36話 空腹の騎士
「以上で本日の試験は終了となりますので、このままお帰りいただいて大丈夫です。お疲れさまでしたシィナ様」
「ありがとうございました。また明日よろしくお願いいたします」
ギフト披露試験が無事に終わり、演習場を出て王宮の中庭に移動する。
今日のスケジュールは全行程終了ということで、メイドのアイラが迎えに来るのを待って帰宅することに。
まあ、帰宅って言ってもヨルの別邸に行くわけだけど。
「ヨルとユンちゃんは大丈夫かしら」
二人はオレが呼ばれた時もまだ順番が来ていなかったので、試験が終わるのはもう少し後になるだろう。
五大公爵家だし、招待組の中でも最後の方なんだろうな。
「今日はいっぱいギフトを使ったから疲れましたわね」
ユンちゃんにバナナあげて、バシム王子にロマロンあげて……なんか喜んでたから追加で何個か出して運営スタッフさんに渡して……オレの身体はボロボロだぜ。
「今日はもう、使えてあと1回かしら。最近はアイラにバナナをせがまれるから、そこで……」
ぐぐ~……
「…………」
「お腹空いてますの?」
「いえ、大丈夫であります」
中庭でアイラの迎えを待っている間、王宮の警護を担当している騎士の一人がオレの傍に待機してくれているんだけど、試験中飲まず食わずで中庭に常駐してくれているのか、オレ以上にお疲れのようだ。
こういう所の警備員って大変だよな……駐車場で一日中突っ立ってるおじいちゃんとか、ようやるな~って思うわ。
シルバー人材厳しいって。
「騎士様、お好きな果物はございますか?」
「果物、ですか。今はアクエリルが……いえ、何でもありません」
「アクエリルですね。ちょっとお待ちください」
アクエリルは今の季節が旬の大きな果物だ。
スイカやメロンに似て甘くてみずみずしく、水分が多いので水分補給代わりに食べたりもする。
「おっきいからちょっと大変ですけど……はっ! 出てきて、アクエリル!」
ポンッ……ズシッ!
「おっ重いですの~!」
「大丈夫でありますか!? というか、えっ!? アクエリルがいきなり……!?」
「わ、わたくしのギフトですの……!」
自分で出したんだけど、いきなりバスケットボールみたいなクソ重いのが手のひらの上にドスってきたらそりゃこうなるよね。
これ気を付けないと腰痛めるな……
「騎士様、ちょっとその剣で切っていただいてもよろしいですか?」
「こ、この剣は王宮に仇なすものを成敗する為に賜ったもので、アクエリルを切り分ける為に使うわけには……」
「まあまあ、ちょっとくらい良いではありませんか」
というわけで、なんとか騎士を丸め込……説得して、アクエリルを切り分けてもらって一緒に食べることに。
「シャクシャク……うん、さっぱり甘くて美味しいですの。騎士様もどうぞ」
「いえ、自分は任務中で……」
「今日は暑いですから、空腹と水分不足で熱中症になってしまいますわ。いざとなった時にわたくしを守れるようにしっかり補給してくださいな」
「そう言われると断れないでありますね……お心遣い、感謝いたします」
しばらく遠慮していた騎士だったが、結局オレの押しに負けてアクエリルを美味しそうに食べてくれた。
ふっ……オレとしたことが、大阪のおばちゃんみたいな善意の押し売りをしてしまったな。
「シィナお嬢様、お迎えにあがりました~」
「アイラ、ごめんなさい」
「えっ、急に何ですかお嬢様」
「今日のおやつ、バナナは出せません」
「え゜っ゜」
アイラはショックでどこから声出してんねんって感じの断末魔をあげてその場に崩れ落ちた。
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