13話 収穫
「やりましたわヨル! 夕焼け色の美味しそうなミカンが実っていますわ!」
「ひとつの木にこんなたくさん実をつけていたのか……今までは熟してなくて緑色だったから気付かなかったぜ」
ヨルと協力してミカンの栽培を続けること、はや一月半。
オレたちが心血を注いでタネから育ててきたミカンの木は、オレがギフトで出したものと同じサイズのしっかりとした果実が綺麗に実っていた。
まあ心血というか、主にヨルのギフト『グロウ』で成長促進エネルギーを注いでいただけだが。
「何もしてない方はまだまだ小さいな」
「普通に育てたらここまで成長するのに数年はかかりますから」
同じ時期に種を埋めた、ヨルのギフトを使用していないエリアのミカンの木はまだその辺の雑草と変わらない大きさだ。
中には葉を虫に食われてあまり成長できていない苗もあるので、この辺りは今後ゼテール領でミカン栽培を普及させていく時の課題になるだろう。
なんせ、農薬のような物もほとんど存在していないからな。
「さっそくひとつ食べてみましょう」
ちょうど手を伸ばして届く位置にあったミカンを収穫し、皮を剥いて一粒ぱくり。
「もむもむ……うん! わたくしの好みより少し酸味が強いですが、とても美味しいミカンだと思います」
「ボクにもひとつくれ」
「どうぞどうぞ、お好きなものを採ってくださいまし」
「それはわざとか!? わざと言ってんのか!? ボクの届く範囲に実ってないだろ!」
「ごめんなさいヨル、普通に気付きませんでしたわ」
背が低くてミカンに手が届かないヨルの代わりに美味しそうなのをひとつとってあげる。
あまり考えてなかったけど、ミカンの木って枝切ったりしてないと結構大きくなるんだな……上の方を収穫するのには脚立か梯子が必要だな。
「とにかく、美味しいミカンがたくさん実ってまさに大成功ですの! 早速収穫して、タオ第四王子のお祝い品として献上いたしましょう!」
これで王都に行ける……タオ第四王子に会えるかもしれない!
―― ――
「ダメだ、シィナを王都へ行かせるわけには行かない」
「えー! なんでですかお父様! タオ第四王子へのミカンの献上は認めてくださっていたではありませんか!」
「第一王子の王妃候補に選ばれるために王都へ行くなど言語道断だ!」
「それは関係ありませんの!」
収穫したミカンを献上用の木箱に納め、ルンルンで王都に向かう準備を行なっていたところ、ルトヴァン父さんからオレが王都へ行くことを反対されてしまう。
「このミカンという果物の出来はすばらしい。よくぞここまでの物を育てたな、シィナ」
「えへへ……ヨルと二人で頑張りましたの」
「しかし王都へは行かせんぞ! 私が責任を持ってタオ第四王子へ献上してこようではないか」
「自分だけズルいですわお父様!」
「何と言われようと、大切な娘が王都で誑かせられるのを防ぐのが父親の役目! 相手が王子だろうが何だろうがダメなものはダメなのである!」
結局、変な勘違いをしたままのルトヴァン父さんを説得することが出来ず、オレの王都への遠征は許可してもらえなかった。
「むむむ~……! お母様からも言ってくださいまし!」
「このミカン、本当に美味しいわねえ。献上するのもったいないからウチで食べちゃいましょうよ」
「お母様!」
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