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『スキル【空間魔法】で転移ライフを謳歌する』  作者: 愛月量


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第56.5話 あの日のクラスのケリ

 今、私は不利な状況に置かれている。


 言い争いに発展したのは予測済みだった。

 でも、こんな大事になるはずじゃなかった。


 相手は私より遥かに順位が上。

 それ以外の情報は、ほとんど無い。

 親友の莉緒奈ちゃんには止められた。


「やめなよ、すみちゃん。あいつ、強いよ」って。


 でも、それは私のプライドが許さない。

 だって──

 あんな言い方をされたんだ。


 水谷の味方をしただけで、


「お前も同類か?」なんて。


 笑いながら。

 見下しながら。

 そういう勝負を、仕掛けられた。


 だったら受けるしかない。

 逃げたら、私が私じゃなくなる。


── ── ── ── ──


 俺は勝てる勝負を仕掛けた。


 水谷みたいなゴミの味方につかれちゃストレスになる。

 あいつは目障りだし、何より調子に乗るタイプだろう。


 まさか、國夜が口を挟んでくるとは思わなかった。

 確かに、アイツはこういう嫌味とか陰口とか嫌いなタイプだったな。


 まぁいい。

 俺の方が順位は高い。

 そして、俺は力に貪欲だ。


 その欲望の高さゆえに、俺に与えられた全てを最高の品質にまで高めた。

 勇者の加護も、スキルも、魔力量も。


 俺と対峙することの恐ろしさを、植え付けてやる。


── ── ── ── ──


「じゃあ、始めよう」


 その一言と同時に、林田の周囲の空気が揺らいだ。

 魔力が渦巻く。


 濃く。重く。そして、圧倒的なまでの力。

 それは、力に貪欲な彼が生成し操る魔力はまさに化身とも言えるべきものであった。


 現状、勇者組の中でトップの魔力量を持つ林田にとって、この戦いは赤子の手をひねるようなものだろう。


「國夜、俺はスキルについて言ったっていい。女に負けることの方が恥だからな」


「......じゃあ、そんなに言うなら教えてよ」


「はっ!ヤケに素直じゃないか。いいよ、教えてやるよ」


──【灼光(ライジング・サン)


 林田の背後に、小さな光点が生まれる。

 それは瞬く間に膨れ上がり、球体へと変貌した。

 【灼光】は自身の魔力を核として光熱の太陽を生み出す。


「シンプルイズベスト!ただそれだけの事なのに、勝てない...なんてことは無いだろう?そうだよなぁ、國夜?」


 熱い。息が苦しい。皮膚が焼ける。


(スキルの有利不利なら、私の方が有利かもしれない。だけど、本当のことを言っていても、隠していることだってあるはず)


「いいからかかってきてよ」


「じゃあ、お言葉に甘えて──《増長膨張急上昇(サン・サン・サン)》」


 太陽がさらに膨張する。


「さぁ!目に焼き付けろ!」


 熱量と輝度が急上昇。

 空気が歪み、地面が焦げる。

 その熱さは地獄を彷彿とさせ、汗が止まらない。


 疑似太陽は、周囲を焼却し視界を奪うまでに進化していく。

 並の人間なら、この時点で溶けている。

 否。

 並でなくとも、【勇者の加護・上】を持つ私でさえ、皮膚が若干だが溶け始めていた。


(痛い......)


 でも。

 私はさっき、激しい『悲しみ』を覚えた。

 悔しさと、怒りと、やるせなさ。

 今しか使えない。


「......私が受けている痛み──貴方に返すよ」


 その言葉の直後。

 二人を取り囲む魔力が、林田に向けて“逆流”を始めた。

 

 いや。

 魔力が逆流しているのではない。

 林田のスキルが逆流している。


 太陽が揺らぐ。

 中心核が不安定になる。


「自分のスキルに溺れ死んで......そして、貴方がバカにした全てに謝って」


 林田の身体が炎に包まれる。


「あちぃ!痛いし...俺の“核”が壊れる...!!」


 疑似太陽のまま逆流するそれは、内側から人間を破壊するには十分な威力だった。


 そう。普通なら。


「あんまり...俺を...舐めんなよ!!」


 炎の中で、林田の目が開く。

 林田は魔力量トップ。

 そしてその魔力量に比例して魔力操作にも慣れている。


 つまり。

 この逆流は、完全な魔力操作によって“ある程度”無効化できる。


 炎が収束する。

 太陽が再構築される。


「はぁ...はぁ...ふぅ。ある程度は、どうにかしたな......」


「國夜、お前の力はこの程度なのか?阿呆らしい。ただ、この一撃で終わらせる。...消滅しろ──【灼光(ライジング・サン)】」


 太陽が、収縮する。

 次の瞬間。

 爆ぜた。


 光が、世界を塗りつぶす。

 それは、この場における全てのモノを消滅させる威力。

 思考を奪うほどの熱。

 発動すれば、勝ち確定の奥義。


 だが同時に──

 全魔力を消費する諸刃の剣。


 光が消えた後、立っていたのは。

 勝者──林田!!


 國夜は膝をつき、倒れ込む。

 意識はある。

 でも、立てない。


「んー、そうだな」


 汗を拭いながら、林田は笑う。


「俺たちが賭けたのはプライドだが、この1年間俺以外の男と喋るな、でどうだ?笑」


 周囲がざわつく。


「ま、拒否権はない。受け入れろ笑」


 國夜は、拳を握る。


 悔しい。

 負けた。

 守れなかった。


 でも。

 目は逸らさない。

 この借りは、必ず返す。


 クラスの空気が、静かに軋んでいた。

 これで終わりじゃない。

 これは、始まりだ。


── ── ── ── ──


灼光(ライジング・サン)】──スキルの名前であり、スキルの奥義。このような事が可能なスキルは多い。


制約の哀(レクイエム)】──発動者が一度強い''感情''を抱く、または抱いた状況でしか使えない。相手の能力を逆流させ、相手自身を蝕む。

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