23話 ギストレンジ公爵の別邸
「それにしてもヨルクライム様、王都にこんな広い別邸をお持ちだなんて凄いです」
「さすが五大公爵家ですわ」
「王政管理局から勝手にギストレンジ家の別邸にされたんだ。それにボクは王都にたまにしか来ないから全然使ってないし」
モニータさんにギストレンジ公爵の別邸まで馬車で送ってもらったあと、別邸の中をヨルに案内してもらうことに。
真上から見ると星型になっている王都では、星型の五つの角の部分にそれぞれ別邸が建てられており、歴代の五大公爵家がそこを管理、使用することが決められている。
そんな五大公爵家の一角を担うギストレンジ公爵と領地を隣り合わせる我がゼテール家は昔から家族ぐるみの付き合いがあり、王都に来た際はギストレンジ公爵の別邸に滞在させてもらうことが多かったりする。
「わたくしも、小さくて良いからいつか王都に別荘とか欲しいですわね」
「ボクの家の別邸いるか? いつでもゼテール伯爵に管理権限を移してやるぞ」
「こんな大きなお屋敷はお掃除が大変です……ってアイラが言ってますの」
「わ、わたしは何も言ってません!」
まあ、これからミカンの栽培も活発になるし、いずれはバナナも栽培してたくさん売って……そしたらオレの取り分だけで王都にある宿屋の一室くらいなら普通に借りられるかも。
とはいえ王都なんて年に1、2回しか来ないから別荘があったところでなんだが。
「あっそうですわ! おっきなキャンピングカーでも作れれば……」
「キャンピングカー?」
「あ、いえ、その……キャ、キャンピング馬車! キャンピングばしゃーって言ったんですの!」
「なんだよばしゃーって……」
ふう、危ない危ない。この世界にはキャンピングカーどころか自動車すらないしな。
さすがに技術レベルが違い過ぎて説明すら難しい……そもそもオレだって自動車の詳しい仕組みなんぞ知らないし。
「寝床や調理場を併設した大きな馬車ですの。宿屋が無いような小さな集落や、そもそも集落すら無いような地域に行ったときでも馬車の中で快適に泊まることが出来れば宿泊施設いらずですわ」
「ああ、寝台馬車みたいなもんか……」
「多分そんな感じですの」
オレは知らなかったが、どうやら似たような仕組みの馬車があるようだ。
さすがは馬車の製造も請け負っているギストレンジ公爵の娘。
「シィナお嬢様、キャンピング馬車にはおトイレも設置できるのですか?」
「どうなのですか、ヨル」
「なんでボクに横流ししたんだよ。まあ、水洗じゃないのなら仕切り板を付けて床に穴開けるだけだし……」
「それでは垂れ流しですの!」
「シ、シィナお嬢様っ! はしたないですよ……!」
陶器で作ったタンク容器に水を溜めて、取っ手を捻ると水が流れるタイプの水洗トイレはこの世界にも存在する。
庶民の家はまだ穴を掘っただけのボットン便所のところが多いが、貴族の屋敷であれば水洗トイレのところが多いだろう。
実際オレの家もヨルの家も水洗トイレが設置されている。
しかし、馬車に取り付けるとなると中々なあ……それだけの水を持ち込むのも馬の負担になるし、ぶっちゃけ馬車で催したら降りてその辺の草むらですればいいだけだし。
お嬢様が草むらで用を足すのはまあ、男の意識があるオレでもそれなりに恥ずかしくはあるのだが。
「水洗トイレ……いえ、自動おしり洗浄機能もついたトイレを設置したキャンピング馬車が理想ですわね……」
「シィナはさっきから何の話をしてるんだ?」
「わたしにも分かりません……お嬢様は時々こんな感じで難しい事を呟きます」
ちなみにギストレンジ公爵の別邸も水洗トイレだった。さすが五大公爵家だぜ。
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