6ー7
医務室に入ると、ドクターに手招きされた。
「渚さんの具合はどうですか?」
「うん。話す分にはいいよ。じゃ、わたし、これからご飯食べてくるから、なにかあったらこの無線で連絡して」
はい、と手渡された無線に手を伸ばす。
「あの、でもっ」
なにを話せばいい?
「あ〜、お腹すいた。じゃ、後でね」
ドクターは僕たちを残して医務室から出て行った。
「あの、渚さん。こんにちは」
「こんにちは。あの、アキラくんって呼んでもいい?」
「うん。あの、オレンジジュース飲む?」
「うん。ありがとう」
渚さんは弱った手を伸ばしてオレンジジュースを受け取った。
生きてる。
彼女を見てそう思った。顔色はまだ悪いけれど、はかなげな微笑みを浮かべている。
ヘルメットをずらしてオレンジジュースを飲んだ渚さんは、おいしい、と言った。
「渚さん、骨にヒビが入ったって、痛くない?」
「ナナミでいいよ。今は痛み止め打ってもらったのが効いてるから、そうでもない。でも、息すると痛いかな」
「響くんだろうね」
ナナミさんって名前で呼ぶのが恥ずかしいな。
「アキラくんは? 心臓大丈夫? ゼロゴーで戦ってるって聞いたよ。お姉ちゃんと戦ってるって」
「うん。今は大丈夫。お姉ちゃんと戦うのに抵抗があったけど、今はこの艦のみんなを守りたいんだ」
いいなぁ、とナナミさんは遠い目をした。
「あたしも戦いたい。こんなによくしてくれるみんなを守りたいな。だって、いつも守られてばっかりだから」
「僕はもっと強くなりたい。この艦のみんなに傷一つつけさせたくない」
「あたしたち、生きてる、よね?」
「うん。生きてる。生かされてる」
「死にたくないな」
「僕も。ナナミさんの病気も治してあげたい。もし、もしだよ?」
そう言うと僕は唇をなめた。
「もし、大人になれたら、将来は新薬を開発する学者になりたい」
「それ、いい夢だね」
「ナナミさんは?」
「あたしは、将来のこと考えたことない。なんか、つらくなるから」
「わかるよ。僕も、クリーン・ユニバースに保護されなかったら将来のことなんて考えなかったかもしれない」
そう、学者になりたいなんて、今思いついたくらいだ。
「あたしね、今考えた。もし大人になれたら、お嫁さんになりたい。それから、お母さんになって、お婆ちゃんまで生きて、孫の顔が見たいの」
「それ、素敵だね。僕もそれいいなって思うよ。ナナミさんはすごいなぁ」
「すごくないよ。だけど。あたしたちにとって普通なことって、すごく尊いよね」
「わかる!!」
そこまで言ってから、ナナミさんは顔をしかめた。
「痛む? 横になっていていいよ」
「うん。ありがとう。オレンジジュースおいしかった。ごちそうさま」
「いいんだ。僕、具合がよくなるとオレンジジュースを飲みたくなるんだ。おいしいんだけど、酸味がちょうどよくってさ」
「そうね。あたしもオレンジジュース大好き」
そうして二人で声を出して笑った。
つづく




