39話 庶民ギフト
「改めましてシィナ様、先ほどは庇ってくれてありがとうございました。私は王都の教会でシスターをしているクレーネと言います」
「シスターさんだったんですのね」
「素晴らしいご職業です」
クレーネに八つ当たりをしていた悪役……というかもはや脇役令嬢の2人が退散した後、オレとアイラは彼女を連れて王宮内に作られたバラ園で少し休憩していくことにした。
ここは王宮の迎賓館を利用している人であれば自由に来て良い場所ということで、王妃候補選抜会のため迎賓館に滞在しているクレーネの権限でオレたちも使わせてもらうことにした。
いやー、実はギフト使いまくって今日はもうヘロヘロだったから助かったぜ……あの八つ当たりお嬢様と殴り合いのケンカになったら負けてたかもしれんな。
「本当は教会から試験会場に通うことも出来るんですけど、せっかくなので迎賓館に泊まることにしました」
「良いと思いますわ。こんなところ、今回のような催しがないと来れませんから」
だからこそ、迎賓館の利用を断ってヨルの別邸に泊まることにした選択が悔やまれる……いやまあ、あの別邸もめちゃめちゃ居心地いいのだけれど。
「先ほどの2人、どうやら選抜会の参加条件を満たすためにギフトが使えると虚偽の報告をしていたみたいで……」
「それで今日の試験で噓がバレて不合格になったんですのね」
やっぱその辺誤魔化して参加してるヤツもいるんだな。
結局こうやってバレるんだからやんなきゃいいのに……まあ、それくらい王妃になれるチャンスってのは価値があるのかもしれない。
「クレーネさんは、代々ギフトを持つご家庭なんですか?」
「どうなんでしょう。私は孤児なので、実の親は知らないんです」
「あっ……不躾な事を聞いてごめんなさい……」
「いえいえ、気にしないでください」
なるほど。孤児として教会に預けられ、そのままシスターに……って感じか。
ゼテール領にも教会はあるけど、そこのシスターさんは普通に家族がいるから孤児がどうとかまで気が回らなかった。
これはむしろ、アイラのナイス不躾質問って感じだな。
「私のギフトは『キュア』と言いまして、傷の治癒を早める効果があるんです」
「まあ、キュアのギフトを……!?」
「素晴らしい能力です……!」
治癒系のギフトは分かりやすく人の役に立つのでかなり重宝される能力だ。
庶民出身とはいえ、教会のシスターでキュアのギフト持ちという肩書があれば、王妃候補に選ばれた暁には聖女の位を貰って爵位が付くかもしれない。
「私、この力で育ててくれた皆さんに恩返しがしたいんです、だから教会でシスターとして働きつつ、お医者様が不在の馬車に臨時の看護員として同乗したり……それでゼテール領にも行ったことがあって、そこで農園を視察しているシィナ様をお見かけしました」
「わたくしの事を知っていたのにはそのような理由があったのですね。てっきりこの国の貴族令嬢の名前を全員覚えているのかと」
「あははっ。さすがにそれは無理ですよ~。教会に足を運んでくれる方であればお顔を見れば分かりますが、各領地で暮らしている方々までは把握してません」
「それでも十分すごいです……」
「わたくしなんか領民とカボチャの区別もつきませんわ」
「それは区別してくださいシィナお嬢様」
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