第14話 解き放たれた真実
王都からの命令がきた。
「伯爵家の血を引く者は例外なく全員お披露目夜会に出席せよ」
出発の前日、王都の使者から届いた勅令に屋敷は激震に見舞われた。
本来なら屋根裏部屋に隠しておきたかった私を、セレスティア様も父親も連れて行かざるを得なくなったのだ。
「なぜあの役立たずまで。まあいいわ、あんな無能にまともなドレスを着せる価値もないわ」
セレスティア様は嫌がらせのために、街の露店で買い叩いた安物の庶民の服に安っぽいレースを雑に縫い付けただけの服を投げつけてきた。
「これでも着ていなさい。アレクシスの足元で転がっていればいいのよ」
だが、私にとって最高の追い風だった。
旅立ちの直前に地下の秘密基地から大量の金貨、偽造書類、身の回り品を回収し、伯爵家の馬車へと乗り込んだ。
夜会の控え室で一人にされた際、私は安物服に切削、糸の再構築、光沢付与の魔法をかけ、繊細なレースワークが光る気品溢れる特製ドレスへと瞬時に生まれ変わらせる。
会場に足を踏み入れると、私の洗練された装いは一際目を引き貴族たちから感嘆の視線が集まる。
セレスティア様は顔を真っ赤にして地団駄を踏んでいた。
しかし、惨劇は中央の壇上で起きた。
着飾った4歳のアレクシスが鑑定水晶の前に立ったものの、大貴族たちの視線と重厚な雰囲気に飲まれ、極度の緊張でパニックに陥ったのだ。
泣き叫んだ瞬間、未熟な魔力が暴走。
弾けた衝撃波が給仕のトレイを吹き飛ばし、スープとワインが公爵夫人の最高級ドレスへ派手にぶちまけられた。
公爵の怒号が響き渡り、責任を追及されたセレスティア様はなりふり構わず私を指さした。
「この無魔力の忌み子がアレクシスを惑わしたのです。役立たずの魔力も鑑定して、我が家の教育のせいではないと証明してください」
罪をなすりつけようとするセレスティア様に応じ、鑑定士が侮蔑の目を向けながら私に鑑定水晶を突き出してきた。
「無魔力の少女を一応鑑定します」
壇上に上がった私を見る哀れみと冷ややかな視線。
いつもならゼロに見せかけるところだった。
伯爵家を捨て、自分の足で歩み出すこの瞬間に、偽りの自分を演じる意味などない。
澄み切った瞳で鑑定水晶にそっと手を触れた。
会場全体の空気が揺れ動いた。
澄んでいた鑑定水晶が、幻想的なエメラルドグリーンに染まり、太陽のような眩い光を放ち始めた。
光は収まるどころか溢れ出し、大広間全体を神秘的な輝きで包み込んでいく。
「なんだこの魔力量は、水晶の許容量を超えている」
鑑定士が悲鳴を上げ、水晶に刻まれた目盛りが限界を突破してヒビが入っていく。
「王都の最高位宮廷魔導士すら凌駕する、神話級の魔力だぞ」
あまりにも圧倒的で神聖な魔力の奔流。
会場にいた大貴族や宮廷魔導士たちが、あまりの光景に息を呑んでひざまずかんばかりの衝撃で固まった。
「無魔力じゃなかったの」
セレスティア様は腰を抜かして床に崩れ落ちた。
父親は目を見開いたまま開いた口が塞がらない。
冷遇し虐げ続けてきた少女が、国を揺るがす天才だったという現実に、顔を蒼白にして震えていた。
光が静かに収まる中、私は動揺する伯爵家の人々に最初で最後の冷ややかな笑みを向けた。
「ごちそうさまでした。いままでお世話になりました」
静まり返る会場の誰もが圧倒されて動けない隙に、気配遮断を発動。
呆然とする人々を残し、光のように壇上から姿を消した。
夜会の外、王都の夜風を浴びながら、私は満たされた気持ちで歩き出した。




