47話 バナナ教
「ムカデの神様……ああ、マヌマ様の事でごぜえやすね」
「本当にムカデ神信仰なんですのね」
ネピュア公爵家の別邸に集まったオレたちは明日のサドンデスマッチ試験に向けて軽く作戦を練った後、少し前に話していた教会と信仰の話に花を咲かせていた。
まあ、こういう占いとかスピリチュアル的なテーマって女子は好きだもんな……宗教トークをスピリチュアルって言うと一部の人から怒られそうだが。
「私、ズィオ族の方って初めて見ました。ビッツさんもそのムカデ神……マヌマ教を信仰しているんですか?」
「どうでやすかねえ……自治区で生活しているズィオ族のみんなや拙者の両親はそれなりに熱心にやってると思いやすが、拙者の世代の若もんで、なおかつ自治区を出ているようなズィオ族は信仰頼りにならないように地に足つけて暮らしてやすね」
「自分の人生は自分で悩み、考えて……それもまた素晴らしいマインドだと思います」
「自分でどうにもならない時に神様に寄りかかれるくらいの距離感が大切なのかもしれませんでございます」
宗教かあ……オレはあんまりそういうのは信じて来なかったな。
孤児として施設暮らしを強いられたのも、神様からの天罰とかだったら普通に意地悪過ぎるもんな神様。
でも女神っぽいのは実際にいるんだよなあ……だからこそ、この世界に意識と記憶を引き継いだまま転生できたわけで。
そう考えると、スールス神もムカデ神マヌマも本当にいるのかもしれない。
「あーしは敬虔なスールス教の信徒だよ~。だって神様いた方が面白いじゃ~ん」
「未確認生物とか探すのが好きな人の考えですわね」
まあでも、イオンさんの考えは分からないでもないかもしれない。
科学的に考えて完全には否定できない、いるかどうか分からない、あるかどうか分からないものというのは『そんなものはいないに決まっている』と考えるより『もしかしたらいるかも。いたらいいな』と思う方が人生が楽しくなる気がする。
「そういえば、ゼテール領に最近新しい宗教が出来たんだよな?」
「何を言ってますのヨル、そんなもの……」
「なあアイラさん?」
「そうなんですよヨルお嬢様! 実は最近、ゼテール領内で新たな信仰対象が見つかりまして!」
「ア、アイラ……?」
ニヤニヤしながらオレをスルーしてアイラに話を振るヨル。これは……
「シィナ様、ギフトで例のモノをお出ししていただけませんか?」
「例のモノってなんですの」
「私たちの神でございます」
絶対に神ではないが、アイラが何を欲しているのかは察した。
「出てきて、バナナ」
ポンッ!
「こちらがこの世界をお救いになる供物神バナナ様です!」
「意味が分かりませんの」
オレがギフトで出した1本のバナナを掲げて謎の布教を始めるバナナ狂のアイラ。
いやもう、そのレベルでお気に入りなの? ちょっと怖いんですけど。
あと供物神ってなんだよ。
「食べて良し、投げて良し、叩いて良しのまさに万能神! バナナ様を信じ、その命をいただくことで我々はニルヴァナーナへとたどり着くでしょう……」
「ニルヴァナーナ……」
どこだろう、フィリピンとかかな。
「ふむふむ、この男根のような反り立った形状に一皮剥ける構造……バナナ様は子孫繁栄の神様ってことでございやすね」
「ちちち、違いますっ! わ、私はそんなつもりで言ったのではありませんっ!」
「食べれば子宝に恵まれるかもしれませんでございます。一理あると思いますでございます」
いやないだろ。
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