30話 五大公爵家
「それにしても、まあ予想通りというか……ほとんどの公爵家が年頃の娘さんを寄越してやがる。五大公爵家のご令嬢も勢ぞろいだな」
「そうですの?」
王宮内のマルチホールに集まった王妃候補選抜会の参加者たち。
オレは社交界とか行かないから全然知ってる人がいないが、五大公爵家のヨルはそれなりに見知った顔がいるらしい。
シィナ・ゼテールさん、実は交流関係狭すぎか……?
あなた田舎でフルーツ栽培してる場合じゃないわよ。
「わたくし、五大公爵家でお顔を知っているのはヨルとメロコ様、それからリンカ様だけですわ」
「せめて五大公爵家くらいは全員知っておけよ……」
しょうがないじゃん……この世界、映像技術が発展してないから写真も動画もほぼ無いんだよ。
貴族のお嬢様名鑑みたいな、一覧で肖像画が載ってる本でも出してくれないかな。
まあ、そんなの犯罪とかに利用されそうだから売られても発禁になる気がするけど。
ちなみに写真も動画も『ほぼ』無いって言ったのは、念写のようなギフトを使える人がいて、その人にお願いすると写真みたいな肖像画を作ってくれるという話を聞いたことがあるから。
ただ量産はできないし、体力的に1日1枚が限界なのでめっちゃ高いらしい。
オレが出した果物と交換してくれないかな。
「それじゃあボクが五大公爵家の令嬢を紹介してやるよ。まずは……」
「ギストレンジ公爵家の令嬢を紹介してくださいまし!」
「ボクだよそれは」
というわけで、しょうもないボケも挟んだところで本題へ。
「ギレッド家のメロコはさっき説明したから良いとして……リンカも知ってるんだっけ?」
「一応、お顔だけは」
燃えるような赤髪のメロコとは対照的な、淡い水色のウェーブがかった髪をなびかせる、落ち着いた雰囲気の女性。
「ナヘーゼル公爵家の娘、リンカ・ナヘーゼルだ。ナヘーゼル領は大きな湖と賑やかな湖畔の街を有するクレイン王国屈指の観光地だな」
「わたくしも行ったことがありますの。あそこの魚料理が美味しくて美味しくて……」
「シィナは食べ物ばっかりだな。次は……」
その時、オレはものすごい『巨』のオーラを背中に感じた。
巨というか、乳というか……振り返るとそこには、ありえん爆乳のお姉さんがほんわり笑顔で佇んでいた。
「す、すごいおっぱいですわ……わたくしの負けですの……」
「あの方はカフカさんだ。ボクたちの2つ上の世代で、五大公爵家のマシャロー公爵家の娘だな」
「カフカ様……ものすごい迫力ですわね」
「おっぱいの話か?」
「おっぱいの話ですの」
何はともあれ、これで五大公爵家の4人を把握できた。あと一人は……
「ヨ~ル~さんっ」
「おわっ!? って、なんだユンか……」
「あら、何だとは失礼でございますわね。ユンの方がヨルさんより大きいというのに」
「ほとんど変わらねえだろ……」
二人で会場内のお嬢様方を物色(?)していると、ヨルが一人の女の子に絡まれる。
透き通るような銀髪に、ゾクッとするような赤い瞳、そしてヨルと同じくらいの小柄な体躯……一部の男性陣から熱狂的に推されそうな少女だ。
「シィナ、コイツが最後の五大公爵家の令嬢だ」
「お初にお目にかかりますでございます。ユンはユン・ネピュアと申しますでございます」
「ご、ご挨拶どうもでございますの……わたくしはシィナ・ゼテールと申しますでございますわ」
「色々と釣られてるぞシィナ」
ネピュア家は、ギストレンジ家の東に領地を有する五大公爵家だ。
ウチのゼテール領とネピュア領は間にギストレンジ領を挟んでいるのであまり交流が無いのだが、二人は領地を接しているうえに五大公爵家同士ということでそれなりに交流があるらしい。
「シィナ、ユンはボクたちの1個下だからタメ口でいいぞ」
「是非ともユンと呼び捨てにしてくださいましでございます」
「五大公爵家の方にそのような口のきき方は出来ませんわ」
「ボクはいいのかよ」
「ヨルはだって……ヨルだから」
とりあえずユンちゃんと呼ぶことにした。
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