20話 バナナ
「出てきて、バナナ!」
ポンッ!
「ふう……さあどうぞ、アイラ」
「ありがとうございますシィナお嬢様!」
バシム第一王子の王妃候補選抜会に参加する為、主催の王家継承管理室から迎えに来た馬車に乗って王都を目指しているオレたち。
ゼテール家のお屋敷を出てしばらく経ったので、おやつ代わりにオレのギフト『フルーツ』を使ってバナナを具現化させる。
「シィナ様、そちらの黄色いものはなんですか……?」
「バナナという果物ですわ」
王家継承管理室からやってきたモニータは、ギフトを発動して手から果物を召喚したオレに驚いた後、出したものが見たことのない種類の果物だったので更に驚いていた。
「初めて見ました……王都で定期的に開催されている異国品の輸入市があるのですが、そこでも売ってなかったと思います」
「そ、そうですわねえ……バナナは異国品というより、どちらかというと古代の果物という感じでして……」
少し前に『この世界に存在しないミカンが出せるなら他のもいけるだろ』ということで、ミカンの他に比較的よく食べていたバナナをイメージしてギフトを発動したところ、何度か失敗した後、無事に発動することができてバナナが食べられるようになった。
メイドのアイラがバナナをとても気に入ってくれて、前まではアパルスの果実をよくおやつに食べていたが。最近はバナナを食べたいとせがんでくる。
「見てくださいモニータ様、こうやって外の黄色い皮をめくって、この中の白い実を食べるのです。はむ、もぐもぐ……ん~っ甘くてクリーミーで美味しいです!」
「ほほう、これは興味深い……中身だけを食べるから、手が汚れなくて良いですね」
「栄養満点ですし、お仕事の合間にもパパっと食べられますわ。モニータさんもおひとついかがですか?」
「ありがとうございます。いただきます」
美味しそうにバナナを食べるアイラを興味深げに眺めるモニータさんの為に、ギフトを使ってもう一本出してあげる。
いずれはバナナの栽培も計画しているのだが、ゼテール領がどちらかと言うと寒い地域なので、温室のようなものを作らないと難しいかもしれない……そもそも、今オレがギフトで出しているバナナには種が入っていないので、普段食べているような品種改良されたバナナではなく、もっと大昔の原種のようなものを出せるようにならないと種すら取ることができない。
「あ、思ったよりも簡単に剥けますね。いただきます。はぐ……あっ、美味しい……!」
「王家継承管理室の方から『美味しい』いただきました! シィナお嬢様、これはもう王妃候補選抜会はもらいましたね」
「何ももらってませんわよ」
モニータさんからバナナを評価されて舞い上がるバナナ愛好家のアイラ。
っていうかその言い方だとバナナが賄賂みたいになっててむしろ悪印象だろ。
そもそも王妃候補にはなるつもりないから仮にこれでオレの評価が上がっちゃったらそれはそれで困るんだが。
「ふふ。バナナ、私も気に入りました。これだけ甘ければそのまま食べるのは勿論、菓子の材料としても使えそうですね」
「バナナケーキにしたり、チョコレートをつけて食べるのも美味しいですわ。あとは濾し潰したバナナにミルクと砂糖を加えてよく振って、バナナシェイクにして飲んだり……」
「シィナお嬢様、何ですかそれは! わたしに隠れてそんな美味しそうなバナナ料理を開発していたのですか!」
「王都に着いたら作ってあげるから少し静かになさい」
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