幕間 オーロラ号
俺がエンジニアになったのには理由がある。子供の頃から手先が器用で、ラジオを作ったり、無線にハマったりしていた。
そんな中、ある一人の女性に出会った。銀色の髪をしたその女性は、むさ苦しい俺なんかと気さくに話しかけてくれた。
彼女もエンジニアの才能があった。二人してカヤブキ博士にスカウトされた。そして、恋に落ちた。
その時すでに、カヤブキ博士には秘密でオーロラ号の製作に励んでいた俺たちは、カヤブキ博士が本当は誰かのためのでく人形であることを悟った。
そして、彼女は妊娠した。女の子だった。
俺たちはいつも二人一緒に、他のエンジニアたちとオーロラ号を製作し続けた。
だが、別れは突然来た。
彼女が重い病を患ってしまったからだった。
そこで、タケノコの製作に励んだものの、後わずかで完成するというところで、彼女は亡くなってしまった。
現代医学では治せない病気だった。
俺と彼女の間には、サーシャという女の子がいた。そして気づいた。
俺たちはサーシャのためにオーロラ号を製作し、サーシャのためにタケノコを製作しているのだと。
そして実際、サーシャはエンジニアとしても天才だった。
だから、カヤブキは代表の身代わりとして、サーシャを丁重にもてなした。
オーロラ号が宇宙に出ることが決まった時も、船内の人間はエンジニアのほんの数名だけだった。
どちらにしても、オーロラ号はサーシャのものだ。
俺たちはサーシャのために生き、そして最悪の場合は自爆することを覚悟していた。
それなのに俺は、サーシャに父親であることが言えなかった。
お互いがそれを必要としていなかったのだと思う。
だから。
サーシャのはかなさがつらい時がある。
彼女はまだ若いのに、思考は完全に老成していた。
できればもっと、たのしい場所でサーシャを育てたかったよに、それはかなわなかった。
そして宇宙へ出て初めて、サーシャの指示で動くようになった。
この選択には後悔がない。
サーシャは俺たちエンジニアにとっての女神だからだ。
なぁ、サーシャ。俺が父親だと知ったらどう思う?
そのことは今でも聞くことはできない。
俺たちは今日も、クリーン・ユニバースの隙を突く作戦を練り上げる。
それが、サーシャの望みなのだから。
つづく




