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テレーゼ院長のセフィロト見聞録  作者: 西風の剣
第12章:ギルドからの指名依頼とアンコウ鍋
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第3話:ギルドマスター代理の手腕

 ギルドマスター代理という要職に抜擢されたテレーゼ。

 前職の総合職での経験を活かし、窮状にあるマルクトギルドで数々の改革を実行します。

 マルクトのギルドは、指名依頼のときの説明では業務開始時間の30分前から職場に入って欲しいとのことだったが、テレーゼは「15分前行動」ということで、早めにギルドに到着した。ギルドには、今回の指名依頼期間中にテレーゼの腹心となってくれるマーヤが既に待っていてくれた。


 「マーヤ、今日からよろしくお願いするわね」と、テレーゼ。常体での会話は「部下としてのマーヤ」からの希望であり、指名依頼期間中はそれを通すことにした。


 「テレーゼ代理、こちらこそ今後よろしくお願いします。ちょうどギルドマスターもやってきましたので、もうすぐ朝礼が始まります。テレーゼ代理には新任のご挨拶をお願いします。あと、ギルドの勤務は朝礼と終礼がある業務時間前後の30分間は、時間外ですので当然超過勤務ということになります。もっとも、ここしばらくの間は、ほぼ全ての職員がギルド内の休憩室などに寝泊まりを余儀なくされるくらい、超過勤務が多いのですが・・・」と、マーヤが改めてギルドの現状に関しての説明をしてくれる。


 「やあ、テレーゼ。今日からよろしく頼むよ」「こちらこそ、よろしくお願いします」ジークリットとテレーゼが挨拶を交わす。朝礼が始まり、ジークリットによるテレーゼの紹介が行われる。


 「テレーゼです。今日から皆様と一緒に仕事をさせていただくことになりました。長時間労働が常態化している現状が職員全員にとって本当に大変なことは私も重々理解しているつもりです。私は1ヶ月を目処にそれをはっきり目に見える形で改善したい、と考えています。それには職員全員の協力が不可欠です。私も精一杯頑張りますので、皆様も私に力を貸して下さい。今後よろしくお願いします」


 テレーゼの挨拶に対して、職員全員から拍手を受ける。(個人的には、こういう決意表明のようなパフォーマンスはあまり好きじゃないんだけど・・・最初に期限を区切って今後の目標を明確にしておけば、ゴールがはっきりすることで何とか頑張ろうという気持ちになるだろうし、口に出した以上は私も後に退けないわね・・・)と、ギルドマスター代理であるテレーゼとして腹を括っての発言である。






 テレーゼの決意表明と共に始まった就任初日である。最初に、昨夜用意していた業務改善の叩き台4案と回復薬関連の対応をマーヤに説明した。以降は、日々の業務で多忙を極めるテレーゼ&ティアナに代わって作者が説明する。


 ・冒険者がギルドへの復命を行ったあと、その内容を紙に纏めるために多大な労力投入を余儀なくされていることを以前聞いていた(第5章第4話参照)ので、テレーゼは前回の自らの復命を参考に報告様式の雛形を作成した。その様式を冒険者に配布して、従来の口頭での復命ではなく依頼を受けた冒険者に記入してもらうことにする。記入例はテレーゼ自ら作成してマーヤやジークリットに確認してもらったうえで、ギルド内の記帳台そばの数カ所に掲示を行う。


 これを就任した日の翌日に開始した。1年後の完全移行に向けて今年1年は普及キャンペーンという位置付けで、報告書による復命を行ってくれた冒険者には、今年に限り報酬を5%増額することにした。


 報酬増額の原資としてテレーゼは、一連のギルド業務改善により、ギルド職員の残業時間削減に伴い生じる手当分の予算を充てることを考えていたが、職員の総意としては、長時間の残業による手当の増額よりも、書類作成の労力軽減や少しでも早く帰りたいという希望が圧倒的に強く、この取り組みで残業手当が多少減額しても構わないとのことだった。書類作成に関しては、たとえ残業にならなくてもギルド職員一同、平素より相当辟易していることが窺える。


