38話 主人公枠?
「はぁ……ダメですわ、タオ王子いませんの」
「そろそろ帰りましょう、お嬢様」
王宮内で不審に思われない程度にタオ第四王子を探してみたが、結局バッタリ遭遇することはできず。
明日も試験で王宮を訪れるわけだし、今日は諦めてヨルの別邸に戻ろう。
そう思って王宮の通行門まで移動しようとした時……
「庶民風情が、生意気なのよ!」
「わ、私は……っ」
「……ん?」
「な、何やら不穏な気配を感じますね……」
近くの建物の陰で誰かが言い争っているような声が聞こえてくる。
言い争っているというか、片方が一方的に暴言を浴びせているような……
「なんで庶民のアンタが合格でわたくしたちが不合格にならないといけないの!?」
「きっと不正をしたに決まっていますわ!」
「な、何もしていませんっ! 私はただギフトを使っただけで……っ」
……なるほど。
どうやら今日のギフト披露試験で落ちたお嬢様方が、唯一の庶民の参加者をいびっている所に出くわしてしまったらしい。
なんともまあ定番のイベントというか……
「わたくし、弱い者いじめは嫌いですの」
「シ、シィナお嬢様……」
状況が分かったならあとは対処するだけだ。
本当はスマホかなんかで証拠を撮影してから脅しでもかけて穏便に(?)済ませたいところだが、そんな便利なアイテムはこの世界に無いのでしょうがない。
「そこの方々! いじめはいけませんわ!」
「だっ誰よ……!」
「こ、こいつ、マルチホールにいたヨルクライム様の護衛の女……っ」
いや違うから。参加者だからオレも。
まあ、王妃候補選抜の会場に1人だけ女子バレー選手みたいな体格の女がいたらそう思うのも仕方ないのかもしれんが……さすがのオレもちょっと傷ついちゃうぜ。
「試験に落ちた者はさっさと王宮から出ていくのですわ!」
「ご、護衛の身分でわたくしたちに指図するんですの!?」
「ま、待ちなさい、コイツはあのギストレンジ公爵令嬢の護衛よ……!」
お、なんか分かんないけどヨルの護衛って勘違いしてもらってた方が良いっぽいな。
ちょっと癪だがこのまま護衛の女騎士ってことで進めさせてもらうか。
……いやまあ、王妃候補の試験に来てるからオレもそれなりにちゃんとしたお嬢様コーデしてるけどね?
なんで気付かないんだよ。
「くっ……! と、とにかく! アナタのような庶民はギフトが使えた所でどうせ王妃になどなれっこありませんわ!」
「明日の試験で落ちるに決まっています! それでは失礼!」
「ごきげんようですわ~」
うーん、最後の捨て台詞まで庶民ディスとは。
あれ、どこの家の令嬢だっけな……知ってれば五大公爵家のヨルやユンちゃんにチクっておいたんだが、どうにも記憶にないモブ令嬢のようだ。
「あ、あの……!」
「大丈夫ですの? 手荒な真似はされていませんか?」
「大丈夫です! 助けていただきありがとうございました、シィナ・ゼテール様!」
「あら、わたくしのことを知っていますのね」
オレみたいな辺境伯令嬢のことも知っているとは……さっきのチンピラお嬢様方よりよっぽど優秀だな。
まあ、こういう場にいる唯一の庶民の女の子っていうのは往々にして主人公枠というか、身分の代わりに色々と才能があったりするわけで。
多分王族からも気に入られるタイプだから仲良くしておいた方が良いだろうな。
というわけで、こういう時に好感度を上げる方法は……
「あなた、おもしれー女ですわね」
「えっ?」
……なんかちょっとコミュニケーションミスった気がするわ。
———— ――――
面白かったら★とリアクションをいただけると執筆の励みになります!
———— ――――




