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新延命装置タケノコ  作者: 空羽 ミライ
第五章 新田 晶
43/46

8ー5

 クリーン・ユニバースの格納庫に入ると、また拍手された。


 敵とはいえ、僕は人を殺してしまった。それなのに、拍手されるだなんて、とても悲しくなった。


 だって、僕のせいでオーロラ号の人たちまで自爆させてしまったのだから。サーシャの存在がそこまで強かったなんて知らなかったから。


「気にすんなよ、アキラ。自爆はおまえのせいじゃねぇ」


 沈んだ顔でコクピットから出ると、トラオさんに励まされたけれど、悲しい気持ちは変わらない。


 サーシャの指示が自爆だったとは思えない。それなのに……。


 僕とそんなに年が違わない女の子が、戦艦を作ったりするだろうか?


 そんなことも、お姉ちゃんなら知っているかもしれない。


「サーシャは自白剤を投与された状態で拘束を断ち切り、人間離れした動きで二号機を奪い取って行ったの」


 ドクターの声は重く沈んでいた。


「残念だけど、あなたのお姉さんは、今は話ができる状態じゃないの。それどころか、自分がどこにいるのかもわかっていないみたい」

「そんな。それじゃ、僕のことも?」

「わからないと思う。それでも会いたい?」


 僕は……。


 言いかけて、ナナミさんのことを思い出した。


 彼女に会いたい。彼女の優しさに触れたい。命の鼓動を感じていたいんだ。


「今はナナミさんに会いたいです」

「そう? 彼女は今は元気よ。それなら、医務室に行ってあげて」


 僕は今度こそ医務室に行った。なぜさっき医務室に行かなかったのだろう。こんな暗い気持ちで、どうやって彼女に会えばいいのかわからないのに、お姉ちゃんではなく、ナナミさんに会う方を選んだ。


「アキラくんっ!!」


 医務室に入ると、ナナミさんは、今までで一番大きな声で僕の名前を呼んでくれた。


「おかえりなさい」

「……ただいま」


 複雑な気持ちなのに、おかえりなさいと言われたことで、救われたような気がした。


 僕の目からは涙があふれた。 


 それから、僕はナナミさんの笑顔にはげまされる。彼女は僕が人を殺してしまったことを知らないのかもしれない。だから笑えるのだとしたら、余計なことは言えなくなってしまう。


 泣いている僕に、ナナミさんは何度でもおかえりなさいを繰り返してくれた。


 ▶ ▶ ▶


 それから間もなく、宇宙審議会からお姉ちゃんの引き渡し要請が来た。オーロラ号の生き残りは、お姉ちゃんだけだからだ。


 僕が会いに行った時、お姉ちゃんは、すっかり正気を失っていた。言葉すら発っすることができなかった。


 だけど少しずつ話ができるようになった。ただし、強いショックから立ち直れずに、オーロラ号の記憶は一切忘れてしまっていた。


 地球から派遣された宇宙船に、僕とナナミさん、それからお姉ちゃんを乗せて地球へと向かうことになった。僕たちは生きているけれど、オーロラ号のみんなには悪いことをしてしまったな。


     つづく

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