18話 不穏分子
クレイン王国・某所――
「……やはりうちの娘に王妃候補選抜会の招待状は届かなかったか」
「我が領地は昔から親チェスナードだと疑われていますからね。自ら応募してくるならともかく、敵国と繋がりがあるかもしれない所の娘を招待するわけにはいかないのでしょう」
「ふっ。疑われているも何も、半分は事実なのだがな」
「……それで、チェスナード側からの指示はあったか?」
「はい。王妃選抜会の開催中に紛れ、第四王子の誘拐を試みよ、と……幼い第四王子であれば、今の内から洗脳教育を施すことも容易であると考えているのでしょう」
「まったく、無茶を言ってくれる……」
「お父様、いかがいたしますか?」
「受けない選択肢があると思うか? お前は予定通り王妃選抜会に参加しなさい。爵位のあるギフト持ちの令嬢であれば応募の時点で落とすことは無いだろう」
「王城に潜り込めればこちらのものですからね」
「私は王都に潜入している同志たちとコンタクトを取っておきます」
「……第四王子には悪いが、我らの悲願成就のために利用させてもらおう」
「クレインもチェスナードも、使えるものはなんでも使ってやる……!」
―― ――
「ヨル、見てくださいまし! トリプルミカンお手玉ですわ!」
「おお、器用なもんだなシィナ」
「この一芸で王妃候補選抜会を乗り切ってみせますわ!」
「いや無理だろ。バシム第一王子お付きの大道芸人にでもなるつもりか?」
王都のクレインハーツ城で行なわれるバシム第一王子の王妃候補選抜会の参加が正式に決定したオレとヨルは、本番まで選抜会で行なわれる試験の準備と対策に追われていた。
とはいえ王妃候補を狙っているというよりはタオ第四王子に会いに行くのが目的のオレと、そんなオレのお目付け役(?)として参加するヨルは、そこまで気合いを入れず最低限の礼儀作法と王子に会った時の応対練習のみ。
王妃を狙っていないとはいえ、選抜会での成績があまりに悪いと家の評判にも関わってくるだろう。
また、王妃候補選抜会には王政管理局の代表を任されている爵位持ちの貴族たちも見物に来ることがある。
バシム第一王子に選ばれずとも、そういった中央のエリート貴族に『ウチの息子の嫁に……』とスカウトされることもあるかもしれない。
「結婚かあ……ヨルは考えていますの?」
「いや、今はあんまり……五大公爵家主催の社交界とかも参加させられたことがあるけど、キザったらしい野郎とか、吐息がキモい野郎とか、無駄に髪が長くてクネクネしてる野郎ばっかでなあ……他の女子には人気があったみたいだが、ボクにはアイツらの良さは分からん」
ギストレンジ公爵以外の五大公爵家には数人の子供がいて、跡取り候補の息子さんたちはどいつもこいつもそれなりにイケメンだとか。
オレも何人かヨルに写真を見せてもらったことがあるが、まあ確かに整っているというか、女子に人気そうな顔ではあったと思う。
王子と結婚まではいかずとも、五大公爵家の誰かと結婚できるのであればクレイン王国の貴族社会の中においては勝ち組中の勝ち組と言えるだろう。
「ヨルに兄か弟がいれば良かったのですけれど……」
「シィナお前、お隣同士で結婚して領地を合併させようとか思ってんのか?」
「ち、違いますわよ。わたくしとヨルは相性が良いので、ヨルに兄弟がいればわたくしの好みの殿方になっていたかもしれないなあと思いまして」
「そうなると、ボクの好みはシィナの兄か?」
「あ、いいですわねそれ。わたくしにもお兄様がいたら……きっと、妹を大切にする良いお兄様ですわ」
前世のオレがそのまんま転生してきていたら、ヨルと結婚していたかもしれないな。
「ふふ、なんてね」
「いきなり笑い出してどうした。キモいぞ」
「ヨル、殿方と結婚するならまずはそのガサツな物言いをなんとかしなさいな」
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