14話 一歩前進
「はぁ~あ……お父様のバカ、アホ、アンポンタン」
「まあまあ、そういつまでも不貞腐れんなってシィナ……アンポンタンってなんだ?」
結局オレが丹精込めて育てたミカンはルトヴァン父さんが王都まで献上しに持って行ってしまった。
まあ、込めたのは丹精じゃなくてヨルのギフトだけど。
めちゃめちゃスパルタで急成長させたからミカン側はオレのことを恨んでいるかもしれない。
本当に丹精込めてじっくり育ててたら収穫できるまでに数年かかるからこればっかりはな。
「というかミカン側ってなんですの?」
「なんだよ急に、知らねえよ。シィナが言い出したんだろ」
「わたくしもタオ第四王子に会いたかったですの!」
「情緒不安定だなオイ」
ミカン栽培がひと段落したので、今日はヨルの家……ギストレンジ公爵家のお屋敷に遊びに来ていた。
鉱山地帯を管理するギストレンジ領では、お屋敷の周りに鉱山で採掘した金属材料を加工する工場や武器を製造する職人街が連なっており、果樹園や田畑、畜産牧場などが多いゼテール家のお屋敷周辺とは全然違った景色が広がっている。
「良いですわね~ギストレンジ領。こう、スチームパンクといいますか……機能美を追求した無骨なデザインが心をくすぐるといいますか」
「なんだよシィナ、ちょっと前まで『身体に悪そうな空気のニオイですわね~』とか言ってたじゃねか」
「そ、それはそれ、これはこれですの。職人街の雰囲気は好きですのよ」
ヨルに鋭い所を突かれてしまったが、実際ついこの間までのシィナ・ゼテールであれば鉱山にも職人街にもほとんど興味を持っていなかったように思う。
夏山彪牙という少年の意識が追加された結果、こういった男心にグッとくるようなものが好きになってきているというわけだ。
「何はともあれ、ここしばらくヨルにはとてもお世話になりましたね。お礼になにか、わたくしにしてほしいことなどはありますか?」
「シィナにしてほしいことか……それなら……」
……。
…………。
「シィナ~どうだ~? 着替え終わったか~?」
「い、一応着替えましたが……」
ヨルに渡された衣装に着替え、ギストレンジ家のドレスルームから出て鏡を確認する。
そこにはツナギのようなブカブカの服を着崩し、胸に晒しを巻いて、ゴツイ厚手の皮手袋を装着してハンマーのような工具を持ったオールバックのシィナ・ゼテールが立っていた。
「うおーかっけー! シィナ、めっちゃ似合ってるじゃねーか!」
「……なんですの、これ」
「ギストレンジ領の武器職人の服装だぜ! タッパがあるから似合うだろうな~って思ってたんだが、マジでイカしてるぜシィナ!」
15才の女子にしては随分と背が高く、普段の農作業のお陰でそれなりに体格も良いシィナ。
サラシで胸を潰したうえに髪を上げることで女子感が薄れて中性的な若手の武器職人のような見た目になっていた。
「これがヨルの、わたくしにしてほしいことですの?」
「そうだぜ!」
なんでこんなことがしたいねん。
「まったくもって、ヨルの殿方の好みは変わっていますわね……」
「べっ別にこういう格好の男が好きだなんて言ってねーだろ!」
壁ドンッ!!
「ヨルちゃんはさあ、オレみたいな男に強引に責められてえんだろ……?」
「ひゃ、ひゃい……っ///」
…………。
「く、くくく……っ! す、すいませんヨル……っ! べ、別にあなたの性癖を笑ったわけでは」
「シ、シィナ……っ! てめえこの野郎バカ野郎っ……!!」
「アウトロー映画みたいな勢いでまくし立ててきますわね」
―― ――
数日後。
クレイン王国、王都……クレインハーツ城。
「タオ。あなたのギフト習得を祝って献上の品が届いていますよ」
「けんじょー? サライトおかーさま、けんじょーってなに?」
「プレゼントという意味です。ゼテール伯爵の領地で新しく作られたミカンという果物だそうよ」
「ミカンッ!? ミカンあるのっ!?」
「あら、タオはミカンを知っているのね。まだ3才なのに、タオは物知りなのね」
「ミカン……ひゅーが、にーちゃ……?」
———— ――――
面白かったら★とリアクションをいただけると執筆の励みになります!
———— ――――




