2ー5
心臓がどくどく音を立てる。これ以上緊張すると、発作が起きる。そんな僕に、ドクターは金魚鉢のようなヘルメットをかぶせてくれた。息が楽になる。これが、タケノコ搭乗と同程度のこうかがあるのか。
関心しながらタケノコに乗り込んだ僕に、アイシアはすぐ反応してくれた。
《搭乗者、新田 晶。確認しました。オートモードに設定しますか?》
「マニュアルでお願い。いい? 四号機を攻撃しちゃダメだよ。ちゃんと無人機を攻撃して」
《了解しました。マニュアルモードに切り替えます。無人機の攻撃でしたら、こちらで対応しますが、いかがしますか?》
「マニュアルで攻撃するよ。いい? 勝手に撃っちゃダメだからね」
僕は人工知能のアイシアに強い口調で語りかけた。
タケノコに乗って三ヶ月。僕はほとんどアイシアと話をしてきた。とてもくだらない話ばかりだったけれど、僕にとってはかけがえのない話し相手だった。
《心拍数正常。マニュアルモードで出陣してください》
「了解」
人型ロボットに変形したタケノコは、デッキに足を乗せると、すーっと前に進んだ。一瞬息ができなくなるけど、すぐにヘルメット内に酸素がゆき渡った。
「いきますっ!!」
そして僕は宇宙に飛び出した。だけど、すぐに無人機に攻撃されてしまう。
「くそっ。当たれっ」
タケノコに装備された銃では太刀打ちできなくて、刀のような武器で無人機を撃ち捨てる。
何機か撃墜したけれど、数が多い。
《おらおらおらおらっ。無人機の分際で俺様に勝てると思うなよっ》
テリーさんの声が聞こえてきた。冷静になって見れば、結構な数の無人機を撃墜している。その姿はさながら宇宙の猛獣のような素早さだ。
《どうした? アキラ。活躍してくれるんじゃないのか?》
おまけに挑発までされてしまった。
「今やってるところでしょうっ」
こっちは初めての戦闘なんだ。いくらタケノコが防御をしてくれても、こう数が多い中での戦闘なんて、訓練してなきゃできないことだ。
だけど。
これらの無人機の向こう側の敵艦体の中に、お姉ちゃんが居るような気がしてならない。
ねえ、お姉ちゃん。僕のこと、宇宙に捨てたと思っていたの? そのせいで面会の時間が遅れたりしていたの?
両親が死んだかもしれないのに、のんきに生きている僕に、制裁を加えたいの?
それとも、なにか他に理由があるの?
ねぇ、お姉ちゃん。答えてよ。
もし会えたら、その時は……。
《こちら、オーロラ号》
その時、遠くに見える敵艦体から声が聞こえてきた。お姉ちゃんだ。
「お姉ちゃんっ!!」
《馬鹿野郎っ。こんな時にシスコンこじらせてんじゃねぇよっ》
テリーさんに怒鳴られてしまったけれど、お姉ちゃんのことが気になって仕方ない。
《晶。これまでよく生きてきたわね。クリーン・ユニバースに救出されて、恩を感じているのでしょうけど、投降なさい。そうすればもう一度会ってあげるから》
「お姉ちゃんっ!! 僕は宇宙に捨てられたの? お金と迷惑いっぱいかけた僕のことが嫌いなの?」
《……そうよ。でも一応、心配はしたわ。あなたのデータのおかげで、こっちの艦体も人型兵器で出陣することができるわ。だから、今のうちに投降なさい》
お姉ちゃんっ。僕は、銃のトリガーを握った。引き絞る勇気が、今はない。
《そう? なら、これからは敵として攻撃することになるわね。さようなら、晶》
通信は切れた。と、無人機がどんどんオーロラ号に戻ってゆく。
「くそうっ!!」
僕の心に、冷たい涙がしたたった。
つづく




