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新延命装置タケノコ  作者: 空羽 叶
第一章 新田 晶
8/36

2ー5

 心臓がどくどく音を立てる。これ以上緊張すると、発作が起きる。そんな僕に、ドクターは金魚鉢のようなヘルメットをかぶせてくれた。息が楽になる。これが、タケノコ搭乗と同程度のこうかがあるのか。


 関心しながらタケノコに乗り込んだ僕に、アイシアはすぐ反応してくれた。


《搭乗者、新田 晶。確認しました。オートモードに設定しますか?》

「マニュアルでお願い。いい? 四号機を攻撃しちゃダメだよ。ちゃんと無人機を攻撃して」

《了解しました。マニュアルモードに切り替えます。無人機の攻撃でしたら、こちらで対応しますが、いかがしますか?》

「マニュアルで攻撃するよ。いい? 勝手に撃っちゃダメだからね」


 僕は人工知能のアイシアに強い口調で語りかけた。


 タケノコに乗って三ヶ月。僕はほとんどアイシアと話をしてきた。とてもくだらない話ばかりだったけれど、僕にとってはかけがえのない話し相手だった。


《心拍数正常。マニュアルモードで出陣してください》

「了解」


 人型ロボットに変形したタケノコは、デッキに足を乗せると、すーっと前に進んだ。一瞬息ができなくなるけど、すぐにヘルメット内に酸素がゆき渡った。


「いきますっ!!」


 そして僕は宇宙に飛び出した。だけど、すぐに無人機に攻撃されてしまう。


「くそっ。当たれっ」


 タケノコに装備された銃では太刀打ちできなくて、刀のような武器で無人機を撃ち捨てる。


 何機か撃墜したけれど、数が多い。


《おらおらおらおらっ。無人機の分際で俺様に勝てると思うなよっ》


 テリーさんの声が聞こえてきた。冷静になって見れば、結構な数の無人機を撃墜している。その姿はさながら宇宙の猛獣のような素早さだ。


《どうした? アキラ。活躍してくれるんじゃないのか?》


 おまけに挑発までされてしまった。


「今やってるところでしょうっ」


 こっちは初めての戦闘なんだ。いくらタケノコが防御をしてくれても、こう数が多い中での戦闘なんて、訓練してなきゃできないことだ。


 だけど。


 これらの無人機の向こう側の敵艦体の中に、お姉ちゃんが居るような気がしてならない。


 ねえ、お姉ちゃん。僕のこと、宇宙に捨てたと思っていたの? そのせいで面会の時間が遅れたりしていたの?


 両親が死んだかもしれないのに、のんきに生きている僕に、制裁を加えたいの?


 それとも、なにか他に理由があるの?


 ねぇ、お姉ちゃん。答えてよ。


 もし会えたら、その時は……。


《こちら、オーロラ号》


 その時、遠くに見える敵艦体から声が聞こえてきた。お姉ちゃんだ。


「お姉ちゃんっ!!」

《馬鹿野郎っ。こんな時にシスコンこじらせてんじゃねぇよっ》


 テリーさんに怒鳴られてしまったけれど、お姉ちゃんのことが気になって仕方ない。


《晶。これまでよく生きてきたわね。クリーン・ユニバースに救出されて、恩を感じているのでしょうけど、投降なさい。そうすればもう一度会ってあげるから》

「お姉ちゃんっ!! 僕は宇宙に捨てられたの? お金と迷惑いっぱいかけた僕のことが嫌いなの?」

《……そうよ。でも一応、心配はしたわ。あなたのデータのおかげで、こっちの艦体も人型兵器で出陣することができるわ。だから、今のうちに投降なさい》


 お姉ちゃんっ。僕は、銃のトリガーを握った。引き絞る勇気が、今はない。


《そう? なら、これからは敵として攻撃することになるわね。さようなら、晶》


 通信は切れた。と、無人機がどんどんオーロラ号に戻ってゆく。


「くそうっ!!」


 僕の心に、冷たい涙がしたたった。


     つづく


 

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