第五章:千歳さんの秘密
登場人物
•片山 蓮:13歳、中学2年生。
•藤原 千歳:70代。元教員で、島で唯一の定住者のひとり。
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【シーン1】千歳の畑仕事
描写
朝の畑。千歳は鍬を手に、小さな畑でじゃがいもの芽を手入れしている。蓮は手持ち無沙汰そうに立っている。
千歳(ふと顔を上げ):「手、空いとるなら、草くらい抜きんさい。」
蓮:「……はい。」
(蓮がしゃがみ、ぎこちなく草を引っこ抜く)
千歳:「根っこまで、な。中途半端はいかんよ。」
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【シーン2】縁側での会話
描写
作業を終えた二人は縁側で麦茶を飲む。夏の日差しが穏やかに差し込み、セミの声が遠くに響く。
蓮:「千歳さんは……どうして、島にひとりで?」
千歳(少しだけ目を細めて):「あんたの歳のころ、うちはここで先生をやっとった。」
蓮:「学校……あの廃校ですか?」
千歳:「そう。あそこには、昔は子どもが30人もおったんよ。毎朝、海辺を通って元気に通ってきよった。」
(少し間が空く)
千歳:「うちは……息子を、事故で亡くした。教え子だった子も、ひとり、海に……」
蓮(目を伏せて):「……ごめんなさい。」
千歳:「謝ることはないよ。生きてる人間は、残されたものを抱えて、ただ、明日を迎えるだけじゃけん。」
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【シーン3】夜の語り
描写
その晩、蓮はちゃぶ台で日記を書いている。千歳は薪ストーブに火をくべ、火花がぱちぱちと音を立てる。
千歳:「あんた、名前は?」
蓮:「……片山 蓮です。」
千歳:「蓮……いい名前じゃ。」
蓮:「花言葉、知ってますか?」
千歳(微笑む):「泥の中から、きれいな花を咲かせるんじゃろ?」
蓮:「……はい。ぼくも、そんな風になりたいと思ってました。でも、もう無理だって思って……。」
千歳:「そうやって思えるうちは、まだ咲けるよ。」
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蓮
「千歳さんは、過去を抱えたまま、誰もいない島に残った人だった。ぼくは、過去から逃げたまま、ここに来た。でも、同じ空を見ていた。」




