40話 やきもちフレンズ
「へぇ~ミカンですか~。ゼテール領の果物はどれも美味しいので楽しみです!」
「今日は体力的に厳しいですけど、また回復したらギフトで出してあげますわ」
「ありがとうございます!」
ゴーン……ゴーン……
「あら、もうこんな時間ですのね」
休憩がてらクレーネと話していると、夕刻を知らせる鐘の音が王宮内に鳴り響く。
いつの間にか話し込んでしまったようだ。
さすがにそろそろ帰らないと……
「それではまた明日、クレーネ」
「はい! 明日も試験がんばりましょうねシィナ様!」
一応オレとクレーネは王妃候補の座を狙う敵同士なのだが、彼女は『そんなことはまったく気にしていない』とばかりに笑顔を振りまいて宿泊している王宮の迎賓館へと帰っていった。
「呼び捨てで良いと言ったのに、最後まで様呼びでしたわね」
「シィナお嬢様が良くても、周りからは良く思われないからだと思いますよ」
「自衛のための様呼びなんですのね」
まあ、当人同士は気にしていないのに周りからパワハラだセクハラだって言われることもあるし、貴族と庶民の関係性を考えたらそういうこともあるかもしれないな。
「それにしても、アイラはクレーネとすっかり打ち解けていましたわね」
「私も今は両親がいませんから。孤児同士のシンパシーってやつですね」
そういえば、アイラも親をリバーサイドベアという凶暴な動物に殺されて天涯孤独の身だったな……まあ、今はうちの屋敷でメイドをしてくれているし、オレとも家族みたいなもんだけどな。
ってか、それで言ったらオレも前世では施設出身だし……なんだろうな、やっぱそういう人同士って惹かれ合うのかもしれない。
「それでは、わたくしたちも帰りましょう」
―― ――
「ヨル~ただいま戻りましたの~」
「おうシィナ、遅かったじゃねえか。ボクより先に呼ばれてたよな」
「試験が終わった後にちょっとありまして。そこで知り合った参加者とバラ園で話していたら遅くなってしまいましたの」
「知り合った参加者?」
「クレーネという……ほら、待機所に1人だけ庶民っぽい女性がいたでしょう? あの子と……」
ヨルにクレーネと出会った時のことを説明する。
クレーネに絡んでいた令嬢たちが、オレの事をヨルのボディーガードだと思っていた件については恥ずかしいので隠しておいた。
「ふーん。王都の教会でシスターをねえ……」
「クレーネは治癒系のギフトを持っているすごい子なんですのよ。わたくしの事も存じていてくれて……」
「ほーん。治癒系のギフトねえ……」
…………。
「ヨル、あなたなんだか……」
「なんだよ」
「もしかして、クレーネにヤキモチ焼いてますの?」
「は、はあああああっ!? なっなんでそういう話になるんだよっ!」
なんというか、いつもぶっきらぼうだけど、今はいつにも増してというか……
そういえばオレがユンちゃんと仲良くしてたときも若干そんな雰囲気あった気がするし……
「ヨルってば、意外と重い女なんですのね」
「重いのはシィナのほうだろ! そんなおっぱいしてんだから!」
「体重の話はしていませんわ!」
シュタッ!
「ヨルお嬢は試験が終わってからシィナお嬢の帰りを今か今かと待ちわびていやしたよ。なんでも、一緒に行きたい茶菓子の店があるとかで……」
「おいこらビッツ! いきなり現れて余計な事言うな!」
「こりゃ失敬」
「ヨルクライム様のメイドは相変わらず神出鬼没ですねえ」
この後、ヨルおすすめのお茶菓子のお店に二人で行って少し遅めのティータイムを楽しんだ。
帰る頃にはすっかり機嫌を良くしてくれて……って、なんでオレはこんな恋愛シミュレーションゲームの好感度管理みたいなことやってんだ……?
「ヨル√は難易度高めですのね。ちょっとミスるとヤンデレBADエンドですわ」
「なんの話だよ」
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