っぱい果物好きだよな……それこそアイラじゃないけど、オレはバナナとか梨とかスイカとか、酸味が無い果物の方が好きなんだよな。
「それにしても今回の試験、めちゃめちゃトラブルが起きるよな」
「ギフトの虚偽申告、サドンデスマッチ試験ステージへの油の撒布、そしてジャベリックダーツ試験での毒矢投擲……」
「ここまで死者が出ていないのが奇跡でございます」
クレイン王国内の有力な貴族家の令嬢と王族が集まるイベントなだけあって、そういうのを気に入らない連中に狙われやすいタイミングではあるのかもしれない。
それにしても警備がザルというか……結局火事になったときもイカれた令嬢が毒矢を投げてきた時もオレたちが自衛したわけだし、王政管理局連中はもう少し仕事をしてほしいところだ。
「そういえば、皆さんはどうして王妃候補選抜会に参加しているんですの?」
「いや、そんなの王子様の嫁さんになって玉の輿狙いたいからだろう……」
「こんなことを言っていますが、ヨルとわたくしは王妃候補には興味ないので例外ですの」
「それはまあ、そうだな」
タオ第四王子に会いたいオレと、オレの監視でついてきたヨル。
いっそのこともう、次の試験でバシム第一王子に会った時に本当の事言ってタオ王子に会わせてくれないか聞いちまおうかな。
「ユンはお父様に言われたからでございます。イオンお兄様が“あの調子”ですから、せめて娘を王妃にでも……と思っているのかもしれませんでございます」
「ああ、イオンさん……」
「家督を継ぐはずの長男が、女装して妹のメイドやってたらそりゃそうなるわな」
ユンちゃんのお兄さんのイオン・ネピュアは、五大公爵家の長男という立場でありながら、女装メイド活動が趣味という中々におもしろい人だ。
家の事はちゃんとやっているようだが、父親が心配してしまう気持ちはまあ分かる。
「私は司祭様が酔っ払っている時に『王妃候補の選抜会に応募してみたら~? ワンチャンあるんじゃね~?』とか言って応募してしまったら受かってしまいました!」
「いやクレーネはそれでいいんですの!?」
「あと神に仕える人のクセにめちゃめちゃ酒飲んでるじゃねーか」
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