2ー1
目が覚めた時、また病院のベッドなのかと間違えた。
僕は、知らないベッドに横になっていた。
そうだ。タケノコごと連れ去られたんだった。
「目が覚めたかしら?」
とても綺麗な金髪の人が、僕の側で話しかけてきた。
酸素マスクをしている僕は、はいとだけ返事をした。
「ここでは英語でも日本語でも話せるスタッフばかりだから、どちらでもいいわ。わたくしはドクターミセス。みんなはドクターと呼んでいるわ」
「あの、僕……?」
どう聞いたらいいのかわからなくて、語尾を濁した。
「あなたは延命装置タケノコの搭乗者。間違いないわね?」
「はい」
「悪いけど、タケノコは今、わたくしの仲間たちが調べているところよ。わたくしはそのデータを元に、あなたにあった鉢を作っているところ」
「鉢って、なんですか?」
「金魚鉢みたいなものなんだけど、まぁ、わかりやすく言えばヘルメットってところね」
「ヘルメット?」
「それをかぶれば、あなたはタケノコに乗らなくても同程度の延命措置を受けることができるってわけ」
ドクターは艶っぽい唇で鉛筆をくわえた。
「あ〜、タバコ吸いたい」
どうやらタバコを吸いたいらしかった。
僕にはわからないけれど、宇宙でタバコはいけないと思う。
「あの、ここって?」
「そう、ここがクリーン・ユニバース艦内。そしてこの部屋は医療室でもある。新田 晶くん十五歳は生まれつき心臓が悪い。そうね?」
複雑な情報を簡単にあげつらねたドクターは、得意げにメガネのズレを直した。
「そう、ですけど?」
「姉の芽生さんはカヤブキ博士のお気に入り。違う?」
僕はうん? と首を傾げた。
「カヤブキ博士って、誰のことですか?」
「はぁ? あんた知らないでタケノコに乗ったの?」
どうやらそれは知っていなければならないようだったのだけど。知らないのだからしょうがない。
「カヤブキ博士は有能な若い女性たちを従えて、極秘理に研究施設を設立したの。その中にあなたのお姉さんも含まれているはずよ」
「どうして、そんなところに?」
なんだか嫌な話を聞かされているみたいで、信じたくなかった。
「それは、あなたのお姉さんが優秀だってことと、帰る家を無くした――って、ことかな?」
「濁さないで、ちゃんと話してくださいっ!!」
「あ〜。余計なことまで言っちゃったな。どうしよっかな」
空気が漏れるような音がして、長身の男の人が部屋に入って来た。
「どうした? ドクター。ああ、アキラ。おまえ運がいいな。ちゃんと生きてここにいるんだから」
その声には聞き覚えがある。
「あなたは、トラオさんですか?」
「そうだ。生きていてよかったな」
だけど、その言葉の中に芯からよかったという意味が含まれていないような感じを受けた。
つづく




