49話 動き出し
「最初はみんな様子見だな」
「こんな争いごとの要素が強い遊びはやったことのない人が多いですものね」
サドンデスマッチ試験が開始されてすぐは、どこのチームも様子見……というか、どう立ち回れば良いのか分からず戸惑っている様子だった。
まあそりゃそうだよな。オレなんかは前世の運動会で騎馬戦とか経験しているからこういう状況でも動こうと思えば動けるのだが、この世界には運動会自体存在しないだろうし、シィナも今までの15年で経験した記憶はなさそうだ。
「それに、五大公爵家のチームに突撃するのにも勇気がいると思います」
「試験後の報復行動は禁止されているとはいっても、中々割り切れないと思いますでございます」
この場にいる9チームの内、五大公爵家がリーダーを務めるチームが4つ。
残りの5チームからしたらティアラを取りに行く事すら躊躇してしまうのも仕方が無いだろう。
とはいえこのまま動きがないままだとハイカー第二王子にどやされて評価を下げられてしまうかもしれない。
「ヨル、メロコ様のチームに突撃をかけますわ!」
「なっ!? よりによって1番強そうなチームじゃねえか!」
「わたくしたちがこの試験の着火剤になるんですの!」
「ちょっと何言ってるかわかんねえが、やるからには無駄死にすんなよ!」
「おっけーですわ!」
ヨルが他の2人にも指示を出し、メロコ・ギレッド率いる強豪チーム(多分)に全員で突撃をかける。
騎馬戦のように大将を乗せたりはしていないので棒倒し方式で全員単独行動ができるのだが、それでも1人を3人で守るとなると基本は固まって動いた方が良さそうだ。
「ごきげんようメロコ様~! 勝負しようぜ!」
「ダブル五大公爵家チームがお相手するのでございます!」
「あら、ヨルさんとユンさんではありませんか。あなた方から挑みに来るとは想定外……いいでしょう、かかってきなさいな」
「メロコ様、お下がりを!」
「メロコ様のティアラには指一本触れさせませんわ!」
堂々と正面から突撃をかましたオレたちを迎え撃つチームメロコ。
メロコの父親であるギレッド公爵はクレイン王国の兵士を束ねる将軍で、娘のメロコもその辺りの心得があるのか中々に統率が取れた立ち回りをしている。
「出てきて、バナナ!」
ポンッ!
「はい、ヨル食べて!」
「もごごっ!?」
ギフトで出したバナナの皮を剥いて中身をヨルに食べさせて皮だけにする。
「いきますわよ~! バナナトラップ!」
メロコ様チームの前衛の足元にバナナの皮を放り投げ、相手の行動力を削る。
これで相手もバナナの皮を警戒して……
「なんですかこれ?」
「初めて見る植物ですわね……」
「なんか、思ってた反応と違いますわ」
オレはてっきり、地面が滑りやすくなるから注意して行動することで相手の素早さを下げる目的で投げたのだが、そもそもバナナを知らないからこれを踏んだら滑るとかも分からないらしい。
今はただ未知の植物に警戒しているというところだろうか。
「まあ、何にせよこれでこちらが有利に……」
「ギフト・“フレイム”」
ボワアアアアアアッ!!
「バナナの皮が燃やされましたわ!?」
オレが仕掛けたとっておきのスリップトラップがメロコのギフト『フレイム』によって消し炭になってしまう。
これではもう踏んだところで黒い炭粉が靴の裏に付くだけだ。
「さあ来なさい。燃やし尽くしてあげますわ」
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