24話 ヨルのメイド
「ほれ、ここがシィナの部屋だ。まあいつも通りせまっちいが自由に使ってくれ」
「せまっちくなんてありませんわ。ありがたく使わせていただきますの」
ギストレンジ家の別邸を一通り案内してもらったオレたちは、寝泊まりする部屋に荷物を置いて一旦一息入れることに。
別邸に泊まらせてもらう度、いつの間にかオレ専用の客室のような感じになった部屋があり、内装もオレ……というかシィナ好みに仕上げてもらっている。
「アイラさんは、こっちにメイド用の休息室があるのでそこを使ってくれ。一応ボクのメイドと同室なんだけど、ほぼ個室みたいなものなんで気にせず休んでもらえれば」
「かしこまりました。お気遣いいただきありがとうございます、ヨルクライムお嬢様……あの、ほぼ個室みたいなものとは?」
「ヨルのメイドは神出鬼没なんですの!」
「えっと……なんて言えばいいのかな。いるっちゃいるんだけど、気配を消してるのでほぼいないようなもんというか……」
「……??」
オレとヨルの説明を聞いて頭にハテナマークを浮かべるアイラ。
まあ普通はそうなるよな。
オレもヨルのメイドとは引き継いだ記憶の中でしか知らないので、実際に会った事は無いのだが……
「まあ、とりあえず顔合わせはしといた方が良いか……ビッツ、いるかー?」
シュタッ!
「拙者、参上! お呼びですかいお嬢!」
「わっ! びっくりしました……!」
「そういう感じで現れるんですのね」
ヨルの呼ぶ声に応じてどこからともなく現れた小柄な女性。
シャツもエプロンもフリフリのレースも全てが黒という異質なデザインのメイド服を身にまとい、口元は謎の黒い布で覆っている。
そんでもって『拙者、参上!』ときたら、これはもう……あまりにシノビすぎるって。
「コイツがボクのメイドのビッツだ」
「ご紹介に預かりました、拙者はヨルクライムお嬢の影武者メイド、ビッツでごぜえます!」
「は、初めましてビッツさん。わたしはシィナお嬢様の影武者メイドのアイラです!」
「アイラは別に影武者ではありませんの」
ヨルのメイドのビッツさんは、本人のポリシーで普段は気配を消して姿を見せずにヨルのことを見守っているらしい。
身長はヨルと同じくらいで、いざとなったら本当に影武者として動けるようにシルエットも調整しているんだとか。
いやなにその忍者魂。
「シィナお嬢様、申し訳ございません……わたしの身丈ではシィナお嬢様の影武者にはなれません……」
「別にアイラには影武者の役割を求めて無いですの。むしろビッツさんの方が何故そんなことをしているのか不思議ですわ」
「シィナお嬢、実はこれには深い理由がありやしてね」
「いや、大して深い理由なんてないぞ。ビッツが子供の頃に読んでた小説に貴族の影武者キャラが出てきて、ソイツが今のビッツみたいな喋り方で、それに憧れて……」
「わーっ! 恥ずかしいんで言わないでくだせえお嬢! せ、拙者はもう退散させていただきやすからねっ!」
ヨルに色々とバラされたビッツさんはそんな捨て台詞を残して現れた時と同じようにスッと消えていった。
「ビッツさん……可愛らしい人ですね」
「まあ、メイド同士仲良くしてやってください」
今度、ギストレンジ領の職人に手裏剣でも作ってもらってビッツさんにプレゼントしようかな。
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