8ー3
懲罰房の先にある牢屋の中で、両手と両足を拘束されたお姉ちゃんを見ていた。
久しぶりに会ったお姉ちゃんは、前より少しやつれて見える。
まだ気を失っているけれど、拘束されたことがわかったら、お姉ちゃんはどんな顔をするだろう?
それから一つ飛んだ牢屋に銀髪のサーシャがいる。
怖い顔でサーシャを見つめるトラオさんの横に立ち、彼女が目覚めるのを待っていた。
「俺たち、こんな若い女の子相手にあくせくしていたのかよ」
それは悔しいことでもあり、悲しいことだった。
そこに、ドクターと数人の力自慢があらわれた。
「アキラには悪いけど、どっちが起きても自白剤を使うから。そのつもりで。答えによっては宇宙審議会の会議にかけることになるわ」
宇宙審議会。名前だけは聞いたことがある。オーロラ号は、宇宙で地球の安全を脅かす存在だからだ。
自白剤か。お姉ちゃん、本当のことを言ってくれるのかな?
銃を構えた力自慢の四人組が、ドクターの指示でサーシャの牢の鍵を開ける。
「今のうちに打って。この子は危険な子よ」
ドクターは自白剤の点滴を彼らに渡すと、銃を構えてサーシャの襲撃に備えた。
「なっ……」
ちょうど目が覚めたサーシャの細い腕に、乱暴に注射針が刺さる。
低くうめいたサーシャを無視して、点滴が始まる。
「次は新田 芽生。アキラ。ここからは見ない方がいいわ」
「……わかってます」
これから、サーシャとおなじことがお姉ちゃんに行われる。
それを察した僕は、牢屋から離れて歩いた。
ふと、ナナミさんに会いたくなった。
あの時。ナナミさんに叱られなかったら、僕はまだぐじぐじとテリーさんの死を受け入れられなかっただろう。
だけど、自白剤って……。
そんなことをしなければならないほど、お姉ちゃんの心は闇に飲まれてしまったのか?
その原因は絶対に僕で、そのせいで……。
なのに、僕は捕虜を捕まえた英雄として艦に迎えられた。
確かにサーシャはテリーさんを殺した。
そのまま彼女を野放しにしておいたら、クリーン・ユニバースは落とされ、地球に被害が及んだだろう。
でも、そうなった理由はなに?
サーシャはどうしてそこまで僕たちを滅ぼそうとしているの?
おなじ人間なのに。
それとも、元々そういう破滅的な性格なのか?
わからない。
きっと、ドクターたちもわからないから自白剤を使ったんだ。
そうして二人はきっと、宇宙審議会へと引き渡されることとなるだろう。凶暴なテロを計画した罪として。
僕は一人、涙を浮かべた。
力には力を。
それしか方法がなかったとはいえ、こんなやり方しかできないのか、心が引き裂かれる思いがした。
つづく




