35話 ギフト披露試験
「お待たせいたしました……シィナ様、シィナ・ゼテール様。こちらへどうぞ」
「はーい」
ノーラやカーヴィンが呼ばれ、それからも数人の令嬢たちが演習場へと向かってしばらく経った後、遂にオレの順番がやってきた。
というかこれ、王妃候補の選抜会なんだよな?
なんか病院の診察待ちみたいな感じだったな……
「それではヨル、ユンちゃん。お先に行って参りますわ」
「一発ぶちかましてこいシィナ」
「一撃必殺でございますよシィナさん」
なんでオレが第一王子と戦うことになってんだよ。
手から果物出すの見せるだけだよ。
……。
…………。
「バシム様、次の参加者をお連れいたしました」
「シィナ・ゼテールと申します。よろしくお願いいたしますわ」
「ゼテール伯爵の娘か……そういえば、タオのギフト発動を祝ってミカンとやらを献上してくれたな。タオも、タオの母親のサライト第二王妃も喜んでおった。感謝する」
「と、とんでもございません……! こちらこそ、お召し上がりいただき光栄ですわ」
バシム第一王子は、タオとは腹違いの兄弟というヤツだ。
クレイン王国の王族の仕組みとして何人か王妃がいるのは普通で、現王政でもベガス・クレイン王は二人の女性を娶っていて、バシム第一王子、ハイカー第二王子、リューキ第三王子はアストラ第一王妃の子供、そしてタオ第四王子はサライト第二王妃の子供だ。
その為、上の三人とタオ王子とでは結構年齢が離れていて、第一王子のバシム王子からしたらもはや弟というよりか、親戚の甥っ子くらいの感覚かもしれない。
「シィナ・ゼテール様のギフトは『フルーツ』……手から任意の果物を召喚できると聞いておりますが、間違いありませんね?」
「その通りでございます」
「ギフトの発動に条件などはあるか?」
「わたくしの知らない果物はイメージできないので出せませんの」
その他、一度の発動で出せる果物は一つだけ、果物の大きさや種類によって体力の消耗が変化することなどを伝えると、バシム王子から『中々に面白いギフトだな』と興味を持ってもらえた。
よし、ここまでは好感触だな……まあ別に嬉しくは無いんだけど。
「なるほど……分かった。それでは早速、ギフトを使ってみてくれ」
「かしこまりました。何か希望される果物はありますか?」
「そうだな……『ロマロン』の実は出せるか?」
「可能だと思いますの」
ロマロンは落花生のようなひょうたん型の殻の周りにトゲが付いた果物で、中に身が二つ入っており、味や食感はクリに近い。
土の性質や気候などの関係で、クレイン王国よりも隣国のチェスナード王国での栽培が盛んらしい。
ゼテール領ではほとんど栽培していないのだが、先ほど会ったカーヴィン様の家……リバレー伯爵領の山岳地帯にロマロンの群生地があるという話を聞いたことがある。
「バシム王子はロマロンがお好きで?」
「果物の中では1番好きだ。しかし、この国ではロマロンは希少だからな……チェスナード王国といつしか和平を結べれば、いつでも食べられるようになるやもしれんが」
「バシム様、そのような事を第一王子の身の上でおっしゃるのはお控えください」
「おお、すまんすまん。シィナ嬢も、今の話は聞かなかったことにしてくれたまえ」
「かしこまりました」
というわけで、全くもってどうでもいいバシム王子の失言をスルーしつつ、オレはギフトを発動した。
「それでは参ります……出てきて、ロマロン!」
ポンッ! チクチクッ!
「あいたたたっ!」
「おお……大丈夫かシィナ嬢」
「だ、大丈夫ですわ。ちょっとチクチクしただけですの」
なんか知らないけど直に手のひらの上じゃなくてちょっとだけ浮いた状態で召喚されるんだよな……
今度ロマロンを出すときは手袋かなにかしておこう。
「うむ……これは見事なロマロンだ」
「身を取り出して、蒸して食べても良いですし、シロップ漬けやロマロンクリームにしてパンに塗っても美味しいですわ」
「ふふっ。なんだか腹が減ってくるな……シィナ・ゼテール嬢、ギフトの披露ご苦労だった。合格だ」
「ありがとうございます!」
こうしてオレは、無事にギフトの披露試験を通過したのであった。
ってかロマロンの殻、こんだけトゲトゲしてるなら武器に使えそうだな……んなわけないか。
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