32話 ユンのギフト
「出てきて、バナナ!」
ポンッ!
「はい、ユンちゃん。これがバナナですわ」
「ありがとうございますシィナさん」
ユンちゃんがバナナを知らないということで、オレのギフトで召喚してプレゼント。
まあ知ってるわけないよな、オレが前世の記憶から具現化させた食べ物だし。
「シィナお前、これからバシム王子の前でギフトの披露するのに体力消耗して大丈夫なのかよ」
「順番が来る前にケータリング食べまくって回復しますわ」
現在、これから行われるギフト披露試験の準備中ということで、待機会場には自由に飲食可能なケータリングが用意されている。
まあ、今回の試験はギフト非習得者が虚偽の申告で審査を通過していないかどうかを調べるために、実際にバシム第一王子の前でやって見せるというものなので、ものすごいギフト技とかを発動する必要は無いとのこと。
とはいえ、オレは手から果物出す事しか出来ないからすごい技とか別に無いのだが。
「これがバナナ……捕縛アイテムにもなるのでございますか?」
「そうですの! 外の黄色い皮を捲って中の白身を食べて、皮の部分を捕縛したい相手の足元に投げつけるのですわ」
「白身ってなんだよ、卵かよ」
「白身が可食部で、黄身が捕縛部でございますね」
「しかも納得すんのかよ。ってか捕縛部ってなんだよ」
自分で言っといてなんだけど、確かにバナナって白身と黄身だな。
厳密に言うと黄色い部分は身じゃないけどな。
あとユンが言ってる捕縛部ってのはオレもよく分からない。
「バナナは凄いんですのよ。そのまま凍らせるとカチコチになって、釘を打てるくらい強度が上がりますの」
「いやいや、こんなグニっとしてるもんが凍ったところでそんな硬くなるわけないだろシィナ」
「本当ですの! ちょっと今は見せられませんけど、冬になったらバナナで釘を打ってあげますわ!」
「そりゃあいい。釘が打ててメシにもなるってんならウチの職人街で大活躍だな」
オレの話を全くもって信じてなさそうなヨル。
まあ確かに、何も知らない状態で『凍ったバナナで釘が打てる』って言われたらオレも冗談だと思うだろうな。
「それなら、今ここで試してみようではありませんでございましょうか」
「ユン、お前文法おかしいからな。ボクたちが出会った時からずっと」
「まあまあ、そこは気にしないでくださいでございます」
バナナを手に持ったユンが、ヨルの指摘を軽く流しながら何やらやろうとしている。
「ギフト、“アイス”」
パキパキパキッ……
「はい、アイスバナナの完成でございます……って黒っ! バナナがまっ黒になってしまいましたでございますよ!?」
「す、すごいですわ! バナナが凍ってますの!」
なんと、ギフトを発動したユンの手にはカチコチに凍ったまっ黒のバナナが。
「そういやユンのギフト『アイス』は物を凍らせる能力だったな」
「すごいギフトですわねユンちゃん……さすが五大公爵家のご令嬢ですわ」
「て、照れますでございます……あら? ねえヨルさん、このバナナ本当にカッチコチでございますよ」
「え~? そんなわけ……うわ、マジでカチカチじゃねえか」
凍ったバナナを持って地面をコツコツとたたき出すユン。
クギが打てるくらい硬くなるって言ったのはオレだけど、周りの令嬢に何やってんだって目で見られてるから正直やめていただきたい。
「ヨル、1回『カッチカチやぞ』って言ってみてくださいまし」
「はぁ? まあいいけどよ……カッチカチやぞ」
「あはははは! 悔しいですわ~!」
「なんなんだよ!」
ザブングル加藤だよ。
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