 斯くして、マーヤやジークリットによる若干の手直し以外は、ほぼテレーゼによる原案そのままの報告様式が冒険者に配布されることとなった。


 今回の取り組みで大量に使用増加が見込まれるギルドで使う用紙に関しては、当面はテレーゼが日本で購入した、セフィロトに比べて相当廉価なリサイクルペーパーをほぼ購入価格でギルドに導入し、将来的には、木材を原料としたパルプを用いての製紙をギルド内で行う予定である(価格的な問題はあるものの、実用に耐える製紙の手法はセフィロトでも既に存在する)。


 様式の印刷には、テレーゼが開発した無属性の謄写魔法を、無属性魔法の使い手でもあるマーヤに教え、当面はテレーゼと彼女が印刷を担当することで対応し、彼女以外の使い手は今後ギルドで育成する運びとなった。なお、開発者のテレーゼ以外には誰も使い手がいない新魔法をテレーゼより直伝されたことに対して、マーヤが思わずテレーゼに抱きついてしまうくらい物凄く感激してくれたのは余談である。


 余談ついでであるが、謄写魔法では紙に付与された魔法も一緒に謄写可能なため、テレーゼの発案で、主に職員全員とギルド間の連絡用として、また、ギルド幹部間の相互連絡用として連絡用紙が配布されることになった。


 連絡用紙にはテレーゼ開発・命名の「伝送魔法」(いわゆるファックス的な魔法であるが、セフィロトには電気がないため「電送」ではなく「伝送」と名付けた。連絡用紙1枚につき1往復(2回)使用可能)が付与されており、即座にギルドに連絡可能である。また、宛先を書き換えるだけでギルド以外への連絡も可能である。


 これにより、例えば職員が病気で出勤できないようなときに無理に出勤しなくても良くなったことと、(この付与魔法を開発直後にギルド内に導入したことから)使い心地や改善点などのフィードバックを目的として、過度の使用でなければ家族などへの連絡といった私的利用も認めたため、職員全員から大好評であった。

 

 冒険者による報告書作成に話を戻す。一方、冒険者の立場としては、たとえ5%の報酬増加でも、命を的に懸ける冒険者稼業では決して軽視できないものであり、加えて元々冒険者には朴訥で口頭での復命が苦手な者が多いことも相まって、従来の口頭での復命に替わる報告書作成をテレーゼの想像以上に多くの冒険者が希望した。


 但し、文字の筆記や作文が苦手で作成が難しいという冒険者たちのリクエストに応え、マルクトのギルド主催(公的にはそのようになっているが、実際はほぼ全てテレーゼ個人の主催である)による学習会をギルドの大会議室で1ヶ月間に4日間(学習会開催日は午前と午後で各1回ずつで合計8回)実施したところ、特に経験が浅い冒険者を中心に文字や文章の作成が学べると大盛況だった。


 義務教育が存在しないセフィロトにおいて、冒険者たちが学びの機会を得ることは相当に限られているようだが、何はともあれ冒険者による報告書作成は、報酬の増額や何よりもギルドマスター代理という要職にあるテレーゼが、自ら精力的に実施した学習会の効果が非常に大きく、マルクトギルドに所属する大多数の冒険者たちの支持を得て導入が上手く行ったことは何よりである。






 ・計算誤りによる書類の再作成を度々余儀なくされるという事態を減らすため、ギルドの職員で計算に長けた職員3人とマーヤに、算盤を用いた加減の計算方法を教え、職員3人にはいわゆる経理担当として、主に検算をはじめとした計算全般を担当してもらうことにした(算盤は、テレーゼが土魔法で作成)。足し算と引き算だけと割り切った算盤の使い方でも、手計算よりは遙かに正確かつ効率的であり、特に算盤と伝票集計との相性は抜群(算盤における伝票算については第9章第1話を参照のこと)であるため、当初予定していた以上に経理業務の効率化が捗った。


 なお、この算盤による計算の精度向上と効率化に目を付けたジークリットとマーヤに、算盤のギルドでの販売を打診されたが、現在ギルド内で新事業を立ち上げる余力がないことを鑑み、商品化に関しては後日検討することとなった。






