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『スキル【空間魔法】で転移ライフを謳歌する』  作者: 愛月量


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第57話 【空間魔法】

 賭け試合の日から数日が経った。


 王立魔法学園で初日からバトルが始まってしまうことは珍しくないらしい。

 そう考えれば、あの日の騒動も“洗礼”の一つだったのだろう。


 あれは確かにいい経験になった。

 初めて知ることばかりだった。

 それに──


(俺に向けられる視線、少しは変わったか?)


 廊下を歩けば、ちらりと向けられる視線。

 好奇、警戒、嘲笑、評価。


 まぁ。

 俺が本気を出せばチョチョイのちょいだけど。

 ......今はまだ、その時じゃない。


── ── ── ── ──


 学園での生活は、まさしく「学校」そのものだった。

 まぁそりゃそうか。


 朝から座学があり、その後に実技。

 座学と実技が五分五分。

 もちろん内容は全て魔法に関することだ。


 座学が苦手──というより嫌いな俺でも、魔法に関して学ぶことは純粋に面白い。


 魔力の流体理論。

 属性干渉の歴史。

 結界術の構造解析。


 ぶっちゃけ、ずっとこれでいい。

 基本的な週の動きは、日本の教育で例えるなら1〜2時間目が座学、3〜4時間目が実技。


 その他はほぼ自由時間。

 自由時間と言っても、ほとんどが自主鍛錬や研究に使われる。

 本当に“やる奴は伸びる”環境だ。


 数日が経ったと言ったが、ぶっちゃけ今まではオリエンテーションの延長みたいなものだった。

 今までとこれからのしょーもない話を延々と聞かされていただけ。


 ......少し魔法理論の話もしていたが。

 本番はここからだ。

 丁度いい。

 今日から本格的に学び始める。


── ── ── ── ──


「......だから、お前たちにはほぼ関係ないんだ。分かるだろ?」


 ......嘘だろ。

 ノイローゼになる。

 同じ話の繰り返しすぎて、既に俺は思考を手放していた。


 けどな。

 周りの奴らはずっとメモってる。

 何メモるのか知らないけど、ここで寝たら沽券に関わる。


「......じゃあ、水谷! いきなりだが質問だ」


「......あっ、ふぃ......はい」


 突然話しかけられてビビった。

 呂律回らん。恥ずかしい。


「お前は自分の固有能力が属性に付随していると考えたことはあるか?」


(俺の?)


 【空間魔法】は属性に付随なんてしていないと思う。

 もし付随するなら、もっと分かりやすいはずだ。

火、水、風みたいに。


「......考えたことはあっても、自分のは付随してないと思います」


「ほぅ。答えたくないならそれでいいんだが、お前のスキルはなんだ?」


 一瞬、教室の空気が変わる。


「......自分のスキルは空間魔法です」


 クスクス、と笑い声。

 しょうがない。

 けどな。

 俺には俺の誇りがある。


「空間魔法、か」


 少し間を置く。


「これは俺の主観なんだが、俺は空間魔法は属性に付随していると思っている」


 教室が静まる。


「何故そう思うか。それはな、空間魔法は世間一般的に考えられる効果として“収納がしやすくなるかどうか”のみの効果だと思われているからだ」


 何人かが頷く。


「基本的にそういう魔法は生活基準に組み込まれる。だから、誰にでも使える【無属性魔法】に分類される」


 ......まぁ、普通はそうだ。


「ただ、大事なことを言う」


 教室を見渡す。


「それはな、“どう物事を捉えるか”なんだよ」


 一瞬、俺と目が合う。


「俺は属性だと思ってる。水谷は思ってない。ただそれだけでいい」


 ざわ、と空気が揺れる。


「大切なのは、どの視点でイメージを行うかってことだ」


 属性か、否か。

 それは本質じゃない。

 “どう定義するか”。

 “どう広げるか”。


「俺はお前が笑われても気にしない。お前が成長できるように、今この場に立っているだけだ」


 ......面白い。

 この人、ただの教師じゃないな。


 その後の授業は、日本にいた時と同じように楽しかった。

 いや、それ以上だ。

 魔法を理論として学び、実技で確かめる。

 本当に学びあるものばかりで、学習が楽しいと思ったのは初めてだった。


── ── ── ── ──


 授業の終わり際。


「では、最後に2つほどいい事を教えてやる」


 教室がざわつく。


「1つ。知ってる奴は多いかもしれないが、このA〜Fクラスの中に【自己破壊(バーサーカー)】のスキルを持っている奴がいる」


 何人かが息を呑む。


「何故この話をしたかというとな、俺も最近知ったんだが【強化】という名のバフを過剰に与えると返ってデバフになる」


 教室が静まり返る。


「身体が際限なく重なるバフに追いつかなくなり壊れるからだろうな」


 ......なるほど。


「これは普通の人間にやるなら効果アリだが、さっき言った【自己破壊】には通じない」


 強化を壊す存在。

 面白い。


「2つ目に。極めて稀な発生だから見かけるかは分からない」


 空気が張り詰める。


「スキルには、生まれてから与えられる固有能力(ユニークスキル)がある。それ以外に、稀な例として“絶技(ロイヤルスキル)”がある」


 ......っ!!


「発生確率は100人に1人。ただし、魔力環境に常に有利な場にいた魔物達においては50体の内1体の確率で発生する」


 教室がざわつく。


「ま、自分に発現したとしても人に言わないことだな」


 ......なるほどな。


 発生確率の情報は初耳だ。

 だが。

 学園側は知らない。

 “人為的に絶技を発生させることが可能”ということを。


 それに。

 他にも何か隠しているはずだ。

 何か探る方法は無いのか......?

 ......そうだ。


── ── ── ── ──


 その日の授業を終え、夜になるまで寮の部屋で待機した。

 窓の外は静かだ。


「......アリス」


 影が揺らぐ。


「どうしたの、ユーマ?」


 足元の影から姿を現したのは、俺の大切な人。

 種族サキュバスのアリス。


「学園に孤影の騎士団の何人かを潜伏及び詮索させろ。幾つか知りたい情報がある」


 アリスは一瞬だけ目を細め、すぐに微笑んだ。


「分かった!ユーマもたまには私にかまってね?」


「......悪いな」


 アリスはトプン、と音を立てて影の中へ消えた。

 静寂が訪れる。


 ......確かに。

 俺は最近、学園にばかり目を向けていた。

 孤影の騎士団(ナイト・オブ・ナイツ)の面子やアリスと会うことを疎かにしていた。


(俺、シングルタスク野郎かもしれん)


 でも。

 今は必要だ。


 学園の裏。

 絶技の情報。


 全てを把握する。

 俺のやり方で。

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