7ー2
格納庫に収容されても、コクピットから降りることができなかった。
さっきまで笑っていて、そこで生きていたテリーさんが、死んだ?
本当に?
まだ宇宙に脱出しているんじゃないだろうか。
そう思った僕の耳に、整備士さんの声が響く。
『アキラよぅ。あんたも死に近い人生を送ってきたんだろうけど、テリーはもういないんだ。アキラをかばって死んだ。それが現実だ』
現実?
死は、僕にとって近いものだった。
それが、ゼロゴーに乗ったことで遠ざかったような気がしていた。
あの時。
サーシャに斬りかかられてきた時も、もしかしたらゼロゴーが守ってくれるんじゃないかと心のどこかで思っていた。
だけど、違った。
僕は、殺されるところだった。
そして、そんな僕をかばって、テリーさんが死んでしまったんだ。
死って、なんだろう?
無?
それとも……。
僕は、僕のせいで、テリーさんが死んだ?
生きろって言われた。
生きろって――。
「っがはっ」
ヘルメットの中で胃液を吐いた。
《心拍数上昇。このままだと危険です》
アイシアはそれでも、僕を生かそうとしている。
『悪いけどこっちも仕事なんだ。強制的に降りてもらうぞ』
整備士さんの声が聞こえて、そして僕は気を失った。
▶ ▶ ▶ ▶ ▶
目が覚めたら、医務室のベッドで横になっていた。
嗅ぎ慣れた消毒液のにおいと、ドクターのすすり泣きが聞こえる。
「ん? ああ、起きたのね、アキラ」
それでも、僕が目覚めると、ドクターは涙を拭いて笑顔を見せた。
「栄養剤を点滴してるから」
ああ、って納得した。知らない間に点滴されていることなんて、慣れっこだった。
「僕は……」
なぜ、僕が生かされたのだろう?
生きることに贅沢になったと自覚したけど、こんな結末望んでないっ。
「っわぁ〜っ!!」
「うるさいっ!!」
ナナミさんの声だった。
「叫びたいのはドクターの方なんだよ。アキラくんは生かされた。だったらその命をきちんと受け止めなさいよっ!!」
命を受け止める?
それって、どういうこと?
「アキラ。テリーは死んだの。でも、あなたのせいじゃないのよって、そう言って欲しい? だったらごめんね。わたし、今はあなたに優しくしてあげる余裕なんてないわ」
それか、現実。
僕のせいで、僕が油断しなければ、テリーさんは死ななかったのに。それなのにっ。
みんなを守る。守りたい、なんて言っておきながら、このざまだ。
「ねぇ、アキラくん。わたしたち、生かされてる分ずるをしているけれど、テリーさんの死を受け入れないのは、もっとずるいことだよ」
ナナミさんの声が、やたらに冷たく響いた。
こんな時に優しい言葉をかけて欲しいなんて、そんなことあるわけないんだ。
つづく