 ・全部の案件に優先順位を付けて処理を行う。これまでは、権力者の案件以外では着手した順番に処理する職員がかなり多く、その結果、複数の職員が関係する案件に関して処理が途中で滞る事案が見受けられた。そこで、テレーゼが期限までの猶予期間、案件の重要度(極端な話、街の最高権力者であるマルクト領主の関係案件であっても、猶予があれば先に他の案件に時間を割くこともあり得る)などに応じて、いわば案件のタイプ毎にギルド内で「トリアージ」的な物差しを決め、職員全員が統一した基準を基に処理を行うことを提案した。


 たとえ領主絡みの案件であっても、火急の案件があれば後回しにすることも辞さないテレーゼの対応は、ギルド職員たちには目から鱗だったようで、業務処理におけるメリハリが明確化されたことも相まってギルド職員全員の支持を集めることとなった。






 ・ギルドでの解体作業は、冒険者たちが討伐魔物をギルドに持ち込む午後に集中しがち(そのため、解体部署は基本的に午後からの出勤である)で、その日に持ち込まれた討伐魔物の解体を終えないと、いつまでも仕事が続くという有様であった。加えて最近の不慣れな他部署への支援業務増加も相まって、昼夜逆転といっても過言でない過酷な労働環境で体調を崩す職員が続出していた。


 そこで、テレーゼ独自の合成魔法である冷凍魔法を付与した大型の魔石を、討伐魔物の保管庫に設置して素材の劣化を抑制することで、持ち込まれた討伐魔物の解体作業を最高で1週間程度引き延ばすことに成功した。これは、テレーゼの自宅にある冷凍庫での、日常的に利用する討伐魔物の素材(主にマルクトの街の市場で購入した精肉)保管経験が裏付けとなっている。なお、技術的にはこれ以上の解体作業延期も可能であるが、冒険者への報酬支払いを鑑み最高でも1週間の延期に落ち着いた。


 加えて、事務仕事が元々不得手と言える、解体部署への支援業務の割り振りを一切取りやめた(テレーゼの業務改善により支援そのものがほぼ不要となった事も大きい)。この結果、解体作業の労力平準化を図ることが可能となり、解体部署の職員も他部署同様に午前からの出勤・勤務開始となったため、大変好評であった。


 一方、冒険者の立場からすると、報酬の精算に多少時間を要するようになったものの、今回テレーゼが導入した冷凍魔法がギルドで取り扱う素材の品質保持にも大きく寄与した結果、素材の売却価格が上昇したことを原資として若干ではあるが報酬の増額にも繋がったことと、どうしてもすぐに討伐報酬が欲しいという冒険者には、テレーゼが就任する以前の報酬計算による精算も選択できるようにしたため、冒険者からは不満の声が全くと言って良いほど出なかった。


 大型の魔石に付与された冷凍魔法に関しては、解体部署の職員が数日おきに魔力を込めることで魔法を維持できるようにテレーゼが魔法出力の調整を行ったため、職員の負担が小さいことが運用上の利点である。なお冷凍魔法や前述の謄写魔法・伝送魔法に関しては完全に新機軸の魔法であるため、開発者であるテレーゼへの外部からの圧力を憂慮したギルドマスターのジークリットやマーヤにより、開発者はマルクトギルド内での機密事項とされた。






 ・目下ギルド最大の問題案件といえる新しい回復薬関連であるが、冒険者への周知こそギルドの窓口担当者に任せたものの、薬師への製造方法の説明や照会への対応などに関しては、開発者であるテレーゼが覚悟を決めてほぼ全てを引き受けることにした。


 最初に街の薬師全員に声を掛け、就任5日目にギルドの大会議室にて新薬作成の説明会を開催した。製造方法の説明会はテレーゼの就任以前にも複数回行われていたが、作成の実演がなく口頭での説明のみだったため、今ひとつ薬師たちの反応が薄かった。


 その反省を踏まえて、今回は回復薬製造方法の開発者であるテレーゼ本人がレシピも配布して説明を行ったのだが、実演を伴った製造方法の説明や質疑応答は本当にスムーズで、ギルドに卸す以外にも、いわゆる「置き薬」として今後マルクトの街や近隣の村々からの長期的な需要が見込めるなど、薬師たちが新薬の優秀さを認識して自ら製造したいと思わせるには十分過ぎる説明会だった。なお置き薬事業に関しては、後にテレーゼが中心となり薬師たちと協力して10種類以上の新薬の開発や仕組み作りを行い、マルクトギルドの主要事業の一つにまで育て上げたことは余談である。


