56話 ジャベリックダーツ
「ふむふむ……この書面に記載されている説明によりますと、ジャベリックダーツとは『フライペッカーの羽根で作られた小型の矢を投擲して的に当てる競技』のようです」
「王宮内に作られたステージの上で出現する的を射る……当てた的の数や当たった位置で点数を付けるようでございやすね」
「なるほど、的当てゲームですのね」
ハイカー第二王子のサドンデスマッチ試験を経験しているからか、頭に風船でも付けてそれを令嬢たちでお互いに狙うのかと思ったがそうではないらしい。
まあ、そんなことをしたら確実に怪我をする人が出てしまうが。
「ジャベリックダーツかあ……やったことねえ遊びだな」
「南方にあるハイドランド王国で流行っていると聞いたことがあります。リューキ第三王子も好きなようで、かなりの実力の持ち主なんだとか」
「そういえばあの方は弓矢とか射撃が得意だもんな」
「ギフトを使えば百発百中ですの」
「体力的に百発も撃てないけどな」
リューキ第三王子は命中力をアップさせる『ヒット』というギフトを使うことができる。
発動中は視界が変化して、とても遠くにある的でさえも目の前にあるように狙いを定めることができるのだとか。
そんなリューキ王子プレゼンツの試験か……まあ、ダーツ遊びって考えれば結構楽しみかもしれない。
「それにしても、王妃候補選抜会の試験なのにどうして他の王子様たちが企画したものがあるんですの?」
「それはまあ、アレだな……バシム第一王子と結婚したら他の王子も家族になるわけだし、相性が良いに越したことはない」
「ハイカー第二王子やリューキ第三王子が望む試験をクリアすることで王族の一員として認められよ、ということですの?」
「そうなってくると、最終試験はお義母様からのいびりかもしれないな」
「それは嫌ですわ……」
バシム第一王子、ハイカー第二王子、リューキ第三王子の母親であり、ベガス王の第一夫人であるアストラ・クレイン王妃。
特に息子たちを溺愛しているというような噂は聞いたことがないが、彼女もまた今回のような王妃候補選抜会を勝ち抜いてベガス王の王妃になっているわけで、もし試験をするならかなり厳しく見てくるかもしれない。
ちなみにタオ第四王子はベガス王の第二夫人であるサライト第二王妃の息子なので、他の3人とは腹違いの子供ということになり、年齢もだいぶ離れている。
ベガス王もまだまだ元気だし、その内タオ第四王子にも弟か妹が出来るんだろうか……うわ、なんか生々しいから考えるのやめよ。
「出来ればジャベリックダーツの練習をしておきたいけれど、矢も的もありませんわねえ」
「拙者の武器を使いやすか? 的は庭の木でも良いでしょう」
「ビッツの武器は形状が全然違うじゃねえか」
シノビメイドであるビッツさんが懐からクナイや手裏剣みたいな投擲刃を取り出したので、さすがにそれは……と止めるヨル。
忍者体験ができるテーマパークの的当てみたいでちょっとやってみたかったな。
「シィナお嬢様、今こそバナナの出番です! 矢の形に削り、凍らせてカチカチにしましょう! 削った余りは私が食べます!」
「バナナダーツなんて聞いたことありませんわよ」
「じゃあ私が全部食べます」
それはもうアイラがバナナ食いたいだじゃねえか。
っていうか自分で言ってて思ったけどバナナダーツってなんだよ。
「まあ他の参加者も練習なんてできねえだろうし、ぶっつけ本番でいこうぜ」
「今回は個人戦ですわね。負けませんわよ、ヨル」
「ふふん。選抜会の結果には興味がないが、ジャベリックダーツ自体は楽しみだ。ボクも本気でいかせてもらうぜ」
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