8ー5
クリーン・ユニバースの格納庫に入ると、また拍手された。
敵とはいえ、僕は人を殺してしまった。それなのに、拍手されるだなんて、とても悲しくなった。
だって、僕のせいでオーロラ号の人たちまで自爆させてしまったのだから。サーシャの存在がそこまで強かったなんて知らなかったから。
「気にすんなよ、アキラ。自爆はおまえのせいじゃねぇ」
沈んだ顔でコクピットから出ると、トラオさんに励まされたけれど、悲しい気持ちは変わらない。
サーシャの指示が自爆だったとは思えない。それなのに……。
僕とそんなに年が違わない女の子が、戦艦を作ったりするだろうか?
そんなことも、お姉ちゃんなら知っているかもしれない。
「サーシャは自白剤を投与された状態で拘束を断ち切り、人間離れした動きで二号機を奪い取って行ったの」
ドクターの声は重く沈んでいた。
「残念だけど、あなたのお姉さんは、今は話ができる状態じゃないの。それどころか、自分がどこにいるのかもわかっていないみたい」
「そんな。それじゃ、僕のことも?」
「わからないと思う。それでも会いたい?」
僕は……。
言いかけて、ナナミさんのことを思い出した。
彼女に会いたい。彼女の優しさに触れたい。命の鼓動を感じていたいんだ。
「今はナナミさんに会いたいです」
「そう? 彼女は今は元気よ。それなら、医務室に行ってあげて」
僕は今度こそ医務室に行った。なぜさっき医務室に行かなかったのだろう。こんな暗い気持ちで、どうやって彼女に会えばいいのかわからないのに、お姉ちゃんではなく、ナナミさんに会う方を選んだ。
「アキラくんっ!!」
医務室に入ると、ナナミさんは、今までで一番大きな声で僕の名前を呼んでくれた。
「おかえりなさい」
「……ただいま」
複雑な気持ちなのに、おかえりなさいと言われたことで、救われたような気がした。
僕の目からは涙があふれた。
それから、僕はナナミさんの笑顔にはげまされる。彼女は僕が人を殺してしまったことを知らないのかもしれない。だから笑えるのだとしたら、余計なことは言えなくなってしまう。
泣いている僕に、ナナミさんは何度でもおかえりなさいを繰り返してくれた。
▶ ▶ ▶
それから間もなく、宇宙審議会からお姉ちゃんの引き渡し要請が来た。オーロラ号の生き残りは、お姉ちゃんだけだからだ。
僕が会いに行った時、お姉ちゃんは、すっかり正気を失っていた。言葉すら発っすることができなかった。
だけど少しずつ話ができるようになった。ただし、強いショックから立ち直れずに、オーロラ号の記憶は一切忘れてしまっていた。
地球から派遣された宇宙船に、僕とナナミさん、それからお姉ちゃんを乗せて地球へと向かうことになった。僕たちは生きているけれど、オーロラ号のみんなには悪いことをしてしまったな。
つづく




