次の町へ
日高は見とれていた。何故ならば彼の目の前に広がる景色があまりにも美しいからだ。緑の広がる大地に始まり正面に見える雄大な山々、青空には2筋の白線が伸びている。彼がいた世界ではまずお目にかかれない光景だ。
「いやぁ、綺麗だなあ。写真撮りたいぐらいだ」
涼しげな風を浴びながらそう呟く。
日高が異世界の風景を堪能していると、下から抗議の声が飛んできた
「ちょっとみっちー! 一人だけずるいよ! 私たちは暑いの我慢してるのに!」
感動を邪魔された彼は声の主を見る。
そこでは下北が頬を膨らませ日高を睨んでいた。彼女の額には汗が浮かんでいる。
「はいはい、席かわってやるから」
「ほんと? やったあ」
「少しだけだからな」
日高はもう一度あたりを見回した後、暑苦しい車内へと入っていく。
彼らの乗るティーガーは村からはるか東の大草原を走っていた。舗装のされていない道だがティーガーは問題なく駆け抜けていく。
もちろんティーガーだけでなくテケも後ろからついてきている。
なぜ日高達がこんな所にいるのか。話は一週間前に遡る。
「ドワーフ?」
一週間前、突如として村にやってきた平戸は日高達にこのようなことを告げていった。
「ああ、漫画とかで出てくるやつだ。見た目は人とほとんど同じだぜ。ほら、こいつみたいに」
平戸は隣にいるシャンベリーを指差す。彼女は元気よく前に出てお辞儀する。見た目は人間と変わりないように見える。
「その子がドワーフなのか?」
平戸が答える前にシャンベリーが返事をした。
「そうよ! あたしの名前はシャンベリー、よろしくね!」
「おう、よろしく。俺は日高道行だ」
挨拶を終えるとシャンベリーは下北、リーフデの方へと向かう。その様子を見ながら日高は平戸に再び質問する。
「それで? そのドワーフがどうしたんだ?」
「ドワーフは工業系の仕事が得意なのは分かるよな? 製鉄とかだ。早い話ティーガーの修理も出来るってわけだ」
「ほんとか!? それは凄く嬉しいな」
喜ぶ日高に向かって平戸がそれだけじゃないと言いたげな顔にする。
「あと、ティーガーもテケも燃料探すのが大変だろ? ドワーフにたのめば別の燃料を使うエンジンに変えることもできるはずだ。俺やベリーのP-51は魔動エンジンに変えて貰ってある。このエンジンなら簡単に補給することができるぞ」
「ドワーフ最高だな! これは行くしかないな!」
興奮が最高潮な日高だが、ふと気になることが浮かんできた。
「修理したりエンジン作る技術があるのならもっといろいろなものが作れそうなんだが」
エンジンが作れるのならばドワーフの技術力は相当のものだ。だが、この世界の科学が発展している様子はなかった。その点に日高は疑問を持ったのだ。
「技術はあっても知識が無かったみたいだぜ。だから設計図を見せれば簡単に作ってくれた」
「設計図はどこに?」
「俺の頭のなか。何故か知らないが完璧に覚えていたんだ。多分お前もだろ?」
「……まあな」
「なら大丈夫。設計図があれば彼らはなんでも作ってくれるさ。ドワーフ達がいるのはここから東に見える山々の麓だ。けっこう遠いがぜひ来てくれ。という訳で俺たちはもう戻るぜ」
「帰りのか? 今からパーティーするから勇次郎も参加したらどうだ?」
「ぜひ参加したいところだがこちらも用事があってな。残念だが帰らせてもらうぜ。おーいベリー、いくぞー!」
「分かった! じゃーね葵!リーフデ!」
そうして2人は空へ飛び立って行った。
そんなわけで日高達はドワーフに会うために移動しているのだ。今回のメンバーはティーガーに日高、下北、リーフデ。テケにはヴォルクとストラールのコンビが乗っている。
「だいぶ近づいてきたな。リーフデ、疲れてないか?」
スコープで外の様子を覗きながら日高が言う。
「大丈夫、まだ行ける」
長時間運転しているがリーフデは平気なようだ。日高が安心していると無線から元気のない声が聞こえてきた。
『日高さーん。俺もう疲れましたよー』
声の主はテケを操縦しているストラールだ。普段からやる気がない彼の声だが今回はいつもの5割増しぐらいにやる気がない。そうすると無線の向こうで彼を叱る声が響いた。
『おい、ストラール! さっき運転かわったばっかりだろ! まだ頑張れよ!』
そう言うのはストラールの保護者役のヴォルクだ。怠けるストラールをヴォルクが叱る。お決まりのパターンだ。
『だって俺運転初めてだしー、今日朝早かったから眠いしー』
『お前さっきまでぐっすりと寝てただろ!俺も疲れたんだから休ませろ!』
言い合いを続ける二人を止めるために日高が提案する。
「じゃあここいらで一旦止まって休憩するか。点検もしておきたいし」
彼の提案に反対する者はおらず、一行は車両をから降りて休憩をする。
「いやー暑かった」
外に出た日高のからだに心地よい風が吹き付ける。気温もちょうど良く昼寝したらとても気持ちいいだろう。現にテケに乗っていた2人は早速横になっている。
見ればリーフデも近くの木陰で眠っていた。大丈夫とは言っていたがやはり疲れていたようだ。
そんな皆の様子を見つつ、日高はまだ元気な下北と共にティーガーとテケの点検を始めた。
一通り点検も終わり、日高も休憩をしていると、ティーガーの砲塔の上にいる下北が急に彼に向かって手招きをした。
「どうしたんだ?」
彼も砲塔に登ると彼女は南を指差す。
そこで彼が目にしたのは、無数の黒い影。
1万を越えるであろう兵士の軍団だった。
今話から第2章「鉄虎と姫」の始まりです。気長に、楽しみにしていただければ幸いです。
さて、次はどんな兵器をだすかな……




