表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『スキル【空間魔法】で転移ライフを謳歌する』  作者: 愛月量


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/77

第65話 そろそろ始まる俺の野望

「は、は、ハックシュ......!」


 盛大なくしゃみが出た。

 思わず鼻を押さえながら周囲を見渡す。


「誰か俺のこと噂してるな?」


 よくあるアニメ演出だ。くしゃみ=誰かが噂している。

 ......まぁ、そんなことはどうでもいい。


「いや、普通に寒気がするんだけど」


 腕をさすりながら、小さく息を吐く。

 これはただの体調不良とかじゃない。

 俺の少ない人生経験と、この異世界生活で培った勘が告げている。


「嫌な予感がする」


 8割くらいは後者の経験によるものだ。

 こういう時は、大抵ろくなことが起きない。

 やましいことがあるなら、()を送り込んで調べたいところだが──


「出来ないんだなこれが」


 以前、学園側へ諜報を行わせた。

 表向きの情報収集だけじゃなく、裏も探らせた。

 だが──


「......何人か、未だに連絡が取れない」


 これはさすがに無視できない。

 単純にやられたのか、それとも捕まっているのか。

 どちらにせよ、普通じゃない。


「......流石に関わらざるを得ないよな」


 軽く頭を掻く。

 俺は一応、“裏のボス”ってやつだ。

 その俺を舐めてる連中がいるなら、放置はできない。

 だが同時に、これ以上の無闇な投入も避けたい。


「下手に動かすと、逆に全部持ってかれそうだしな」


 だから今は、様子見と試行錯誤。

 その結果──


「......アリスにも最近会えてねぇし」


 ぽつりと呟く。

 あいつのスキルは、諜報において最強格だと俺は思っている。


 簡単に言えば、思考盗聴。

 しかも精神干渉系。

 防ぐのは相当難しいはずだ。


「カムイも別件で忙しいとか言ってたし」


 頼れる戦力が、それぞれ別の方向に散っている。

 ──なら。


「“孤影の騎士団”を潰すなら、今がベストなんだろうな」


 ぽつりと呟く。

 だが、それもまた別の話。


「ま、俺には俺のやることがある」


 今は目の前だ。

 小さく笑みを浮かべる。


── ── ── ── ──


『これより15分後にランキング戦を開始致します。各ブロックの監督官及び調停者の皆様は王室に向かってください』


「......ちょうていしゃ?」


 聞き慣れない単語に、思わず首を傾げる。


「なんだそれ」


 知らないことは、知ってるやつに聞く。

 それが俺のスタイルだ。


「......よし」


 ターゲットは決まっている。

 何でも知ってそうな、あの人だ。


── ── ── ── ──


「ここがCクラス」


 教室の前で立ち止まる。

 時間はない。

 だが──


「......今更だけど、俺人見知りなんだよな」


 心の底から思う。

 助けてほしい。

 扉の向こうでは、まだ数人が話し合いをしているようだった。

 その中心にいるのは──小松心海


 タイミングを見計らう。

 長い。体感10分。

 実際は多分5分くらいだが。

 ようやく話し合いが終わり、何人かが外へ出ていく。

 そして最後に残った人物に声をかける。


「こ、小松さん!」


 若干裏返った声で呼び止める。


「あれ?水谷くんじゃん。こんな所でどうしたの?」


 振り返った小松さんは、いつも通りの落ち着いた様子だった。


「いやまあ、小松さんなら知ってるかなって思って」


「?」


「さっきのアナウンスで、“ちょうていしゃ”って名前が挙がったんだけど......」


 少しだけ視線を逸らす。


「小松さん、何か知ってるかなーって思って......」


「ちょうていしゃ......?」


 あ。

 これ、知らないやつでは?

 やべぇ。

 めっちゃ恥ずかしいやつだ。

 空気が一瞬止まる。


「んーと......あ」


 小松さんが何か思い出したように手を打つ。


「もしかして、“調停者(タイムズ)”のこと?」


「た、タイムズ?」


 なんだそれ。

 余計わからん。


「あー、調停者ならね」


 小松さんは軽く頷いた。


「見た方が早いっていうか、説明されると思うから──」


 くるりと背を向ける。


「練習場に行こっか」


「へぁ?」


 俺はよく分からないまま、ついていくことになった。


── ── ── ── ──


 なんやかんやあって、練習場。

 開始5分前。

 各ブロックのフィールドには、既に人が集まり始めている。


『......これより、ランキング戦を開始いたします』


 アナウンスが響く。


『ランキング戦においてのルールを説明します──』


「あー、これ知ってるやつだ」


 デバイスで事前に送られてきた内容と同じ。

 いわば再確認だ。

 軽く聞き流す。


『続いて、ランキング戦のみに適用されるルールについて説明いたします』


 少しだけトーンが変わる。


『ただ、このルールはあなた達に直接的に関与するものではありません』


「ん?」


 思わず耳を傾ける。


『ランキング戦中、可能性は0に等しいですが──』


 わずかな間。


『学園の外部から、ランキング戦の中止を強要されるような事態が起きた場合』


 ざわ、と周囲が揺れる。


『調停者。またの名をタイムズを運用します』


「......ほぉ」


 なるほど。

 そういう役割か。


調停者(タイムズ)に所属する生徒の皆様は、ランキング戦への参加を不可とさせて頂きます』


『外部勢力の制圧は基本、調停者が優先的に行います』


『生徒の皆様が勝手に前へ出ることを禁じます。また、これらの禁止事項を破った場合、その生徒に対し-100pt。所属クラスに-50ptを与えます』


「おっっっっっも!」


 思わず声が出た。

 だが、理屈は分かる。

 専用の部隊がいるのに、一般生徒が突っ込むのは危険すぎる。


「......でも」


 少しだけ引っかかる。


「なんで“調停者”なんだ?」


 制圧部隊なら、もっとそれっぽい名前があるだろうに。

 だが、その疑問を深掘りする前に──


『それでは、ランキング戦を開始します』


 始まってしまった。


「うわ、やば」


 俺は慌てて走り出す。


「Hブロック行かねぇと!」


 フィールドへ駆け込む。


「......ったぁ〜!遅れた!」


 肩で息をしながら周囲を見る。


「って、バレてないからセーフか?」


 そう思った瞬間──


 フィールドの壁面に画面が浮かび上がる。

 そこに映し出されたのは、1人の人物。


『Hブロックの監督官のシロだ』


「うわ」


 思わず声が漏れる。


『ランキング戦において、遅刻は厳禁だぞ』


「バレてんのかよ」


 小さく呟く。

 だが、シロは続けた。


『だが、お前以上に遅刻をしている大馬鹿者がいるようだ』


「......あ?」


 視線を巡らせる。

 確かに──


「対戦相手、いねぇな」


 誰もいない。

 妙な静けさ。

 時間だけが過ぎていく。


『......ふぅー。10分経過だ』


 シロが淡々と告げる。


『対戦相手を棄権と見なし──』


 一瞬の間。


『水谷悠真。お前を不戦勝とする』


「え......?」


 頭が追いつかない。何故かって?あっさりしすぎてだよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