46話 ユンのメイド
「ユンちゃんお帰り~」
「ただいまでございます」
教会の話をワチャワチャとしながらネピュア家の別邸に入ると、一人のメイドが出迎えてくれる。
オレほどではないが、女性にしてはスラっと背が高くて……あとなんかギャルっぽい。
「紹介するのは初めてでございますね。ユンのメイドのイオンでございます」
「ユンちゃんのメイドのイオンで~す。以後お見知りおきを~」
「シ、シィナお嬢様のメイドのアイラです。よろしくお願いします!」
「アイラちゃんね~よろしく~」
シュタッ!
「お久しゅうごぜえますイオン殿。ヨルお嬢のメイドのビッツでごぜえます」
「あ、ビッツちゃん久しぶり~」
五大公爵家のメイド同士ということで交流があるのか、ヨルのメイドのビッツさんとユンちゃんのメイドのイオンさんは知り合いのようだ。
「私はクレーネと申します! 庶民シスターなのでお付きのメイドはいません!」
「クレーネ様よろしくね~」
「ビッツさんもですけど、ユンちゃんのメイドさんも姿を見せないタイプですのね」
昨日、今日と街でユンちゃんと会った時にイオンさんは同行していなかった。
ヨルのメイドのビッツさんも神出鬼没だけど、もしかして五大公爵家のメイドは表に出ないで見守る忍者スタイルの人が多いのだろうか。
……と思って二人に聞いてみたところ、衝撃の事実が明かされた。
「ユンは外出する時、メイドをつけませんでございます。代わりにお父様が用意したボディガードが遠目からユンを見守っているのでございます」
「ユンに何かしたら即ズドン! だぜ」
「それでは、イオンさんはお屋敷メイドということですの?」
「まあ、そうといえばそうなのでございますけれど……」
「イオンはユンの兄貴なんだよ」
「なるほど、ユンちゃんの兄貴……」
…………。
「「「ええっ!?」」」
「どうもどうも~。ネピュア公爵家長男のイオン・ネピュアで~す」
いや五大公爵家のご令息がなにしとんねん。
「って、え!? おおお、お兄様!? お姉様でなく……!?」
「お兄ちゃんですよ~」
「ユンちゃんのご家族というだけでも驚きなのに、お兄様とは……」
「ぜ、全然男の人に見えません! 見た目も声も女の人です!」
女装男子……いや、このレベルになるともはや男の娘か。
裏声を出しているというわけでもなく、普通に可愛らしいギャルボイスなんだが一体どうなってんだ……?
「イオンお兄様は女装と家事が趣味なのでございます」
「両親に許可貰ってお屋敷の中だけユンちゃんのメイドやってるんだ~。あ、メイド中のあーしのことはネピュア公爵家のイオン様じゃなくてメイドのイオンとして接してくれると嬉しいな~」
「わ、分かりましたの……」
「改めてよろしくお願いします、イオンさん」
「あいあい、みんなよろしくね~」
ちなみに今はこんな感じのイオン様だが、屋敷の外に出ればネピュア公爵家の令息としてTPOを弁えてキチンと公務をこなすらしい。
まあ、自分の家の中くらいは好きな恰好で好きな事して過ごしたいわな。
「むむむ……イオンさん、私より女の子っぽい……」
「わたくしも、女性として負けた気分ですわ……」
「シィナさん、こうなったら私たちもメイドの格好をして乙女力を鍛えましょう」
「クレーネはシスターやってんだから乙女力は十分だろ。シィナは……」
…………。
「手から可愛い果物でも出せばいいんじゃねえか?」
「ヨルのアドバイスが雑過ぎますの!」
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