55話 お疲れ令嬢
サドンデスマッチ試験が開催された二日後。
本来であれば一日空けて今日が次の試験日の予定だったのだが、前回の試験で発生した火災トラブルの影響で三日ほど延期が決まり、次の試験は明後日ということになった。
まあ、いくら王家が偉いと言っても国中の有力な貴族令嬢が集まる場であのような失態は問題になったのだろう。
こちらとしてはありがたく休ませてもらうだけだ。
「ふわぁ……ねみい」
「おはようございます、ヨル。疲れは取れましたの?」
「だいぶマシになったと思う……」
サドンデスマッチ試験が終わって別邸に帰ってきた瞬間、ヨルはギフトの使い過ぎで疲れ果てて死んだように眠ってしまった。
火事の対処のためにリンカやユンちゃん、そしてヨルが発動したギフトがまさに火事場の馬鹿力という感じで今までにないくらい効果を発揮し、その分ヨル達の体力も一気に持っていかれたらしい。
昨日はギフト発動で消耗した体力を回復する為に一日中ダラダラ過ごしたのでだいぶマシになったようだ。
「さあ、今日明日はお休みですの! いっぱい遊んで次の試験に備えますわよ!」
「なにも備えてないじゃねえか……っていうかよくそんな元気が出るな。シィナだってかなりギフト使ってただろ?」
「たしかにトラップアイテムとしてバナナを沢山出しましたが、あれくらいなら一日休めば大丈夫ですの。ヨルたちみたいに一発大きなのを全力で発動したらどうなるのか分かりませんが」
「それでボクはこんな筋肉痛みたいなダルさがあるのか……?」
どうやらギフトを一日で何回も使うより、全力で一回発動するほうが負担は大きいようだ。
でも筋肉痛みたいな感じになるってことは、毎回全力で発動した方がギフトが鍛えられて効果が増大するかもしれない。
「わたくしも全力ギフト発動を練習すれば巨大バナナとか出せるかもしれませんわ」
「巨大バナナ!? シィナお嬢様! 今巨大バナナって言いました!?」
「バナナ狂いメイドが来ちゃったですの」
朝食を運んできたアイラがスープをこぼしそうなくらい勢いよくこちらに近づいてくる。
ちょっとそれ危ないから……火事じゃなくて熱々スープでヤケドしたら情けなさ過ぎるから。
シュタッ!
「拙者、参上!」
「おはようございます、ビッツさん」
「おはようごぜえやすシィナ嬢。ヨルのお嬢はまだダラけモードでごぜえやすか」
「ダラけているわけじゃない、回復に努めているんだ」
どこからともなく現れたヨルのメイド、ビッツさん。
普段は朝食の時でも姿を見せないが、何かあったのだろうか。
「今朝がた、屋敷に王政管理局から知らせが届きやした。どうやら明後日の試験内容みたいでやすよ」
「次の試験の告知ですか」
「ビッツ、読んでくれー」
「知らせを読むくらいは自分でした方が良いですわよ、ヨル……あら? ヨルクライム……読むくらいは……ふふふっ」
「シィナお前、今ボクの名前と読むくらいで韻を踏めるなって思って笑ったな?」
「そ、そんなことはありませんわヨム」
「ボクの名前はヨルだ」
というわけで、試験内容の知らせはオレが読んであげることにする。
まあ、代わりに読むくらいはね、読むくらいは。
「えーと、次の試験は『ジャベリックダーツ』……試験考案者は、リューキ・クレイン第三王子……」
…………。
「えっ?」
「リューキ第三王子が考案した試験……?」
これはまた、嫌な予感が……
———— ――――
面白かったら★とリアクションをいただけると執筆の励みになります!
———— ――――