 また、駆け出し冒険者への薬草採取の常設依頼に関しては、「虫コブのない薬草」を1ヶ月間に限り、通常よりも割高で引き取ることにして、ボアの群れが減少したことでマルクト周辺では採取そのものが難しくなった「虫コブの付いた薬草」は、逆に引き取り価格をこれまでの半額に引き下げたことから、マルクトギルドが取り扱う薬草は、程なくして全て「虫コブのない薬草」となった。


 雑味の多いポーションは、就任から間もなくギルドの在庫が完全になくなったのだが、代わりにテレーゼが薬師への説明会の翌日、丸1日を費やしてギルドに保管された「虫コブのない薬草」を全て使い切る勢いで、新しい回復薬をギルドの作業室で大量に作成した(薬を薬包紙に包む作業はマーヤたちに手伝ってもらった)ことから、新しい回復薬の品切れは何とか回避され、同時に新商品への移行はさしたる混乱もなく順調だった。


 加えて、価格が手頃で美味しくて持ち運びに優れた新しい回復薬が冒険者たちに広く認知されるようになると、駆け出し冒険者ばかりではなく、ベテラン冒険者たちも挙って購入するほどの人気商品となった(但し当面の供給が追いつかないため、薬師からの入荷が本格化するまでは遺憾ながら販売個数制限を行った)。






 前述の5項目以外にも矢継ぎ早に打ち出された業務改善案と、その先進性かつ即効性に加えて数々の新事業を陣頭に立って推進したテレーゼの名前は、後に辺境の一ギルド支部からセフィロトに冠たる独立ギルドとして飛躍する力を得るに至った、ギルド改革の中心人物(通称「マルクトギルド中興の祖」)として、後世のギルド関係者や冒険者たちに、その功績や令名などと合わせて広く語り継がれることとなるのは余談である。


 加えて、テレーゼを三顧の礼といっても過言でない誠意でギルドに招聘し、ほぼ無名の存在だった彼女をギルドマスター代理という要職に抜擢して受け容れたジークリット、マーヤ、ギルド職員全員の英断ぶりも、後世にその名前とともに広く語り継がれることとなるのだが、それはさておき、ジークリットとマーヤはテレーゼの想像以上の辣腕ぶりに対して文字通り心底驚嘆した。


 何よりも、職員全員の残業が激減し、定時に安心して帰宅できるようになったことで、ギルド内の職員全員の士気や健康状態が目に見えて向上・改善した。職員たちはギルドマスター代理であるテレーゼの確かな手腕に信頼を深め、テレーゼが打ち出した新しい取り組みの数々に対しても、自らもギルド改革に貢献できているという自信が更なる奮起を促し、冒険者たちのために働いているというギルドの設立理念や、働くことの喜びをも職員全員が取り戻す結果となった。なお、非常に有能で容姿端麗かつ温厚な性格のテレーゼを理想の上司と仰ぐ職員は本当に多く、というより職員全員と言っても過言でない有様で、それ故に「推し」や信仰に近しいレベルの士気がギルド内に充満することとなった。






 テレーゼのマルクトギルドへの着任から丁度1ヶ月、テレーゼはギルドマスター以下職員全員の職務への自主的な精励ぶりに対して、今回の依頼を引き受け一定の成果を出せて良かったという達成感を感じるとともに、指名依頼をここで完了させても大丈夫だろうと確信した。改革者が功を誇り、それを盾に我が物顔でいつまでもギルドに留まり続けることを、テレーゼは由とは思えなかったからである。


 そこでテレーゼにとっては腹心とも言えるマーヤに、今回の指名依頼が一定の成果を上げ自分の役目は終わったのではないかということで、ギルドマスター代理を辞任したい旨を伝えることにした。


 「そんな・・・テレーゼ代理はギルドが難題だらけの状況で数々の陣頭指揮を執って下さり、その結果、はっきりと職員全員に解る形で、短期間にギルドを本当に良い方向に改革して下さいました。本当にたくさんの成功の喜びを私たち職員全員に教えて下さいました。間違いなくこれからもっと良いギルドになるものと心の底から確信できますし、テレーゼ代理と一緒に毎日仕事ができて、私自身仕事が凄く楽しくて今後に希望しかありません。それは職員全員が同じ気持ちだと思います。職員全員が心に抱いていた絶望の気持ちを、期待や希望に変えて下さったことは、紛れもなくテレーゼ代理の最大の功績です・・・


