第59話 いつも通り大人しく
連日、クラス内外が騒がしい。
なんなら寮も騒がしい。
原因は明白だ。
この前の──あの唐突な発表。
クラス内3位の名前と固有能力。
ランキング戦前にも関わらず、それを公開するという異常な行為。
学園側の陽動。
そしてそれは、誰かが思い描いた通りに上手く機能していた。
廊下を歩けば聞こえてくる。
「あのクラスの3位ってさ......」
「○○のスキルやばくない?」
「対策組めば潰せるだろ」
......まぁ、そうなるわな。
情報戦が始まっている。
しかもかなり露骨に。
そして、もう一つ騒がしい理由がある。
クラスチャットだ。
朝から夜まで稼働している。
内容はもちろん──ランキング戦に向けたクラスとしての“動き”。
正直、通知がうるさい。
だが話の流れとしてはまともだった。
ランキング戦の監督官となる各クラス担任に、まず詳しいルールを聞く。
それをまとめる。
そこから戦略を練る。
至って普通。
そして今、その会議が行われている。
教室で。
── ── ── ── ──
バンッ!!
机を叩く音が響いた。
さっきまで騒がしかった教室が、一瞬で静かになる。
視線が一斉に向いた。
机を叩いた人物──児玉。
「みんな聞いて!わ、私のスキルが露見したことはどうでもいいけど、ここからどうしていくかが問題でしょ!!」
声が大きい。
金切り声に近い。
だが、意図は分かる。
議論が散らかりすぎていた。
「そうだね。瑠々ちゃんの言う通り。私たちは幾らか不利な状況に置かれてる」
落ち着いた声。
そう言ったのは甘井だ。
この二人は元の世界でも生徒会的な役割をしていた。つまり、進行役としては適任。
......任せよう。
俺は教室後方の席で腕を組む。
後方腕組ポジション。
これが一番安定する。
「まず何が不利って、既に公開で2人の価値がバレてるところ」
教室の何人かが頷く。
「正直これに関しては、こんな短期間でランキング戦をやるとは思わなかったから仕方ない」
児玉が少しだけ申し訳なさそうな顔をする。
だが甘井は続けた。
「ただクラス単位での話をするなら、身内の潰し合いは無しにすること」
まぁ当然だな。
「他に注意するなら」
「①無意味な決闘は避けること」
「②決闘を受けてしまっても、下手にスキルを使わないこと」
教室がざわつく。
「②に関してはポイントの奪い合いが始まってしまうから、どうにかして引き分けに持ち込むこと」
「最悪スキルを使うって感じでどう?」
皆が頷く。
まぁ、理にかなっている。
今は情報を隠すべき段階。
だが。
「えー?じゃあ他に考えられるのってクラスの勢力とか?」
声を上げたのは中村燈。
燈は椅子をくるくる回しながら言った。
「クラス同士の関係とかさ」
「あ、それもあったか!」
甘井が児玉を見る。
「瑠々ちゃん。他の人伝いで貰った情報とかない?」
「情報というか......燈ちゃんが言ってる勢力図みたいな感じのものだけど......」
「いいよ。気にしないで言って」
「......うん」
少しだけ息を吸う。
「まず、私たち1-Dは最初に莉緒奈が言っていたように“不利”ってことは広まってる」
......まぁそうだろうな。
「他に、単純な戦闘力で強いなら1-E」
教室がざわつく。
「連携で強みが発生するのは1-F」
......林田のクラスか。
「1-AはEクラスと同じレベルで見ていい」
「他のクラスはまだ実態が不明」
なるほど
整理すると──
1-E:戦闘力特化
1-F:連携特化
1-A:高水準
そして1-D。
俺たちのクラス。
......面白い。
つまり今やるべきことは一つ。
「どこのクラスと同盟組む?」
教室が一気に静かになる。
「私の予想だけど」
少し間を置く。
「我が強い林田のいるFクラスは、私たちにアタックしてきそうだけどね」




