26話 シィナvsひったくり犯
「はぁ、はぁっ……ど、どけえええっ!」
「ひったくりよ~! 誰か捕まえて~!」
「なんですのっ!?」
賑やかな王都の街中に突如響いた女の人の叫び声と、どこからともなく回ってくる、ひったくり犯逃走中の情報。
そんでもってオレたちの進行方向からやってくる、手提げバッグのような物をラグビーボールみたいに抱えて突っ込んでくる怪しい男。
「おおおおお嬢様どうしましょう!?」
「アイツ結構ガタイ良いぞ! 突っ込まれたら無傷じゃ済まねえ!」
一応貴族のお嬢様ということで、簡単な護身術であればオレもヨルも教わっている。
しかし、真正面から突撃してくるフィジカル高そうな野郎を取り押さえる事に対しては正直効果があるかどうか……
っていうかこの状況、ちょっと前世の死に際みたいで嫌だな……さすがに大型トラックとは違うんだけどさ。
「どけどけどけどけえええええっ!!」
「うわああああっ!?」
「あぶないっ!」
道行く人々は、突如発生した犯罪イベントにパニックになってひったくりを捕まえるどころか道を開けて避けている。
このままじゃマズいな、オレたちも避難した方が……
「あ、そうですわ……出てきて、バナナ!」
パアアアアアアアアアアア……
「なんで今バナナを出したんですかお嬢様!?」
「中身はアイラにあげますの」
「わーい!」
ギフトで大きめのバナナを召喚したオレは、皮をめくって中身をアイラに食べさせ、皮だけ持って男が走ってくるライン上に罠を設置することに。
まあ、うまくいくとは思わないけどちょっとやってみるか。
「えーと、この辺に……ポイッと」
「どけどけどけどけえええええっ!!」
ズルッ!! ドシャアッ!!
「ぶべら゛っ!?」
「あ、ヒットしましたの」
オレが投げ捨てたバナナの皮を踏んでしまったひったくり犯の男は、見事にスベって前頭部を地面に打ち付けた。
うわ、なんかピクピクしてる……痛そ~。
「犯人確保~!!」
「あたくしのバッグ返しなさ~い!!」
犯人が転んで大人しくなったところで、後ろから追いかけてきていた血気盛んな人たちとバッグをひったくられた女性がここぞとばかりに男をボコす。
そこまでやるともはや傷害罪な気もするけど、まあ仕方ないか。異世界だし。
「それにしても、なんで急にすっ転んだんだ?」
「ん……? なんか踏んでるなコイツ」
「なんだこの黄色いベチャっとしたやつ」
「王政管理局の防衛警備室が開発した新手の捕縛アイテムじゃねえか?」
スベって転んだひったくり犯の下にあったバナナの皮を発見して不思議がる街の人たち。
まあそうだよな、この世界でバナナの事を知ってるのはオレたちだけなわけだし、そういう反応になるか。
「それにしてもおもろかったなー。バナナ踏んですっころんでさ」
「ま、まさかバナナの皮に捕縛効果まであるとは……さすがです! バナナは神の食材ですねお嬢様!」
「アイラ、あなたバナナを盲信しすぎですわ」
まあ、バナナの皮で転んだ姿を滑稽だと思うのはどこの世界でも同じということで。
普通に危ないけどね。あのひったくり犯も多分脳しんとうとか起こしてるし。
「ったくこの野郎もよお、ひったくりなんて情けねえ事してないでマジメに働けっての」
「最近こういうヤツ多いよなあ」
「もしかして“極東解放軍”の連中じゃねえのか?」
「かもしんねえな。まったく、迷惑な話だぜ」
……ん?
「極東解放軍……ですの?」
———— ――――
面白かったら★とリアクションをいただけると執筆の励みになります!
———— ――――




