50話 混戦
「こちらも攻めに転じましょう」
「「「はい! メロコ様!」」」
「戦略的撤退ですの! 次こそ必ず転ばしますわ~!」
「小物感がすげえなオイ」
しばらくメロコチームと戦っていると、それを見て感化されたのか、試験が始まってから様子見していた他のチームも動き出す。
オレたちの背後を狙うチームの気配を感じたので、挟まれてこちらがやられる前に一旦メロコチームとのやり合いを控えて戦線を離脱する。
「あのチーム、後ろにデカい女がいてリーダーが見えませんわ!」
「ズルいですの!」
「ティアラを寄越しなさい!」
「おしとやかなお嬢様方が段々と本性を現わして来やがったぜ」
サドンデスマッチ試験という特殊な環境の雰囲気にあてられたのか、恐る恐るといった感じで行動していた令嬢たちがどんどん大胆になり、まさにキャットファイト状態。
男だけの騎馬戦しか知らないオレにとってはまた違った戦場の雰囲気を感じた。
「ギフト、アイス」
パキッ……
「きゃっ!?」
「ティアラ、いただきでございます」
「やられましたわ~……!」
「ごめんなさいっ! お怪我ありませんか? 治しますよ!」
乱戦状態の中で囲まれて袋のねずみにならないように動き回りつつ、ユンちゃんが通り際にアイスのギフトで地面を凍らせて相手を滑らせ、ティアラを奪うということをやってちゃっかりと勝利を積み重ねていた。
しかも滑って転んで擦り傷などを負った相手にはクレーネがキュアのギフトで治癒させるというアフターケア付き。
「卑怯なのか慈悲深いのか……」
「わたくしのギフト含め、基本は相手を滑らす戦法なので卑怯ではありますわね。ティアラを着けているヨルを見えないように隠しながら移動してますし。でもクレーネの治癒ギフトでチャラですの」
「マッチポンプってやつでございます」
そんな感じで戦っていると、頭上からヨルのティアラに向かって手が伸びてきているのに気付く。
パッと上を見ると、そこには宙に浮くカーヴィンの姿があった。
「飛んでますの!?」
「チィッ! 気付かれてしまいましたわ! 撤退です!」
ティアラに手が届く前にヨルを庇ってファイティングポーズを取ると、カーヴィンはそのままふよふよと浮遊しながら逃げていった。
「頭上から来るとは予想外だぜ」
「あれもギフトの能力ですの……?」
「カーヴィンさんのギフトは『フライ』でございます。その名の通り、一定時間浮遊することができます」
ノーラの取り巻きの一人であるカーヴィン・リバレー伯爵令嬢。
ユンちゃんの説明によると、浮遊効果を有するギフトの持ち主らしい。
ただの金魚のフンかと思ったら意外と良い能力持ってるじゃねえか。
「ストーン」
バキバキィッ!
「なっ!?」
「どうしましたのヨルッ!?」
移動しながら戦っていたオレたちだったが、急にヨルの足が止まる。
「やられたぜ、足が動かねえ。これはお前の仕業だな……ノーラ」
「あら、やはり気付かれてしまいましたか」
どうやらヨルの下半身が硬直していて動かなくなってしまっているようだ。
彼女の視線の先には、先ほど頭上から襲いかかってきたカーヴィンのチームリーダー、ノーラ・ワイルドシップが不敵な笑みを浮かべて立っていた。
「どうかしら、ヨルさん……私のギフト『ストーン』で固められた感想は?」
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