58話 メロコの赦し
「告解の相手がクレーネさん……? いえ、告解部屋でゆるしの秘跡を聞く相手は司祭様よ。シスターには権限が無いわ」
「そういうものなのですね」
「知りませんでしたの」
王都の教会でクレーネを探していたら偶然出会ったメロコ・ギレッド公爵令嬢。
彼女の話によると、懺悔室で話を聞く相手は誰でも良いわけではないらしく、資格を持った神父や司祭が請け負うものらしい。
オレが読んだ漫画だとシスターが聞いてた気がするから、それがフィクションなのか、スールス教のルールではそうなっているのかは分からないが。
「メロコ様もこのような場所を利用されるんですのね」
「あら、あたしだって未熟な一人の悩める子羊なのよ。五大公爵家の公爵令嬢として気丈に振る舞っていても、時には弱音を吐いて赦しを請いたいものなのよ」
「それは……そうですわね」
もちろん懺悔の内容を聞くようなことはしなかったが、恐らく先日行ったサドンデスマッチ試験の事だろう。
ステージ上に撒かれた油が炎上した原因は、メロコが発動したフレイムのギフトによるものだった。
きっとそのことを悔やんでここにやってきたのだろう。
「試験に夢中になって、周囲の状況が見えていなかった……自分の力を過信して、事故の原因を作ってしまった」
「あの場は真剣勝負でしたし、メロコ様だけギフトを制限するのは違いますわ。油を撒いた者、撒くように指示した者が悪ですの」
結局、自ら懺悔の内容を話してしまうメロコに相槌を打ちながら慰めるような意見を返す。
実際、あの状況でメロコを責めるのはお門違いだ。
彼女はルール通りにギフトを使用していたし、悪いのは油を撒いた犯人たち……あとはまあ、試験中に油を撒かれた時点で気付けず対処が遅れた運営側のミスだとオレは考えている。
「責任を感じて選抜会を降りようかと思ったのだけれど、それをお父様に見越されて試験を続けるように釘を刺されてしまったわ。だから、この先なにかあったら他の参加者を助けることに心血を注ぐことにするわね」
「わたくしが言うのもなんですが、参加の理由は自由ですわ。まあ、表向きはバシム第一王子の婚約者候補に選ばれることですけども」
「そういうことを言うってことは、あなたの参加目的も別にあるのね」
「そうともいえますわね。わたくしも告解してきた方がいいかしら?」
「あらまあ、ふふ」
メロコ・ギレッド……五大公爵家の中じゃ1番女王様感が強いというか、とっつきにくい感じがしたが意外と良いヤツかもしれない。
実力も確かな分、責任感も強いのだろうな。
「あれっ? そこいにるのはシィナさんと……メロコ様!?」
「不思議な組み合わせでございます」
「あっクレーネじゃありませんか」
「ユン・ネピュア……そちらも珍しい組み合わせね」
教会の端の席でメロコ様と話していると、修道服を着たクレーネと公爵家の令嬢にしては質素な恰好をしたユンちゃんが二人でこちらに歩いてくる。
クレーネがいるのは良いとして、ユンちゃんは……
「あ、そういえばユンちゃんのお家は熱心なスールス教徒でしたっけ」
「そうなんですでございます。お祈りにきたらクレーネさんに会ったので、特別にVIP席に案内してもらっていたのでございます」
「バイブスぶち上がりですね!」
教会のVIP席ってなんだよ。
DJ神父でもいるのか?
「五大公爵家の令嬢が、シスターと仲睦まじく……他の方々もみんなそうだと良いのだけれど」
「まあまあメロコさん。ユンたちが率先して仲良くしていればきっとそれが広まっていきますよ」
「それもそうね。それじゃ、まずはあなたから……よろしくね、シィナさん」
「よろしくお願いいたしますわ! あ、お近づきのしるしにバナナ食べます?」
「食べます!」
「アイラには聞いてませんの」
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