27話 極東解放軍
「極東解放軍っていうのは、アレだな。クレイン王国から独立を目論む連中の活動団体名ってヤツだな」
「そんなのがいるんですの?」
「いるんだよ、そんなのが」
ひったくり犯をスベらせたりしつつ王都観光を楽しんだオレたちは、休憩がてら別邸近くの喫茶店に入って気になっていた話をヨルに聞いてみることに。
街の人たちが噂していた『極東解放軍』という活動団体、オレは聞いたことが無かったが、五大公爵家の一角を担うギストレンジ家のヨルはそれなりに詳しく知っているようだった。
「クレイン王国の東部……ネピュア領とワイルドシップ領の間にズィオ族の自治区があるだろ?」
「たしか、クレイン王国が建国される前から住んでいる古代民族でしたっけ」
ズィオ族は、いわゆる北海道におけるアイヌ民族みたいな立ち位置の人たちで、この辺りの地域がそれぞれ王国として土地の上に境界線を引く際、国に土地を管理されるのを嫌って一部地域を自治区と主張して生活している。
昔は土地を接するクレイン王国やチェスナード王国に張り合う小国ムーブをかましていたのだが、大きさや人口はゼテール領の半分以下なので勝てるはずもなく。
チェスナード王国の奴隷地区にされそうになった所を、クレイン王国が助けて今の『クレイン王国ズィオ族自治区』という形に落ち着いたのだとか。
「最近になって、自治区の一部地域で独立運動が活発化してきているらしくてな……そいつらが『極東解放軍』を名乗って色々と悪い事をしているってわけだ」
「そんなことになっていたんですのね」
「なっていたんだよ、そんなことに」
自治区になってからのズィオ族たちは、チェスナード王国の脅威から守ってくれたうえに自治区としてある程度自由に生活させてくれているクレイン王国に感謝している人が多いと聞く。
自治区を出て王国民として暮らしているズィオ族も結構いて、ヨルのシノビメイド(?)であるビッツさんもズィオ族の血を引いている。
「うーん……」
「どうしましたのアイラ?」
喫茶店に入ってから定期的にキョロキョロと辺りを見渡しているアイラ。
なんだろう、野生のバナナでも探してんのかな。
「ヨルお嬢様のメイドのビッツさんは、今もどこかで見守っておられるのかなーと思いまして」
「多分どっかにいるんじゃないか? おーいビッツー」
シュタッ!
「お呼びですかいお嬢」
「ほら」
「シュシュっと参上ですの!」
「どこから来たのか全然分からなかったです!」
さすがシノビメイド、まさに神出鬼没……
「ビッツはズィオ族自治区出身だったよな。最近の極東解放軍について何か知っているか?」
「そうですねえ……自治区で暮らしていたのはほんの小童だった時だけですから、内部情報って言えるもんは大して持っていやせんねえ。ただまあ拙者の考えですと、昔みてえにズィオ族が主体になって行動しているというより、なにか別の勢力が隠れ蓑にして動いてる気配を感じやすね」
「別の勢力ですの?」
「あの辺はチェスナード王国と隣り合わせですから、チェスナードの工作員がズィオ族自治区や近くの領地に入り込んでいる可能性はあると思いやす」
「ネピュア領とワイルドシップ領か……」
「ワイルドだぜ~ですの」
「は?」
「なんでもありませんわ」
ヨルの冷たい視線にゾクゾクしちゃうぜ。
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