34話 取り巻き
「ヨルクライム様……お久しぶりですわね。それにユン様まで」
「ごきげんようノーラさん。ズィオ族自治区の周年パーティー以来でございますね」
「あー、そういえばそんなの行ったな」
「自分のメイドの地元イベントをそんなのって言っちゃダメですわヨル」
ついさっきまでワイルドシップ家の栄枯盛衰ストーリーをヨルから聞いていたところに、ご本人であるノーラ・ワイルドシップ伯爵令嬢がご登場。
過去の話を要約すると、五大公爵家から伯爵に降爵したワイルドシップ家の代わりにギストレンジ家が五大公爵家入りをしたということで、まあそれなりに思う所はありそうな間柄のお嬢様だ。
「ちょっとそこのアナタ! 五大公爵家のヨルクライム様になんていう口のきき方ですか! 名を名乗りなさい!」
「人に名前を尋ねる時は、自分から仰るのがパーフェクトお嬢様になるための近道ですわ」
「パーフェクトお嬢様ってなんだよ……」
ノーラにくっ付いてやってきた取り巻きみたいな貴族令嬢は、五大公爵家のヨルに軽い態度で接するオレのことが気に食わないようだ。
「な、生意気な唐変木ですわね……まあいいでしょう、名乗って差し上げますわ! わたくしはリバレー伯爵の娘、カーヴィン・リバレーですわ!」
「カッコいい名前ですの!」
「嬉しくないですわ!」
リバレー伯爵領か……たしかワイルドシップ伯爵領の南にあったはず。
トライキルマウンテンとかいうめちゃめちゃ険しい山脈地帯があって、命知らずの登山者が毎年何人も遭難しているんだとか。
「カーヴィン様、ノーラ様、初めまして。わたくしはゼテール伯爵の娘、シィナ・ゼテールと申しますの」
「ノーラ・ワイルドシップです……よろしくお願いいたしますね、シィナ様」
「あらあら、ゼテール領のご子女でございましたか~。田舎の百姓貴族が王妃候補選抜会にいらっしゃるなんて驚きですわね~!」
「百姓貴族を知っているんですの!?」
「な、なんですの急に前のめりになって……農地管理を生業にしているゼテール伯爵家など、百姓貴族でございましょう?」
「あ、そういう意味だったんですのね」
てっきり漫画の話かと……んなわけないか。
っていうか、もしかしてこれ、オレ今バカにされてる? まあいいけど。
「わたくしの家が百姓貴族なら、カーヴィン様の家はワンダーフォーゲル貴族ですわね」
「なんですのそれ!? リバレー家を侮辱していますの!?」
「ち、違いますわ! リバレー領にはトライキルマウンテンがあるから、山登りとかなんかいい感じでなのかな~って」
「フワッとしてんなあおい」
そんな感じでカーヴィンとぎゃーぎゃー話している内に彼女たちのギフト披露の順番が回ってくる。
オレより先に呼ばれたということは、どうやら二人とも招待組ではなくて審査を突破して参加している応募組のようだ。
「ぐぬぬ……シィナ・ゼテールよりも先に呼ばれるなんて屈辱ですわ!」
「ギフトのお披露目がんばってくださいませ~」
「余計なお世話ですの!」
なんか、口も態度も悪いけどちょっと面白いやつだったな。
「それでは皆様……お先に失礼いたします」
「健闘を祈っておりますでございます」
「まあ、がんばれよ」
ノーラの方は、もっとヨルに対して敵意を向けてくるかなーと思ったがそんなこともなかったな。
過去に問題を起こして降爵したとはいえ、何だかんだで元五大公爵家の礼儀を弁えているという事だろうか。
「今度、トライキルマウンテンで山頂アタックでもしてみようかしら」
「お嬢様がそんな過酷な事すんなよ」
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