59話 シノビ修行
「いいですかいお二人さん、手投げのナイフはこうやって持って、こう投げるんでさあっ!」
「お、的中したな」
「お見事ですわ!」
シュトン! と音がして、オレたちの数十メートル先にある的にビッツさんが投げたナイフが刺さる。
今日は王妃候補選抜会・ジャベリックダーツ試験の前日。
ジャベリックダーツなんてオレもヨルもやったことないし、王都内でもできる場所を知らない為ぶっつけ本番で明日の試験に挑もうと思ったのだが、ヨルのメイドであるズィオ族のビッツさんが投擲武器の扱い方をレクチャーしてくれることになった。
「こっちの4枚刃手裏剣は、刃の一つを指で挟んで……こう投げるんでさあっ!」
「回転してますの!」
「投げるときは振り抜かないで止める感じなんだな」
忍者もびっくりするほど見事な手裏剣投げを披露するビッツさん。
なんかあれだな、忍者村で手裏剣投げの体験に来た観光客になった気分。
「おそらく、ジャベリックダーツの投げ方だと手投げのナイフよりも手裏剣の投げ方の方が近いと思われやす」
「それじゃあとりあえず手裏剣で的を狙って練習するか」
「シュシュっとニンジャジャーですの!」
「それはなんなんだシィナ」
まあ、なんだろうな……戦隊ヒーローかな。
「シィナ・ゼテール、いきますわ! えいっ!」
ドスッ!!
「おもっきし地面に刺さったな」
「全然飛びませんの!」
オレが投げた手裏剣は、正面の的まで弧を描いて飛んでいく……というようなことはなく、数歩先の地面にぶっ刺さってしまった。
うぬぬ、どっちかっていうとオレのほうが忍者の国から来たのにこの体たらく……前世でもっと手裏剣投げの練習しておけばよかった。
いやまあ、おりがみ手裏剣でしかやったことないけど。
「手は的と水平になった位置で止めるんでさあ。振り切るとそのまま斜め下に思い切り突き刺さってしまいやす。あとは、手首のスナップをきかせて腕を振っている途中でスパッと離すと距離が出ますぜ」
「なるほど、こんな感じか……ふっ!」
地面に突き刺したオレと違って、ヨルが投げた手裏剣は真っすぐに飛んでいき、的の下の方に的中した。
「当たりやしたねお嬢! さすがでごぜえます!」
「しかし、かなり下の方に刺さってしまったな……ちゃんと水平にまっすぐ投げたはずなのに」
「お嬢は背が低いからまっすぐ投げたら的の下の方に刺さりやすね」
「チクショウ!」
うまく投げられたのに悔しがるヨルの横で、ヨルと同じくらいの背丈のビッツさんが手裏剣を投げて見事ど真ん中に的中させる。
「なるほど、手裏剣から手を離すときの角度調節が大切なんですのね」
「そうですそうです! シィナお嬢は理解がはやくていらっしゃる」
オレの場合は背が高いから、若干低めの角度で投げて、でも腕は振り切らないように……
「はっ!」
トスッ!!
「やったー! 的に当たりましたの!」
「お見事でごぜえます!」
ふふ、やはり忍者の国の血筋が覚醒してしまったか……これなら明日のジャベリックダーツ試験も的中させまくりかもしれない。
「手裏剣、難しそうですね……わたしはバナナ投げを極めます」
「アイラもバナナばっかり信仰してないでやってみたらいいですわ」
「そ、そうですか? それじゃあちょっとだけ……えいっ」
ザシュッ!!
「……お、大当たりでごぜえやす」
「横投げ!? めちゃめちゃかっけー!! しかもど真ん中じゃねえか!!」
「ア、アイラあなた……シノビメイドでしたの?」
「違います」
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