 正直な話、現状のギルドは、テレーゼ代理が文字通り一から作り替えたあなたのギルドと言っても過言ではありません。そんな中、テレーゼ代理が急に辞めてしまったら、職員全員が本当に残念に感じると思います・・・ですから、せめて非常勤でも何でも構いませんので、何らかの形でずっとギルドにいてもらえないでしょうか?」と、いつも穏やかな人柄のマーヤが、哀願に等しい感情を露わにして、テレーゼに何とかギルドに留まって欲しいと強く訴えてきた。


 「そう言ってもらえるのは凄く嬉しいわ。でも、私がやったことなんてほんの少しでしかないし、全てはあなたたち全員が一生懸命頑張ってくれたからこそ今の成果があるのよ」と、たまたま自分が推進したことが、ギルドの状況に対してうまく嵌っただけであり、マーヤがそこまで評価してくれていることに対してむしろ申し訳なさを感じるテレーゼである。


 「テレーゼ、それは違うぞ。私はこの1ヶ月間、君が先頭に立ってこのギルドのために誰よりも尽力してくれたことを一番間近で見ていたつもりだ。君の思考の多彩さには本当に色々驚かされたし、こんな手法もあるのかと物凄く勉強になったよ・・・合わせて私は、マーヤや皆も同じ気持ちだろうが、君をギルドに招聘したことの正しさを本当に強く確信したよ・・・だからこそ無理は重々承知で君に改めてお願いしたいのだが、これからもこのギルドに留まってはくれないだろうか?」と、ジークリットも2人の会話に加わってきた。マーヤと同様の気持ちのようだ。


 (一度できた人の縁は、契約が終わってもそう簡単に割り切れるものじゃないわよね・・・でも、自宅には私の帰りを待ってくれているパーティーメンバーの妹たちがいるわ。だから、2人やギルドのみんなには本当に申し訳ないけど、非常勤の勤務が精一杯よね・・・)と、テレーゼ。とある小説に出てくる知略に秀でた将帥が、前代未聞の比類なき功績を挙げた直後に辞表を提出したものの、将帥のために新設された組織の存在を理由として上官に強く慰留されたことをふと思い出す。とは言ってもテレーゼは、自身の能力に関して、決してかの将帥ほどの知略があるとは思ってもいないのだが。


 結局、ジークリット、マーヤ、ギルド職員全員の切望を無下にできず、毎月数日ではあるが、ギルドマスター代理としての非常勤勤務を継続することとなり、勤務日は前月末日までに決定する運びとなった。テレーゼが完全にギルドからいなくならずに済んだことで、ジークリットやマーヤ以下職員全員が大喜びであった。






 その次の日から1週間で職員全員への引き継ぎを終えたテレーゼ。そしてギルド常勤最終日の通常業務終了後、彼女にとっては全くのサプライズであったが、彼女の指名依頼終了に対しての慰労会&非常勤のギルドマスター代理就任に対しての歓迎会がギルド大会議室で開催された。


 全ての職員がこの会に自主的に参加してくれて、口々に感謝の言葉を伝えてくれていることに強い嬉しさを感じるとともに、迷いつつも指名依頼を引き受けて本当に良かったと改めて感じるテレーゼである。

 最後まで読んで下さり、ありがとうございます。


 作者の愛娘であるテレーゼ&ティアナ(本文中では触れていませんが、ティアナはもう1人の頭脳としてテレーゼの思考を大きく補助してくれました)の、獅子奮迅の働きには本当にびっくりです。業務改革は、作者的には案としては思い浮かぶものの、いざ実行に移そうとすると正直な話自信がありません。それはともかく、テレーゼ&ティアナは有能なプレイヤーであると同時に、有能な指揮官でもあったようです。気持ち良く働ける職場に作り替えてくれた彼女たちに、マルクトギルドの総意としてこれからもずっと一緒に、と強く望む気持ちは本当に理解できる気がします。


 次話は、ギルド関連の難局が一段落したあと、テレーゼ姉妹が関係者を招待して鍋パーティーを行います。

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