12話 ヨルのお泊り
「うぷ、食べ過ぎた……シィナんちのメシは相変わらず量が多いな……」
「そうですか? ヨルが小食なだけではなくって?」
両親にミカン栽培がバレてしまったので、開き直って堂々と作業を進めることにしたオレとヨル。
今までは数日に一度、隣のギストレンジ領からヨルに出向いてもらって成長促進のギフト『グロウ』を使って育てていたのだが、実ができてそろそろ収穫間近ということで、今日はウチに泊まり込みで手伝ってもらっていた。
「いっぱい食べないと大きくなれませんわよ」
「ぐぬぬ、シィナに言われると反論できない……」
ゼテール領で採れた食材をふんだんに使用した夕食をヨルも加えた家族みんなでいただき、今は二人でお風呂タイム。
辺境伯とはいえさすがのお貴族様というべきか、お風呂場はちょっとした銭湯くらい広くてヨルと二人で入ってもまだまだ余裕がある。
「とはいえ、大きいというのもあまり良い事ばかりではありませんのよ。果樹園に行けば枝におでこをぶつけますし、気に入った服を見つけてもサイズが小さくて着れないこともありますし、おっぱいが重くてやけに肩が凝りますし」
「最後のは愚痴に見せかけた自慢じゃねえかこのウシ乳野郎……!」
「わ、わたくしはウシ乳野郎などではありませんわ! ウシ乳お嬢様ですの」
「否定すんのそっちなのかよ」
いやまあ、中身のことを考えれば野郎とも言えなくはないが。あとおっぱいが邪魔なのはマジ。
男だった前世のときは分からなかったが、これめちゃめちゃ邪魔だし重いし肩凝る。
あと領地の見回り中に領民と会った時に『あの人オレの胸元チラ見してんな―』ってのも普通に分かる。
領主様の娘の乳を凝視するなよ。
「ゼテール領には乳牛も沢山いますから、わたくしのおっぱいが成長したのはそんな栄養たっぷりの牛さんミルクを飲んでいるからかもしれませんわね」
「ボクだってゼテール領のミルクは小さい頃からよく飲んでいるぞ」
「…………」
「黙んなコラ」
―― ――
「ふふっ。ヨルと一緒に寝るの久しぶりですわ」
「そういや最近は泊まりで遊んだりはしてなかったな」
シィナ・ゼテールもヨル・ギストレンジも今年で15才。
お互いに領主の一人娘として、遊び惚けているだけではいけない立場になってきた。
前世の感覚だと将来がどうとかそこまで真剣に考えて行動するような人は少ない年齢だと思うが、あの世界でのオレはもう死んでいる。
今オレがいるのは、前世よりも科学が発達していない代わりにギフトとかいう謎の能力が使われている、そんな不思議な異世界だ。
「ヨル、オレが腕枕してやるからこっち来いよ」
「はひゃぁっ!? うっうでまくらっ……!?」
「なーんちゃって! 前に壁ドンした時も思いましたが、ヨルってば実はこういうのに弱いですわよね~」
「こ、このやろ~っ!!」
こっちの世界でのオレの友人は、15才にしてはちっこくて、お嬢様にしてはガサツで荒っぽくて、でも実は乙女な一面もある可愛らしいヤツなのだ。
「ほらほらヨル、ぎゅ~っ」
「こらやめろっ! ったく……シィナのウシ乳枕が邪魔で窒息しちまうぜ」
「ひどい言いようですわっ!?」
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