第58話 種類は多いほうが得だよね
いきなりだが──
「技」って素晴らしいとは思わないか?
自分のオリジナルに満足せず、新たな派生を生み出すんだぞ?
ロマンにもほどがあるだろ。
一つの能力を極めるのも美しい。
だが、そこから枝分かれして別の形に進化するのはもっと美しい。
俺が現時点で“コイツ、ロマンだな”って思うのは、やっぱりカムイだね。
カムイの能力【侵食】。
あれは1つで2つの能力が秘められている。
1つ目は文字通り《侵食》。
これは能動的に働く。自らの意思で、対象を削り、奪い、塗り替える。
2つ目は《同化》。
こちらは受動的に働く。侵食したものを自分の一部として取り込む。
聞いただけで興奮が止まらんわ。
攻撃と吸収。
破壊と強化。
単純なのに完成度が高すぎる。
......厄介でもあるけどな。
ただ、バリエーションが豊富って点じゃ俺も負けられないぜ?
①覇國。
俺の空間と魔力から錬成した愛刀。単なる武器じゃない。俺の領域そのものだ。
②変曲。
体に歪みを纏い、魔法と物理の攻撃を躱す。空間そのものを“曲げる”。
③亜速。
正直、縮地とかを習得したかったけど叶わなかった。
これは擬似的な瞬間移動。対空は勿論飛べない。だが地上戦では十分。
④亜空速。
空間の伸縮反動を利用して、瞬間的に圧倒的なスピードを得る。
⑤亜空力。
④の応用。スピードを“力”に変換したパワーバージョン。
⑥虚障壁。
空間を“壁”として認識し、固定する。
⑦虚障衝撃。
⑥の壁に拳で衝撃を与え、空間ごと叩きつける。
並べてみると、なかなか壮観だろ?
②の変曲と⑥虚障壁の違いは明確だ。
変曲は強すぎる。
その代わり、“繋がり”をもたらした。
簡単に言えば、変曲の使用中、俺から攻撃することは出来ない。
単体及び複数の攻撃を防ぐことは可能だが、あくまで受け身。
一方、虚障壁は違う。
壁を出し、固定し、そこから虚障衝撃へと繋ぐコンボ的役割を持つ。
攻防一体。
選択肢が多いってのは、それだけで強みだ。
そして──
最近の俺に秘められているモノ。
「知覚空間」。
俺が“空間を認識し始めた”ことで発現した何か。
まだ正確に何が出来るかは分からない。
だが、心の中で確信していることがある。
この技は、俺に対して有利に働く。
理屈じゃない。
直感だ。
空間の主に近づいている感覚。
他にも俺には紅桜がある。
【闇属性魔法】もある。
【光属性魔法】もある。
ぶっちゃけ、俺が負けるはずない。
イキったっていい。
......ただな。
現時点で警戒するなら、学園の皆ってよりかはカムイなんだよな。
あのスキルは厄介だ。
もし俺の空間に侵食し得る可能性が少しでもあるなら。
俺が“侵食”を空間として認識するならば。
俺とカムイは互角。
相殺の立場にある。
ま、仲間だからそんなことには発展しないけどね。
......しないよな?
は、ははは......。
笑えねぇ。
── ── ── ── ──
それはそうと。
潜り込ませた偵察隊からビッグな情報が入った。
時期的には学園側でもそろそろ発表されるはずだが──
2ヶ月後に、1回目のランキング戦が始まる。
早いな。
だが悪くない。
そしてもう一つ。
この学園において有利になれる情報。
ただ、これに関してはすぐ公表されるだろう。
俺は静かに待った。
そして──
それは直ぐに判明した。
── ── ── ── ──
プラントが言う。
「そろそろ新しいイベントが始まる」
教室が静まる。
「まずそれに向けて、お前たちにやる気を出させる」
嫌な予感しかしない。
「やる気ってのはな、報酬を用意するより“お前らが不快になる”方が出るだろ?」
......は?
プラントはニヤリと笑った。
「まぁ、今回不快になる犠牲者は、各クラスの上位3名の内の1人」
ざわっ。
「ま、クラス内3位の人間だけだがな」
一瞬、教室が爆発した。
「はぁ!?」「ふざけんな!」「なんで3位だけ!?」
怒号や机を叩く音がする。
廊下の向こうからも騒ぎが聞こえる。
隣のクラスからも困惑の声。
......まぁそうなるよな。
そんな過剰に反応するなら、そいつがクラス内3位だってバレるぞ?
......いや。
それもブラフかもしれない。
俺はデバイスに流れてきた情報を見る。
発表された面子。
クラスごとの“3位”。
......なるほど。
そういうことか。
つまりこれは──
ランキング戦前の“揺さぶり”。
3位という微妙な立場。
1位でも2位でもない。
だが確実に“上位”。
その人間を標的にすることで、クラス全体を刺激する。
悪趣味だが、効果的だ。
俺はデバイスをポケットにしまった。
覚悟を決める。
俺は全てを破壊できる空間の主「暴」であると同時に。
全てを飲み込む空間の主「静」でもある。
暴で圧倒するも良し。
静で呑み込むも良し。
どんな相手が来ても──
俺という人間を“理解させなければ”いいだけだ。
理解されなければ、対策もされない。
空間は形を持たない。
だからこそ、強い。
ランキング戦まで、あと2ヶ月。
技はまだ増える。
俺は止まらない。
── ── ── ── ──
1-A
空上 刹那:【限界消去】
1-B
一 月:【天衣無縫】
1-C
唯 あいか:【溶解】
1-D
児玉 瑠々:【お誕生日おめでとう】
1-E
小鳥遊 彩:【些細な抵抗】
1-F
林田 太陽:【灼光】
次の更新は3/9になります。もう1つの作品の方はいつも通りの日程で出します。




