2ー2
トラオさんはあらためて自己紹介をすると、ここにいるみんなの名前はコードネームだけどね、とおどけて言った。
「コードネームってなんですか?」
「坊主、そんなことも知らないのか。偽名だよ。だから好きに呼んでいいんだ」
「そうなんですね。って、それより」
僕はおもわず息を飲んだ。これからする質問に緊張してしまう。
「僕以外の搭乗者は六名いたってことですよね? みんな生きてなかったのですか?」
「中には生きてる奴もいたが、タケノコがあんまり融通がきかなくて、攻撃しちまったことがある。その子は昏睡状態におちいってしまった」
「おそらく、大気圏突入に身体が耐えられなかった者ばかりだったのかもね。ああ、あたし、ミヤ・サトウ。よろしくね」
それまでずっとパソコンと向き合っていたショートカットの女性は、指を休めてそう教えてくれた。
「あとは、タケノコが不完全なせいもあったんだろうな。だから坊主は運がいいって言ったんだ」
はたして、それが運がいいのかどうなのかわからないけれど、この先どうなってしまうのかを考えると頭が重くなる。
「そうだ。お姉ちゃんが拘束されたっていうのは本当のことなんですか?」
騒ぎでうっかりわすれるところだった。
「そう。坊主がどこまで知ってるかわからんが、タケノコは世界に非公開なシロモノなんだ。だから、カヤブキ博士を始め、そこで働いてた女の子たちはみんな拘束されている。その中に、坊主の姉ちゃんがいたとしても不思議はないな」
そんな。タケノコがそんなものだとは思ってなかったよ。
「坊主は頭がいいみたいだから、どうしても05機だけが見つからなかったんだ。あの分厚い取扱説明書を全部理解してるんだろ? すげぇな」
「ゼロゴーって読むんですね。間違えてました」
「どっちでもおんなじだよ。とにかく、そのおかげで滞りなく物資の支援もしてもらえていたし、タケノコに守ってもらえていたんだろう」
「じゃあ、アイシアにも感謝しなくちゃ」
僕はふいに人工知能のアイシアを思い出した。
「05の解析結果によると、坊主の操作により、きちんと太陽光パネルが作動されていたことや、規則的な食事や睡眠などとアイシアが同化しやすかったのかもしれない」
トラオさんはすごいなぁ。もうゼロゴーを理解しているんだもの。
「それで、お姉ちゃんたちはこれからどうなるのですか?」
「下っ端の職員だったら保護観察ですむが、坊主をタケノコに乗せたのが彼女の意思だとしたら、取り調べが厳しくなるだろうな」
「そんな。お姉ちゃんは僕のためにタケノコに乗せてくれたのに」
「本当にそう思うか?」
トラオさんに聞かれて、胸がどきりとする。けど、これは発作の症状じゃない。
「手のかかる弟を、無事に作動するかわからないような機械にのせて宇宙に出したんだ。多少の厄介払いな気持ちがあったとしてもおかしくないかも、な?」
「そんな風に言わないでくださいっ!! だって、お姉ちゃんは、お姉ちゃんだけは、いつも僕の味方でいてくれたんだからっ!!」
「トラオ、そのくらいにしておかないと、アキラの身体にさわるぞ」
もしここで、ドクターがとめてくれなかったら、僕は叫び出していたかもしれない。
だって、僕の心の中にも少なからずそんな予感があったから……。
つづく




