6ー5
渚さんが死にそうな状況にあるというのに、僕の気持ちはゼロナナに乗ったらどんな気分になるだろうと高鳴っていた。
現時点でゼロナナは渚さんのための機体であって、僕がいいようにしてもいいわけじゃない。
でも、敵機のバズーカ砲がまた艦を捕らえたらと思うと背中がひやりとしてくる。
現に艦は甚大なる被害を受けているし、艦が撃沈されてしまったら全員死ぬことになる。
じゃあ僕は、なんのためにシューティングブースで戦闘訓練したのだろう。
ゼロゴーが直ってくれるといいのだけれど、艦の修理を優先させているのでゼロゴーまで手がまわらないはずだ。
なんなら自分で整備してみようか?
ゼロゴーの取扱説明書に整備のことまで書いてあったことを思い出した。
それなら、と格納庫へ急ぐと、整備士さんに呼び止められる。
「アキラくん、今はまだ05まで手がまわらないんだよ」
「なら僕が自分で整備してもいいですか? 道具さえ貸してもらえれば、できるところはやってみます」
「驚いた」
と、中年の整備士さんは驚きの表情を浮かべる。
「アキラくん、本当に取扱説明書全部覚えちゃったの? あれ、英語だったでしょ?」
問題はそれだけじゃないけど、照れたようにえへへと笑ってみせた。
「そのヘルメットかぶったままで安全に整備できるんだったらやってもいいよ。でも、溶接とか、危ない場所はは俺たちがやるから、無理しないで」
「ありがとうございます」
電動スパナを借りた僕は、ゼロゴーの全体像を見ておののいた。
なにしろ本当に横一線で一刀両断されてしまったのだ。
「ミヤさんたちにも言われたけど、これでよく爆発しなかったな」
すっかり傷ついてしまったボディを軍手越しになでると、ゼロゴーへの愛しさで胸がいっぱいになる。
ゼロゴーのおかげで、僕は今日まで生かされてきた。だから、簡単に手放さない。そりゃ、ゼロナナに乗れば問題が解決するのかもしれないけど、そんなのはゼロゴーに対して不誠実だ。
「ごめんね、こんなにしちゃって」
電動スパナを構えた僕は、ゼロゴーのボディを少しずつ緩めてゆく。
できれば、次の戦闘までに直しておきたい。
そうじゃなければ、艦のみんなを守ることができないから。
電動スパナは想像していたよりずっしりと重く、振動が伝わってきたけれど、僕の心臓に響くようなことはなかった。
「やるじゃん、アキラ」
また別の整備士さんに声をかけられた。
褒められた僕は、得意になって整備を進めた。
つづく




