64話 ドジっ子?
「なっなんで急にギフト発動したんだシィナ!?」
「謎の果物に矢が刺さっています!」
「何が起きているんですの!?」
突然の出来事にざわつく令嬢たち。
ジャベリックダーツのプレイ中にこちらに向かって矢を放ってきたのを見ていなかった人には、オレが急にギフトで謎のデカいフルーツを出したと思われているのだろう。
「運営さん! ジャベリックダーツをしている方から矢が飛んできましたの! ほらここ! 刺さってますわ!」
「なんですって!?」
「警備! あの参加者を確保っ!」
「う……あ……わ、わたくしは……っ」
ステージ上でこちらに矢を投げた姿勢のまま固まっている犯人の元に運営スタッフが駆け付けて拘束し、残りの矢を回収する。
犯行後の動きを見ても、おそらく手練れの暗殺者とかではなく素人……普通のお嬢様の可能性が高い。
「シィナ、大丈夫か?」
「わたくしは大丈夫ですわ。かわりにパイナップルさんが身を挺して守ってくれましたの」
「その大きな果物はパイナップルというんですね! なんだか甘い香りがします!」
「またボクたちが知らない果物出してるな……」
こちらに向かって矢を構えた令嬢を見た瞬間、一瞬頭が真っ白になったあとに火事場の馬鹿力……いや、火事場の冷静脳になって一気に思考が加速し、咄嗟に思いついた対処方法が『ギフトで大きな果物を出して飛んできた矢を受ける』ことだった。
うーん、普通におかしいなやってること。
でもオレが前に出て防御したので他の人には当たらなかったわけだし、結果オーライというやつだろう。
「真後ろに矢を投げるなんて……」
「流石にコントロールが……」
「とんだドジっ子ですわね」
「いやドジっ子とかそういうレベルじゃねえだろ」
1回目のジャベリックダーツ試験で9点という最低記録をたたき出したメロコであれば可能性もなきにしもあらずだが、拘束されているあの令嬢は1回目で40点台のまずまずな結果を出していた気がする。
しかも、確実にこちらを振り向いて振りかぶっていたわけで。
あの目の血走り具合は殺ってやんよっていう意思を感じたねオレは。
「もしかして、サドンデスマッチ試験の時の油も……って、なんですのこれ!?」
「どうしたシィナ……って、なんだこれ?」
「これ、果肉が溶けてきてるんですか……?」
パイナップルに刺さった矢の周りが黒ずみ、まるで壊死していくように溶解している。
桃などは衝撃を受けた部分の色が変わって傷んだ見た目になってしまうこともあるが、ちょっと傷が出来ただけでパイナップルがこんなことになるなんて話は聞いたことが無い。
「運営さん! その矢に触らないように! もしかしたら毒が塗ってあるかもしれませんの!」
「わ、分かりました!」
「みんなもだ! 2回目投げたやつは手洗え!!」
「承知いたしましたわ……!」
状況を把握したオレとヨルが周囲に注意喚起を飛ばす。
少なくとも1巡目が終わった時点では矢に毒などは塗ってなかったはずだ。
さっき矢を投げた令嬢が仕込んだか、他にも仲間がいるのか……
「油に、毒矢……いよいよきな臭くなってきましたわね」
結局、ジャベリックダーツ試験は2巡目の途中で中断となり、1回目で70点を出したカフカさんが暫定1位でゲーム終了となった。
仕方ないが2回目を投げられなかったのはさすがに悔しいな……このゲームセット一式、販売してくれないかな。
「くんくん……ああ、こんなに甘くて美味しそうなのに食べられないなんて……シィナさん、一口だめですか?」
「あなたも溶けますわよクレーネ」
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